前号では「平成25年は伊勢神宮にとって式年遷宮にあたる年」という書き出しで、大阪・名古屋と伊勢を結ぶ観光特急列車を紹介した。
今週も式年遷宮にちなんだ話題を紹介したい。
伊勢市駅・宇治山田駅と伊勢神宮(内宮・外宮)を結ぶバス会社(三重交通)は、かつて同区間を運行していた路面電車、神都(しんと)線の車両を再現した路面電車型バスを今夏から運行する。
「神都バス」と名付けられ、同線開業110周年と、来年同社が設立70周年を迎えることを記念し導入。
参拝客に懐かしさと新鮮さを感じて欲しいという。
実は、かつて、和歌山市・海南市内を運行していた路面電車と神都線には深い歴史がある。
昭和5年、神都線を経営していた合同電気(後の東邦電力)が、当時の京阪電鉄和歌山軌道線を譲り受けた。
昭和15年に当時の東邦電力が阪和電気鉄道へ譲渡するまでの間、伊勢の街を走る神都線と、和歌山の街を走る和歌山軌道線は同じ経営主体の下で運行されていた経緯がある。
さらに神都線が廃止された昭和36年には、不要となった車両13両を譲り受け、昭和46年の和歌山軌道線の廃線まで和歌山の街で活躍した。
【写真】神都線から譲渡された和歌山軌道線(710号)の車両。
昭和40年頃、和歌山市駅前で撮影。(小林庄三さん提供)
再現される「神都バス」は和歌山を走った車両とは異なるものの、同じ時代に同じ会社で使われていたもの。
約半世紀前の和歌山の雰囲気を味わえるかもしれない。
伊勢と和歌山の共通項。歴史を紐解くとさらに縁の深さが見えてくるのだろう。
今年の式年遷宮を機に、「伊勢へ七度(ななたび)熊野へ三度(さんど)」にちなみ、紀伊半島の魅力を相互で発信できればと思う。
(次田尚弘/和歌山)