さんぽみちプロジェクト

さんぽみちプロジェクトの記録。
和歌山新報で日曜日一面に連載中の「WAKAYAMA NEWS HARBOR」と連携。

和歌山の伝統野菜を使用 深い味わい「源五兵衛の粕漬」

2024-09-15 17:19:39 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号より、紀州名産の小スイカ「源五兵衛(げんごべい)」を取り上げている。
江戸時代から栽培が始まり「小スイカの粕漬」に加工され、現在も親しまれる源五兵衛。
今週はその中身と味わいを紹介したい。


【写真】スイカを連想させる「源五兵衛

収穫当初は一般的なスイカと同様に張りのある果皮であったが、粕漬にする過程で、おにぎりのような形になる。輪切りにしてみると、中心部分を一周するように小さな種があり、これがスイカであることを明らかにさせてくれる。

源五兵衛の粕漬は、酒粕を5度に渡り浸け直して製造。これは和歌山の伝統的な粕漬(奈良漬)の作り方であるという。
現在、和歌山県内で製造する業者は僅かなようで、筆者が手にしたものは県外で加工されたもの。県内で収穫された源五兵衛は、すぐに酒粕に漬け込まれ、粕漬の一次加工がされたうえで県外に出荷される。県外の加工業者で更に加工され商品となる。

一般的な漬け込みの期間は半年から1年程度とされる。伝統的な漬け込み方法である5度の浸け直しが行われているかは定かではない。
源五兵衛の粕漬にはランクがあり、漬け込みの期間が浅いものは1個あたり700円前後が相場。酒粕を取り換え、長期熟成されたものは高級品として扱われる。

食してみると、コリコリとした歯ごたえがあり、柔らかさがなく食べ応えがある。噛むごとに口いっぱいに酒粕の風味を強く感じ、若干の苦みはあるが、ご飯が進む逸品である。

時代の流れなのか、粕漬(奈良漬)特有の風味と味の濃さよりも、さっぱりとした味わいを求められる傾向も。昭和30年頃から源五兵衛の栽培が盛んになった鳥取県では、近年、薄口醤油に漬け込み、醤油漬けとしての販売が始まるなど、現代の消費者の嗜好に合わせた工夫が行われている。

(次田尚弘/和歌山市)
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布引地区の小スイカ栽培 紀州名産、歴史が深い「源五兵衛」

2024-09-08 14:57:10 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、味覚の対比効果により甘味が引き立つ、スイカと塩の関係について取り上げた。
関西では有数のスイカの産地である和歌山県。長年、和歌山市内で栽培され、ご当地のみならず県外でも親しまれるスイカの品種があることをご存知だろうか。
今週は「源五兵衛(げんごべい)」を紹介したい。


【写真】こぶし大の「源五兵衛

源五兵衛は小スイカの一種で、主に、和歌山市の布引地区で栽培されてきた。
時は江戸時代にまで遡る。津波により不毛の地と化していた和歌山市南部の砂地の地域に対し、徳川頼宜が土地改良を命じ、スイカの栽培が始まった。
水はけのよい砂地が栽培に適し、良質のスイカが収穫できたため「布引スイカ」と呼ばれ、紀州の名産品になったという。

このスイカに転機が訪れたのは和歌山市本町にあった酒屋の杜氏(とうじ)・源五兵衛との出会い。源五兵衛が和歌山市毛見にある「濱宮(はまのみや)神社」に参拝する途中、布引の畑でこぶし大のスイカを拾った。酒屋に持ち帰り、酒粕に漬けたところ上品な仕上がりとなり、改良を重ね販売を開始。やがて「小スイカの粕漬」として紀州の名産品となり、大阪や京都、さらには江戸へと販路を広げていった。
この商品を作った人の名にちなみ、スイカにも粕漬にも、源五兵衛の名が付けられたという。

粕漬にした源五兵衛はこぶし大で、漬物の茄子よりも小さく、一般的なスイカのイメージを覆す。丸い形ではなく、やや上下に長い楕円形をしており、上部にはしっかりしたヘタが付いている。

実際に食してみるとどのような味わいなのか。次週に続く。

(次田尚弘/和歌山市)
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塩はスイカの名脇役 甘味を引き立てる「対比効果」

2024-09-01 16:52:52 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
メロンと並ぶ夏の風物詩であるスイカ。砂地を適地とするスイカは和歌山県内でも盛んに栽培され、近畿では兵庫県と並ぶ産地である。
スイカを食する際に塩をかける方もいらっしゃるだろう。では、甘いスイカになぜ塩なのか。


【写真】主役の「スイカ」と脇役の「塩」

塩をかける理由は、スイカの甘味を強く感じるため。
人間の舌には味覚を感じる「味蕾(みらい)」があり、塩味・甘味・酸味・苦味・うま味を識別している。この5種類の味を「基本味」という。

一般的に食べ物は複数の基本味で構成されており、味の組み合わせにより、味の強みや弱みを感じる。スイカの魅力は豊富な水分とその中にある甘味であるが、この甘味をより一層引き立てるために有効であるのが、味に対比を与えること。

