日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 弘幸 Hiroyuki Tanto

2016-09-21 | 短刀
短刀 弘幸


短刀 弘幸

 前回紹介した廣幸の前銘と言われている弘幸の、一尺強、ごく浅い反りが付いた寸伸び短刀。前作と比較して鑑賞されたい。研究に従えば、本作の方が時代が上がるということになる。年代が明確なのは慶長十三年紀作であり、本作も慶長頃と考えられる。小板目鍛えの地鉄は良く詰んでいるも、堀川肌と呼ばれるようなザングリとした風も顕著で、縮緬状に細かに揺れる肌が地景によって観察される。地中には湯走りのような強い地沸は見られないが、肌目に沿って細やかに沸の流れが窺える。刃文は穏やかな湾れに互の目交じり。帽子は、物打辺りから現れている逆足状の沸の流れに応じてわずかに掃き掛けを伴って先小丸に返る。刃中は激しい沸ではないが、志津風の浅い湾れ互の目に伴って沸筋や砂流しが流れる。