さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

認証制度でブランド化に成功 農業振興に繋がる「金柑」の事例

2022-06-26 16:56:02 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、木成り栽培で際立つ甘さが特徴の高級柑橘「南津海(なつみ)」を取り上げた。
今週は、一般的に柑橘類として扱われる「金柑(きんかん)」を紹介したい。


【写真】和歌山県産の「金柑」

金柑はミカン科キンカン属の果物で。見た目は柑橘だが、これまで紹介したカンキツ属のものとは異なる分類になる。
特徴は、外皮を剥くことなくそのまま食べられること。食してみると甘味のなかに若干の苦みがある。外皮ごと食べられることからビタミンCを豊富に取ることができるのも嬉しいところ。

金柑の多くは中国原産。江戸時代に中国から静岡県に伝わったといわれている。
重さは15g程度。そのまま食する他に、甘露煮やジャムに調理される。

2018年の農水省統計によると、生産量第一位が宮崎県(70.4%)、第二位が鹿児島県(24.3%)、第三位が熊本県(1.9%)、第四位が和歌山県(1.4%)、第五位が佐賀県(1.2%)で、和歌山県は第四位の生産地としてランクインしている。

生産量第一位の宮崎県では「たまたま」というブランド名で売り出されており、県知事の積極的な宣伝により一躍有名になったことも。

宮崎県では開花結実から210日以上を経過し、糖度16度以上、Lサイズ以上のものにのみ「たまたま」の使用を認めるなど基準を設けている。
なかでも、糖度18度以上、サイズが直径3.3cm以上のものには「たまたまエクセレント」という名称で売り出すことができ、ブランド品としての打ち出しに成功している。
生産量第二位の鹿児島県でも認定制度を設けており、糖度16度以上のものに「春姫」「いりき」という名称が付けられている。

農業振興に繋がる有望な事例として参考にしていきたいものである。

(次田尚弘/和歌山市)
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木成り栽培で際立つ甘さ 高糖度の高級柑橘「南津海」

2022-06-19 16:31:26 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、柚子の変異種でさっぱりとした味わいが特徴の「小夏オレンジ」を取り上げた。
今週は、小夏オレンジと同時期に出回る高級柑橘「南津海(なつみ)」を紹介したい。


【写真】見た目は温州みかんに似ている「南津海」

南津海は、1978年に山口県で「カラマンダリン」と「吉浦ポンカン」を交配して作られた品種。
見た目は温州みかんに似ており、大きさは温州みかんより一回りほど大きいサイズ。
外皮がややデコボコしており手で容易に剥くことができる。じょうのう膜は少し厚めだが、そのまま食べることもできる。
食してみると果汁が多く、甘さが際立つ。木成り栽培により酸味が抜け、甘さが増す、高糖度みかんとされる。

南津海が色づくのは温州みかんと同じ冬の時期。この時期に南津海を食すと酸味が強く、食すのには適さないものと判断された。
しかし、実をつけたまま春を迎えたところ、カラスが南津海を食べるようになった。それを見て実際に食してみると、酸味が抜け甘さが際立つ品種であることがわかり、本格的に栽培が始まったという。

2018年の統計値によると、主な生産地は愛媛県(700t)、和歌山県(357t)、佐賀県(148t)、愛知県(111t)、広島県(96t)と、和歌山県は全国2位の生産量。
筆者は有田川町で栽培されたものを購入した。

南津海の名前の由来は、初夏の時期に食べられる柑橘という意味であるという。
食べ頃は4月から5月にかけて。今年の旬は過ぎてしまったが、来年の初夏の時期には、ぜひ試しに食してみてほしい高級柑橘である。

(次田尚弘/和歌山市)
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さっぱりとした味わい 柚子の変異種「小夏オレンジ」

2022-06-12 16:40:01 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、樹上で木成り栽培されることで甘味が増し、八朔の概念を変える味わいが特徴の「紅八朔」を取り上げた。
今週はこの時期に旬を迎える「小夏(こなつ)オレンジ」を紹介したい。


【写真】レモンのような「小夏オレンジ」

小夏オレンジは、長い歴史をもつ柑橘。1820年、宮崎市にあった邸宅の庭で発見され、柚子が突然変異してできたものとされる。

品種登録されている正式な名称は「日向夏(ひゅうがなつ)」だが、高知県や和歌山県では「小夏」や「小夏オレンジ」、愛媛県や静岡県では「ニューサマーオレンジ」と呼ばれるなど、同じ品種でも栽培される地域によって名前が異なる。

大きさは温州みかんよりやや大きめ。外皮はレモンのような黄色をしている。
剥きづらいため、リンゴのようにナイフで外皮を取り除き、スライスして食べるのがおすすめ。
果汁がたっぷりで、甘味と酸味のバランスが取れている。
特徴は外皮と果肉の間にある白い内果皮(アルベド)に含まれる甘味。苦みが無いので、全て取り除いてしまうのではなく半分程度残しておくと美味しく味わうことができる。好みで蜂蜜をかけて食べるのもよい。
そのほか、ジュースやジュレに加工し、スイーツとして楽しむ方法もある。

2018年の農水省統計によると、生産量の第1位は宮崎県(54.3%)、第2位は高知県(41.3%)、第3位は静岡県(2.8%)で、福岡県、長崎県、愛媛県、熊本県と続く。
和歌山県はランクインしていないが、筆者が産直市場で手にしたものは、和歌山市産であった。

県内産は珍しい小夏オレンジ。店頭で見かけた際はぜひ手にして、さっぱりとした味わいを楽しんでみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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八朔の概念を変える味わい 糖分高めで苦みが少ない「紅八朔」

2022-06-05 13:32:08 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、この時期に食べ頃を迎える、樹上で木成り熟成された「さつき八朔」を取り上げた。
さつき八朔と同じく、木成り熟成により通常とは遅い時期に楽しめる八朔がある。
今週は「紅八朔(べにはっさく)」を紹介したい。


【写真】八朔よりも赤みがある「紅八朔」

紅八朔は、昭和26年に広島県尾道市の農園で発見された八朔の枝替わり品種。発見した農家の名前、農間氏にちなみ「農間紅八朔」という名称が付けられているが、一般的には紅八朔として流通している。

八朔と比べると大きさは300g~400gと大差は無いが、外皮の色は少し赤みがかった印象。
皮はやや厚めで、ナイフなどで切り込みを入れて剥くのがおすすめ。その名のとおり果肉の色もやや赤く、八朔よりも水分が多い。
糖度が高めで、八朔特有の酸味や苦みは控えめ。八朔は苦手だという方でも食べやすい、一味違う八朔を楽しむことができる。

紅八朔には収穫後、酸味を下げてから出荷し2月中旬頃から4月上旬頃まで市場に出回るものと、木成りで熟成された後に収穫され5月頃まで楽しめるものがある。
木成りの方が甘味があり、果肉がパサパサになりづらい印象がある。

主な生産地は和歌山県と広島県とされ、広島県では通常の八朔から紅八朔への切り替えが進んでいるという。
和歌山県内では八朔自体の生産量が多く、紅八朔の割合がわかる統計資料はないが、紀北から紀南まで、地域が限られることなく栽培されている。

まだまだ希少な品種である紅八朔。今年の旬は過ぎているが、ぜひ来年の春に食べてみてほしい。

(次田尚弘/和歌山市)
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