ノエルのブログ

シネマと海外文学、そしてお庭の話

チャイナタウン

2017-09-25 15:26:11 | 映画のレビュー
   
1974年の映画作品「チャイナタウン」――配役が若かりし日のジャック・ニコルソン、フェイ・ダナウェイ。おまけに監督がかの奇才、ロマン・ポランスキーだというのだから、凄い映画でないわけがない。

と思ったら、やはりハードボイルド映画の傑作として、ファンの間では今なお高い評価を得ているのだそう。ハードボイルドものは嫌いじゃないのだが、「マルタの鷹」も観たことがなくて、その系統のものといったら、チャンドラーの原作である「さらば愛しき女(ひと)よ」だけしか知らない。

高まる期待とともに観た、「チャイナタウン」……当然のごとく、素晴らしい! 1930年代のロサンゼルスの風景や室内のインテリア、ファッション等々、美術面がうっとりするほど美しい。 この時代は、本当に香り高かったのだと思わされる。

ジャック・ニコルソン扮するジェイク・ギデスはロサンゼルスに事務所を開いている私立探偵。彼のもとに、モーレイ夫人と名乗る女から、夫で水道局局長のモーレイの浮気を調べてくれとの依頼がやってくる。
若いブロンド夫人と会っている証拠写真を手にしたギデスだが、それが新聞紙上に公表された後、ギデスが貯水池で死んでいるのが発見される。

モーレイの死には、「水」の巨大な利権がからんでいるとにらんだギデスは、独自に調査を始めるが、彼の前に現れた本物のモーレイ夫人であるイブリン(フェイ・ダナウェイが演じている)によって、事件はさらに複雑な様相を呈してゆく――。

事件の背後には、イブリンの父親で、モーレイの共同経営者であった老人とイブリンの異常な関係などがあって、ラストも「救われない」の一言に尽きる。だが、それでも、この映画の隅々に描かれた、当時の家やイブリンの着る洋服といっだディテールが素晴らしくて、ため息が出る。
例えて言えば、モーレイ邸には、庭師がいるのだが、彼が剪定する庭の植物の配置など、当時のアメリカはこんな風だったのだなと思わせられる。
エラリー・クイーンの探偵ものが結構好きだったのだが、そこで登場する大金持ちの屋敷も、異国人(日系人もいた)の庭師が印象的で、昔のアメリカが目に浮かんできそうだったもの。

レイモンド・チャンドラーのフイリップ・マーロウものも、確か1930年代のロサンゼルスが舞台だったように思うのだけど――この時代って、本当に魅力的でexciting!
今から、80年も前なのに、人々の生活様式も風俗も、現代とそう変わっていないことにも驚かされる。いや、今では当時のような優雅さや美しさがなくなってしまっているのかもしれない。


フイリップ・マーロウに永遠のダンディズムを感じる人には、こたえられないこと間違いなしの映画である。
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マスキングテープって・・・

2017-09-25 12:44:07 | ある日の日記
  
 この五・六年以上もなぜか異常に人気上昇中で、すっかり生活の中に定着してしまった感のあるマスキングテープ。 今まで主役だったはずのセロハンテープなんて出番がなくなり、姿が見えなくなっている感もあるような気がするんですが。

 ちょっとしたプレゼントも、今ではマスキングテープというケースがよくあります。だからなのか、私も特に集めているわけではないのに、結構たまってしまいました。オリエント美術館で買った古代エジプトのヒエログリフを使った黄色い細めのマスキングは結構気に入っているのですが……。

 街の雑貨ショップやミュージアムショップなんかにも売ってあって、気軽に買えるアイテム化しているのだけれど、ここでふと疑問。
あの~、マスキングテープって、それほど色々使う機会があるのでしょうか?  私など、封筒の封をするときぐらいしか使わないです。

これじゃあ、さすがにもったいない! もっとマスキングテープの魅力をいかしたステキな使い方があるはず! と思うのですが、浮かびません。 カリグラフィーのカードにも使ってみようとしたのですが、うまくいかなかったであります。 工夫のセンスがないのが哀しい

マスキングテープの使い方――誰か教えてくれたらなあ、と思いつつ、眺めて楽しむ午後。
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ある愛の詩

2017-09-25 12:06:32 | 映画のレビュー
     
ただ今、1970年のアメリカ映画「ある愛の詩」を観たところです。 若かりし日のライアン・オニールとアリ・マッグロー主演の悲劇的なラブロマンス。

実は、この映画には、懐かしいエピソードが。中学生の頃、私は集英社のコバルト文庫から出ていた洋画を紹介するハンドブックをそれは、それは愛読していて、何度も繰り返し読んでいたもの。 このティーンエージャー向けの映画の紹介本を読んで、洋画の傑作や名画、昔の映画スターたちの名前が頭に入ったといっても過言ではないのです。


「ある愛の詩」も、その中に入っていました。それでどんな映画かということは良く知っていたのですが、実は実際に観るのはこれがはじめてなのであります。
冒頭、大学の図書館のシーンからはじまって、受付にいたメガネの真面目そうな女学生とハーバード大学の学生との丁々発止の会話が交わされるのですね。

このメガネの黒髪の女性がヒロインのジェニーで、アリ・マッグローが扮しております。もちろん、相手はライアン・オニール。彼は、大富豪の息子で、ジェニーは貧しいイタリア移民の娘……この身分違いのロマンスからはじまって――というのが大まかなストーリー。

こういう設定を見たら、やっぱり時代を感じます。富豪と庶民のロマンスが「物語」になったのは、20世紀までのことじゃないかな? いまではロイヤルファミリーと結婚したとしても、そんなに「シンデレラ」扱いされないような気もしますね。

映像もカラーとはいえ、最近の映画のようにくっきりとクリアで美しくはないのですが、主演のアリ・マッグローのファッションはとてもキュート! この頃は全世界的にミニスカートが流行っていたらしく、彼女もシンプルなミニスカートに太めの黒ベルトをつけたり、太い格子縞のスカートに帽子(このカラーが黄色だったり、赤だったりと若さを強調していて、新鮮!)といった服装で登場するのですが、1970年代のファッションは個人的に好きです。

案の定、大金持ちの父親から結婚を反対されたライアン・オニールは、反抗して家を飛びで、ジェニーと結婚してしまいます。けれども、優秀な成績でロースクールを卒業した彼は弁護士としての職を得、前途洋々の生活が始まるはずだったのですが……そこにジェニーの発病が発覚することに。

彼女は白血病に侵されていたのでした。こう書くと、絵に描いたようなラブロマンスに、愛妻が病気で死んでしまうストーリーなんて……と拒否反応を示す方もいるかもしれません。しかし、それでも、ここで見るアリ・マッグローの魅力は突出しております。 どこか東洋の面影の宿る顔立ちは浅黒く、眉はキリリと太く、黒い目も素晴らしい。

70年代活躍したきりで、姿を消してしまい、私も「スティーブ・マックイーン夫人だった人」というくらいしか知らなかったのですが、こんないい女優さんだったのか――。

アメリカがまだ絶頂期だったころなのですが、スクリーンにあらわれるのはどこか郷愁を感じさせ、ちょっと野暮でさえある感じの都市風景。映画を観ると、過去の時代のファッションや空気感、街の雰囲気までがわかって、そこも大きな魅力になっているのだと、最近になってやっとわかりました。
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