いろはにぴあの(Ver.3)

ピアノを趣味で弾いています。なかなか進歩しませんが少しでもうまくなりたいと思っています。ときどき小さな絵を描きます。

ピアニストの脳を科学する超絶技巧のメカニズム(1/2)

2014年01月29日 | ピアノ・音楽

 本のレビューをブログに書くのは久しぶりです。

 

 今回は古屋晋一著『ピアニストの脳を科学する超絶技巧のメカニズム』春秋社。

 その後の文章は普通体で書きます。

 タイトルからして、美しい音色で難しい曲をピアノを弾けるようになるにはどうしたらよいのだろう、という疑問を解決してくれそうな気がした。著者の古屋氏は音楽演奏科学者で、脳科学や身体運動学の視点から音楽を愛する人が健やかで創造的な演奏活動ができるようにするための「音楽演奏科学」の確立に力を注いでいる。

 内容は、ピアニストの脳と身体が、いったいどのような働きをしているのか、様々な実験と調査を駆使して探究した具体的な事例に基づいたものになっていて、予想どおり面白くためになりそうなものだった。ピアノを弾く者にとって役に立ちそうな話も書かれているので興味深い所を要約して紹介する。なお、ここでいうピアニストはプロの演奏家で巧みに鍵盤を操る人のことととらえてほしい。そしてそんなピアニストの状態の分析結果を知ることが、ピアノの学習者である我々にとっても有効だと思った。なお、今回の記事は前半部分のみ。後半は次回に投稿する。

 ピアニストはなぜ左右10本の指を巧みに操って長大な難曲を弾くことができるのだろうか、という問いに対して、ピアニストとそうでない人との決定的な違いはにあるとのこと。

 同じ速さで同じ指の動きをしている場合、活動している神経細胞の数はピアニストの方が音楽家でない人よりも少ない。その原因はピアニストの脳はたくさんの神経細胞を働かさなくても複雑な指の動きを行うことが可能な節約の働きが進んでいるから。また、指を動かす神経細胞が集まった運動野の体積を測ったところ、動かしにくい左手の動きをつかさどる脳部位の体積は音楽家でない人よりもピアニストの方が大きいことが分かった。小脳の細胞の数も50億個近く多いとのこと。そしてその細胞数は楽器を演奏する訓練によって増やすことが可能。

 自分の身体の動きを頭の中で鮮明にイメージさせるイメージトレーニングは神経細胞の働きを向上させ演奏をよくするためにも効果的。

 ピアニストは左右の脳の間にかかっている脳梁の体積が音楽家でない人よりも大きい。そのため左右の脳の間でスムーズな情報のやりとりがしやすい。

 ピアノを弾くということは、手指や腕を動かすだけではなく、これから奏でる音楽を頭の中でイメージし、今奏でられている音楽を聴いている、すなわち、音楽の「未来」と「過去」を思い描きながら演奏すること。なので、頭に思い浮かべた音楽を演奏しつづけるためには、音のイメージに反応して指や身体が自動的に動き、さらには、聞こえてきた音にもとづいて、次の動作を素早く適切に修正する脳と身体の動きが必要。

 私たちが音を聴くときは、耳の上にある脳部位(聴覚野という)にある神経細胞が活動するが、ピアニストが音を聴くときは、指を動かしていなくても、音を聴くための聴覚野だけではなく、指を動かすための神経細胞も活動していた。すなわち音に身体が反応したり、指の動きによって音が想起される脳の回路が存在しているのだ。そしてその回路は、音楽家でない人でも訓練によってつくることが可能

 ミスの予知。ピアニストの脳は演奏中に「ミスを予知できる」という特殊な機能を備えている。ピアニストの場合、間違った鍵盤を弾くおよそ0.07秒前に、頭の前方にある脳部位から「ミスを予知する脳活動」が起こり、ミスタッチをする際に打鍵する力を弱めている。

 ミスの修正。ピアニストはミスをしてしまった後の脳の反応も早い。音楽家でない人も、意図しない音が鳴った0.3秒後に「おかしい」というミスを認識する脳波を発する脳活動が起こるが、ピアニストの場合は0.2秒後に脳活動が起こり、以下のようなリカバーを行っている。

1)リズムが崩れた場合、ピアニストは即座にテンポをスピードアップさせることで全体のテンポが遅れないようにとっさにリカバーしている。

2)音が遅れて聞こえた場合、ピアニストは一時的に強く打鍵することによって、打鍵の際に指先にかかる圧力を増やし感覚を鋭くし、打鍵動作のリズムが正確になるようにしている。

 またミスにも記憶が乱されやすいミスとそうでないミスとがある。聞こえてくる音が鳴らした鍵盤の音よりも1音だけ遅らせたりするような状態が起こると混乱&ミスタッチになりやすい。またテンポが速い曲よりもゆっくりの曲を演奏する方が1音のミスでも演奏中の記憶が乱されやすい。ゆっくりした曲ほど暗譜が難しかったり気を抜きにくかったりするのはそこにも原因があるかもしれない。

 続きは次回の投稿で!音色、譜読み、動かす部位などが書かれていて非常に興味深い内容です。


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