日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 末左 Sue-Sa Katana

2016-05-06 | 
刀 末左


刀 末左

 最近、公益財団法人日本美術刀剣保存協会では、鑑定における「末左」についての正しい解釈の仕方を説明している。末~という表記は、末備前、末関と称するように、専ら室町時代中期から後期の作についての時代的呼称と捉えられる気風があったが、左文字一門の作については時代観が異なるとしている。これまで、左文字一門で誰とも断定できない作には単なる「末左」であったが、今後は「末左 大左一門」と表記することになったのである。即ち末左については、末備前や末関とは時代背景が異なり、室町時代の降った作ではないということである。
 今回紹介する刀も、以前の極めであることから「末左」とのみ表記されているが、左文字一門の南北朝期の作に他ならない。作品を見るからに、誰とも個銘は極められないものの名品であることは間違いない。強みのある杢を交えた板目鍛えの地鉄に地沸が付いて太い地景が際立って躍動感に満ちており、この地鉄が表わしている景色だけでも感動に価する。刃文は不定形に乱れる中に尖り調子の互の目が交じるなど、すべてにおいて南北朝後期の作であることが判る。刃中は小沸の粒子が揃って動きがあり、沸が流れ砂流し金線を伴うほつれが刃中に広がる。変化に富んだ出来である。□