日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 左弘安 Hiroyasu Katana

2016-05-01 | 
刀 左弘安


刀 左弘安

 磨り上げられて二尺三寸五分。元来は二尺七、八寸の大太刀。元先の身幅がほとんど変わらないような印象は、南北朝中期の典型的姿格好。三寸を超える大鋒も特徴的で、迫力を増大している。左文字の弟子行弘の弟子、即ち孫弟子に相当する。地鉄は板目に杢を交えて流れるような景色。微塵な地沸が全面を覆い、肌目に沿って地景も顕著。ここに小沸の綺麗な刃文が焼かれている。左文字あるいは左文字の弟子と違うのは、互の目の構成がより明瞭になっているところ。帽子は刃文のままに乱れて先が揺れて掃き掛け焼詰めとなる。
作品の評価において「初代に比較して弟子は作為が劣る」「AはBに比較して品位が優る」などと言われることがある。もちろん極端に下手な刀工は別として、名作を残している刀工について、このような評価はないだろう。何も、無理して初代とその弟子の違いをこのような言葉で分ける必要はない。作品の特徴を示して違いを説明すればよいだろう。江戸時代の鑑定の方法を踏襲した、悪習の一つだ。例えば刃文構成が判らない乱れの中から次第に互の目や尖刃が現れてくることが、劣ることなのか。決してそうではない。板目鍛えが明瞭な古刀期の地鉄から次第に小板目鍛えの均質な新刀期の地鉄が出来上がるのが刀の劣化なのか。そうではないだろう。時代に応じて刀工は新たな、しかも良く斬れて美しい刀を創出する努力をした結果がそれらであろう。好き嫌いという好みの問題と良し悪しを混同した陳腐な評価に惑わされてはならない。