日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 相州綱廣 Tsunahiro Wakizashi

2016-05-13 | 脇差
脇差 相州綱廣


脇差 相州綱廣

 刃長一尺一分、反り一分八厘ながら、脇差と表記した。前回紹介した綱家とはほとんど同じ寸法なのだが、どう違うのだろうか。大きな相違点は、この綱広の場合、片切刃造であること。反りが強いこと。片切刃造の短刀がないとは言わないが、使用上における短刀の手軽さとは異なり、刃先近傍まで重ねが厚い切刃造りは、激しい打ち合いにも耐えるような、頑強な武器と捉えて良いだろう。刃の通り抜けを考えると鎬がない方が良い。だから平造が出来た。ところが打ち合いを想定すると平造より鎬造の方が、鎬が張っているぶん強い。即ち、片切刃造は、この両方の良い点を採り入れたものと思われるが、どうだろう。この点は日本刀の構造上からの力学などを研究しておられる先生に窺いたいところだ。近々、日本刀を科学的視野で捉えた本が出るそうだ。この辺りの話が出ているだろうか、興味がある。さて、本作は、先反りが付いて姿格好も脇差、即ち、南北朝時代から戦国時代に掛けて隆盛した手頃な寸法の武器である。地鉄は板目肌が良く詰んで地沸が付き、ざんぐりと肌立っていかにも斬れそうだ。匂を主調に沸を交えた焼刃は、出入りの複雑な乱刃に飛焼が顕著に入り、棟焼も所々に入った皆焼。彫刻のある部分にも焼が入っている。