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パンフレットで見かけたのだけれど、日本国内ではとうに絶滅したはずの狼を再び呼び戻す運動、というのがあるらしい。
日本オオカミは、最後の一匹が明治時代だったかに死に絶えて以来、彼らのDNAを伝えてくれるものはいないはずだから、海外から狼を導入するのかもしれない。
その言うところによれば、鹿やイノシシの被害は甚大で、木々や樹皮が食い荒らされている。これは、自然破壊にもつながる上、鹿の生息数は増える一方。自然の生物連鎖を正常なものとし、自然環境を維持するためには、狼を日本に再びよみがえらせるべきというのだ。(鹿が増えすぎて、困るというのは、神社の境内に無数にいるように、『神のお使い三』として大切にされてきた歴史があるからだ、と思うのだが)
この点もしっかり強調されていたのだが、狼は人間を襲うことは、ほとんどないのだとか。
「凄いアイデアがあったものだなあ」と私はびっくりしてしまったのだけれど、ずっと昔の日本人のように、山奥や森で、オオカミの姿を見ることが可能となったら――それは、ダイナミックで魅力的な自然界の出現だろう。しかし、生物ヒエラルキーのほぼ頂点にいる狼は、きっと数を増やし、人間の生活を脅かすに違いない、とも思うのだ。
その結果、人間に射殺される狼なんて絶対に見たくないし、自然保護地域で人間に監視されながら生きる姿も、彼らのような誇り高い獣には似つかわしくない。
オオカミは、日本が深い森や藁ぶき屋根の村落や、囲炉裏に囲まれた生活と同時に失ってしまった「永遠に手の届かない」夢であるべきなのだ。