有名な作品なので、ずっと観たいと思ってきた。でも、なかなか機会がなく、この間の衛星放送でようやく観賞が可能に。
舞台は、私の大好きな中世。そして、主演がピ-ター・オトゥールとキャサリン・ヘプバーンだというのがから、面白くない訳がない!と意気込んで観たものの「面白いか?」と言われると、ちょっと・・・という感じ。
この物語は史実をふまえたもので、1183年のクリスマスの一日を中心にして描かれる。歴史ものというから、壮大なスペクタルとか波乱万丈のストーリーかと思うのだけれど、「冬のライオン」はヘンリー2世と妻の王妃エレノアと息子たちという、家庭の確執と権謀を執拗に描いてみせるのでありました。
ピーター・オトゥールのヘンリー2世は、末息子ジョンを次の王位につけたく、エレノア(これが、キャサリン・ヘプバーン)は長男のリチャード(後の獅子心王リチャード)に王位をと願っている。そして、ヘンリー2世は王妃を塔に幽閉しており、クリスマスだからと、特別に出しているのだが、この夫婦のもつれあった感情が凄い。対して、息子3人は、皆チャームに欠け、おまけに両親への愛情はゼロに等しい。この家族に、アキテーヌ地方の覇権をめぐって対立するフランス王フィリップ(といっても、まだ19歳の少年。でも、策士)やフィリップの異母姉で、今はヘンリーの情婦になっているアリース王女がからむのだから、話はややこしい。
もともと舞台劇のストーリーというだけあって、シノン城を舞台に、セリフもすごく演劇的。それが、この映画がちょっと・・・という感じでなじめなかったのかも。人物造形も、典型的にパターン化されていて、固まってしまってるようだし。でも、そうして不満をものともさせないのが、ピーター・オトゥールとキャサリン・ヘプバーンの名演。この二人が対峙しあうと、そこらじゅうに火花が散っていると思わせるほどの、生き生きとしたドラマが生まれるのだ。
そして、中世好きの私に嬉しいことは、紋章のついた楯、中世時代の典雅な衣装が目を楽しませてくれる上、城の中を犬が放れたまま自由に歩きまわっているという驚くべき事実を知ることもできたこと。犬(猟犬のような、スレンダーな体型のワンコが多かった)が城の階段の上に寝ぞベっていたり、大広間の宴会のテーブルの下にいたりするなんて!
フランス王フィリップに、若き日のティモシー・ダルトンが扮していたのにも、びっくり。「007」で、ジェームズ・ボンドを演じた彼は、魔法のように輝く瞳が魅力で、昔ファンだったこともあるだけに、その瞳がきらめくのを見るのは、陰気くさいドラマの中で松明みたいに明るく輝いて見えました(これって、結構ひどい言い方かも・・・)。