日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

刀 元興 Motooki Katana

2016-05-25 | 
刀 元興


刀 元興

 孫六兼元を手本とした刀。作者は、この後に秀國と改名した松軒元興。元興は、十一代兼定と共に幕末期に活躍した会津の刀工で、兼定同様に新撰組の信頼を得て近藤局長より数振りの刀の製作を依頼されている。数多く新撰組関連の志士が佩用したという刀剣伝承がある中で、信頼の置けるのがこの刀工への作刀注文であることは、新撰組研究者のあいだではあまりにも有名である。それほどに良く斬れた。この刀にも、山田浅右衛門が太々の部分を土壇まで斬り下ろしたことが記されている。元興に限らず、十一代兼定もまた古作美濃物を手本としていた。兼定の遠祖が美濃兼定であることは言うまでもないが、その斬れ味を再現しようとした刀工は頗る多く、元興もその一人であった。この刀は、適度に反って姿に力強さが漲っているのみならず、鎬が立って刃先鋭く、打ち合いを充分に考慮した構造。地鉄が小板目鍛えで柾状に流れ調子となり、細かな地沸が付き、実戦の武器であるにも関わらずとても美しいと感じられる地相。刃文は尖り調子の互の目乱で、総体に焼刃が浅いところも打ち合いを想定したもの。匂口明るく冴えており、刃縁に細かな金線が走る。