日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

太刀 豊後國行平 Yukihira(Bungo) Tachi

2010-08-19 | 太刀
太刀 豊後國行平


  太刀 銘 豊後國行平

 

 鎌倉時代初期の太刀。豊後國行平(ゆきひら)には間々在銘作が遺されている。腰反り深く、先に行くにしたがって反りが少なくなり小鋒に結ぶ、この時代の特徴的な姿。地鉄は板目鍛えの地底が小板目肌のように詰み、ねっとりとした古風な肌合いとなる。もちろん研ぎ減りがあり、物打辺りに鍛え肌が強く現われている。地景はさほど強くは感じられないが、所々に淡く観察される。所々に映りが斑に現われており、鉄色は殊に古く白っぽく感じられる。
 鎌倉時代初期以前にまで時代の上がる太刀の刃文は小乱となり、互の目や丁子がはっきりとしないという特徴があり、それはそのまま他の国の工にもあてはまるため、刃文のみによる鑑定は難しい。この太刀の刃文も、匂口が潤み、刃境がはっきりしない小互の目で、匂に小沸が交じって細かな砂流し状に焼刃が構成されている。構成されているとは言うものの、時代の下がる焼き入れとは異なり、極めて自然な刃入れ作業の結果のものである。
 区上に焼刃が施されていない状態を焼き落しという。時代の上がる作に間々みられるもので、本作も生ぶのままのその様子が観察される。区上の彫刻も行平に特徴的なもの。研ぎ減りがあるも、その古風に収まる様子は控えめで美しい。