日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

短刀 國廣 Kunihiro Tanto

2016-10-26 | 短刀
短刀 國廣

 
短刀 國廣

 江戸時代に活躍した多くの刀工の初祖的な存在の一人。戦国時代末期にすでに、古作のような鍛え肌が強く出た作より、綺麗に詰んだ地鉄鍛えが求められる気風があったようで、孫六兼元や兼定に、新刀の地鉄を見るような出来が間々ある。江戸時代初期に隆盛した三品一門も、緻密な地鉄へと変化しているように、この流れは他の流派でも同様であった。國廣は各地を巡って作刀技術を学び、後に独自の思考によるものであろう、斬れ味を追求した地鉄を創造した。ザングリと表現される、少し肌立つ小板目鍛えがそれだ。造り込みや刃文は相州伝を基礎においている。この短刀が良い例だろう。刃長は一尺強。身幅広く重ねは控えめに、斬り込んだ刃の抜けが追求されているのは南北朝時代の再現。わずかに先反りがあり、地鉄は板目交じりの小板目鍛えで、総体にザングリとして、刃味が良さそうだ。刃区から斜めに水影映りが生じており、これも國廣の特徴。刃文は小沸出来の浅く湾れた直刃で、刃縁ほつれ、所々に湾れが強まり、刃縁に沸筋や砂流しが流れ掛かる。これまでに紹介してきた國貞や國清の源流の作として捉えると、まだまだ古刀期の気配が濃厚であることがわかる。もちろん戦場を潜り抜けてきた、実戦のみを求めてきた刀工の作である。斬る道具としての凄味があって、しかも美しさの片鱗が窺えるところがすごい。□