2種類の味を味蕾で同時に感じると、どちらかの味が引き立つというもので、これを「対比効果」という。一方の味が強く、他方の味が弱いときに起こる現象で、スイカに塩をかけすぎると塩味を強く感じる。
スイカの甘味を引き立てるための名役として、塩が存在しているといえよう。

これは、甘いお汁粉に少量の塩を加えることと同じ。有塩のトマトジュースの方が無塩のものよりも甘く感じるのも、この対比効果が作用している。

塩の効果はスイカの甘味を引き立てるだけではない。日本食品標準成分表(2020年版)によると、スイカ100gあたりのカロリーは41キロカロリーと控えめながら、糖質は9.2gと適度に含まれる。
エネルギー転換が早く血糖値の上昇を抑えながら水分を体内に吸収しやすいため、塩を同時に摂取することで、効率よく体内に塩分を補給することができ、熱中症予防の効果もある。

美味しく、健康に夏を乗り切るための先人の知恵がここにある。

(次田尚弘/和歌山市)
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品種改良の恩恵は無くとも 家庭でも育てられる「メロンの種子」

2024-08-25 16:46:00 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、容易にできる「桃の湯むき」について取り上げた。
たいていの果実に存在し、食する人にとって少々厄介な存在が「種子」である。桃であれば、果実の中央に位置し、夏の風物詩のひとつ、スイカやメロンは中央部分に細かい種子が多数存在する。

スイカの種子を庭に飛ばし、そこから発芽したものが大きなスイカに育つのではと、子供心にワクワクした記憶がある。
先日、メロンの種子の一部がキッチンのゴミカゴに残り、知らぬ間にそこから発芽するという出来事があった。そもそも、果実の種子から二世代目の果実はできるのか。二十数年越しにその疑問について調べてみた。


【写真】発芽した「メロンの種子」

結論から申し上げると、食せる果実にまで成長するが、病気にかかりやすく、味が低下する可能性が高い。

その理由は、種子を持つ果実(親)は、そもそも、病気に耐性があるAという品種と、味に魅力があるBという品種を掛け合わせたCという品種であることが多い。同じ畑でCという同じ品種同士が交配してできた果実の種子は、親の品種と同じ(クローン)では無く、親の品種よりも劣る可能性が高くなるというもの。

通常、メロンの種まきの時期は3〜4月で、生育には25度以上の気温が維持されることが望ましい。今の時期に発芽してもこれから気温が下がる季節になるため露地栽培で果実になるまで育てるのは難しいが、春まで種を保管し、適切な時期に発芽させることはできる。

同じ労力をかけて育てるならば、病気に強く美味しさ重視の種子を購入したいところだが、自分が食した果実の種子から、次の果実を育てるというのも悪くない。

あまり実用的な情報ではないが、大人の夏休みの課題として笑納いただければ幸いだ。

(次田尚弘/和歌山市)
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もっと気軽に食べやすく 容易にできる「桃の湯むき」

2024-08-18 22:23:24 | WAKAYAMA NEWS HARBOR
前号では、桃の概念を覆す、濃厚で芳醇な味わいが特徴の「黄金桃(おうごんとう)」を取り上げた。
桃は美味しいけれど、皮を剥くのが難しくて億劫という方がいらっしゃるかもしれない。
今週は、容易な桃の皮むきの方法を紹介したい。


【写真】湯通しの時間と氷水がコツ

桃の皮むきとして一般的であるのが、包丁の柄に近い方の腹を外皮に優しく当て、少しずつ剥いていく方法。桃の固さによっては剥きづらさを感じることがあるだろう。そこで、おすすめしたいのが「桃の湯むき」である。

要領はトマトの湯むきと同じ。まず、桃の上部に包丁で十字に切り込みを入れる。続いて鍋で湯を沸かし、沸騰したタイミングで桃を入れる。10秒程度すれば鍋から取り出し、氷水を張ったボウルに入れよく冷やす。

すると、上部に入れた十字の切り込み部分の外皮がふやけてくる。外皮を指で摘まんで、下部に向けてゆっくりと剥いでいくと、スルスルと皮が外れ、桃の果実が現れるというもの。

せっかく桃を冷やしたのに熱湯に入れるのかと抵抗を感じるかもしれない。筆者もそう感じたが、実際に試してみると気になることはなく、美味しくいただくことができた。果実の中心まで熱が通らないよう、熱湯に浸けるのはできる限り短時間とし、氷水でしっかりと冷やすことがコツのようだ。

さらに、果実に一定の固さがあれば、外周に沿って桃の中心部分に、種に当たる深さで一周の切り込みを入れ、上下を両手で掴み、それぞれの手を逆方向に回すことで、桃を半分に分離できる。

その時の桃の状態により左右されるが、様々な方法を試すなかで、湯むきが最も容易であるように感じた。
シーズンは終盤となってきたが、皮を剥くのが苦手な方は、ぜひ試していただきたい。

(次田尚弘/和歌山市)
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