日本刀鑑賞の基礎 by ZENZAI  初心者のために

日本刀の魅力を再確認・・・刀のここを楽しむ

脇差 三善長道 Nagamichi Wakizashi

2016-10-12 | その他
脇差 三善長道


脇差 三善長道

 二尺をわずかに斬る一寸九寸五分の脇差。何度も説明しているが、この寸法は抜刀に適しており、単に寸法のみで脇差と判断できない。なにしろ現在は、一尺から二尺の刃物を単純に寸法で脇差と分けてしまうという、恐ろしいほどの杓子定規に則ったもの。それでは真の説明はできないであろう。さてこの脇差は、と説明を始めると、これに見合う刀はどれほどの寸法なのだろう、これを腰に収めた武士の身長はどれほどだったのだろうと、いらぬ方向へ想像を働かせてしまう。短めの刀と捉えればすんなり受け入れられる。地鉄が特に綺麗だ。良く詰んだ板目肌が地沸と地景で綺麗に肌立ち、その中にも無睛肌が浮かび上がっている。さらに湾れ互の目の刃境を越えて刃中に及び、ほつれとなり、刃中では淡い砂流となっている。その様子は、強く見える一方で繊細であり、相州古作に倣ったものながら、特伝と呼ばれるにふさわしい、洗練味に溢れている。

刀 細川正義 Masayoshi Katana

2016-10-08 | 
刀 細川正義


刀 細川正義

 大慶直胤は水心子正秀の筆頭の弟子であるが、同門の正義もまた相州伝を得意として作品を遺している。この刀は、直胤に負けない刃中の沸の動きが魅力。元先の身幅が広く、大鋒とされた造り込みは、南北朝時代が手本。刃中に動きのある沸が生じている理由は、地鉄鍛えにあろう。杢目を交えた板目肌が密に詰んで地沸で覆われ、これが刃中に及び、特に地刃の境目辺りには渦巻き状に沸が付き、刃中では金線を伴う沸筋砂流しとなる。大きく伸びた鋒に帽子の焼きも沸付き、わずかに掃き掛けて返る。

刀 大慶直胤 Naotane Katana

2016-10-07 | その他
刀 大慶直胤


刀 大慶直胤

 二尺三寸三分。総体がおおらかで、地造りもたっぷりとしており、直胤らしい刀。地鉄はこれも良く詰んだ小板目肌に見えるが、実は板目、杢目が潜んでいる。焼刃にその片鱗が顔を出し、渦巻き、ほつれ、砂流し、沸筋となって表れている。これらの働きはすべて鍛え肌を基礎とするもの。焼刃は沸が主体で匂が伴い、明るく冴え冴えとして刃先まで広がる。帽子も調子を同じくしてほつれ掛かり、浅く乱れて先掃き掛けて返る。天保六年の作。先に紹介した脇差とは大小で誂えられたものであろう。直胤には古作に紛れる映りの立った備前伝があり、またこのように地中に沸の景色が窺える相州伝がある。好き嫌いは別にして、いずれも高い技術が備わってのものである。当時の人気のほどが理解できよう。

脇差 大慶直胤 Naotane Wakizashi

2016-10-06 | その他
脇差 大慶直胤


脇差 大慶直胤

 江戸時代後期の直胤は、備前伝と相州伝、大和伝を得意とし、美しくしかも迫力あるだけでなく、優れた刃味により同時代に最大の人気を誇った名人。この脇差は鍛え肌においては強い杢目や板目肌を見せない微塵の小板目調子だが、地底には板目と杢目が備わっており、刃境には渦巻状の働きが現れている。総体はゆったりとした湾れに互の目交じり。焼刃は冴えた小沸に匂が複合し、沸深く刃中に広がり、淡い砂流が流れ掛かる。

脇差 平安城國次 Kunitsugu Wakizashi

2016-10-05 | 脇差
脇差 平安城國次


脇差 平安城國次

平安城國次は國路の高弟。師に紛れる作品を遺している。この脇差は一尺四寸強の反りの深い作で、重ね厚くがっしりとした、慶長から寛永頃に流行した造込み。地鉄は特に細かに詰んで地沸が付き、子細に観察すると、流れるような肌合いが感じられ、國路一門の高い技術力が良く分かる。刃文は互の目。大きく小さく浅くと抑揚があり、帽子は美濃物を思わせる地蔵風弥乱、先わずかに掃き掛けを伴って返る。焼刃は粒子の揃った小沸を主体とし、適度に匂が付き、刃中にほつれ掛かり、それが砂流しとなって互の目の足に流れ掛かる。姿に武骨と言い得る力があり、対して刃中には穏やかな力が感じられる作となっている。







脇差 國路 Kunimichi Wakizashi

2016-10-04 | 脇差
脇差 出羽大掾國路


脇差 出羽大掾國路

 決して研ぎ減ったわけではない。最初からの注文作であろう、バランスの良い細身の脇差である。刀身に応じて焼き幅も調整している。見事な設計だと思う。地鉄は板目肌が流れて柾がかり、地沸が厚く付いて國路らしい地相。刃文も志津風の穏やかな湾れ互の目で、沸と匂な見事に調和した焼刃が明るく冴え冴えとしている。浅い刃文ながら刃中はほつれ、沸筋、砂流し金線が濃密であり、地中の湯走り、所々の飛焼、棟焼を含め、特別の注文に従った出来であろう。帽子は湾れ込んで先尖り調子で返る。拵の付いた優れた相州伝の一口である。□





短刀 國路 Kunimichi Tanto

2016-10-03 | 短刀
短刀 國路


短刀 平安城住國路

 出羽大掾國路の初期の作。國路は國廣の門人だが、三品派にも学んだものか國廣風というより、三品風の焼刃構成からなる志津写しを得意とした。いずれも相州伝の工。この短刀も、南北朝時代を思わせる平造の寸伸びのスタイル。地鉄は板目が流れた肌間を小板目肌が埋めて良く詰み、地沸が付いて古作に紛れる出来。刃文も湾れに浅い互の目を交えた沸主調とし、刃境には沸筋、砂流し、金線が走る。帽子は、ふくら辺りが乱れ、先尖り調子に掃き掛けて返っている。