「秋の理由」 福間健二 思潮社。
ご近所のNさんからお借りした詩集。著者の福間健二さんが、Nさんの義兄(お姉さまのご主人)で、萩原朔太郎賞まで受賞している詩人ということも今まで知りませんでした。
さて、この「秋の理由」――福間さんは、ずっと自主製作映画を撮り続けていらしたそうなのですが、このたび公開される映画の名もずばり、このタイトル。
寺島しのぶ出演ということで、メジャー公開(こんな言葉あるのかな?)もされるというのだけど、詩集そのものは映画のストーリーとは直接関係なくはない、現代詩。
正直言って、「詩集」なるものをほとんど読んだことがなく、コクトーの「私の耳は貝の殻。海の響きを懐かしむ」とか、ランボーの「見つけたぞ。何を? 永遠を。それは太陽に溶ける海だ」と言ったものしか口をついて出ない私。
この詩集も、とても「わかった。理解した」といった範疇にはありませぬ。でも、著者の若い頃書かれたものに違いない、と思わせるみずみずしさページの間からこぼれおちてきて、「ああ。何だかいいな」と思わせるものが。
詩とは頭で理解するものではない。感覚で、五感で、手の平に熱を、冷たい水を受けとるように感じ取るもの……なぜか、十代の頃、小説の詩的なタイトル(例えば、フランソワーズ・サガンの「冷たい水の中の小さな太陽」とか「ボルジア家の黄金の血」といったもの)に魅せられ、詩的な言い回しこそ最上と思っていた文学少女時代を思い出してしまいました。