懐かしき「サブウェイ」(1985年 フランス)を観る。
私の大好きな映画!! 当時まだ二十代だったリュック・ベッソンの初監督作品(だったかな? 記憶があいまいになっていたら、すみません)で一時間半の短めの上映時間なのだが、何度見ても面白い!!
確か高校生の時、初めてみたと思うのだけれど、ビデオでも買い、その後DVDも入手してしまったくらいだ。
若かりし日のクリストファー・ランバート(『グレイストーク』で、密林に捨てられたターザンを演じて、鮮烈なデビューをさらった俳優といっても、今ではほとんど知る人はいないか……)、そしてこれも最も美しかった頃のイザベル・アジャーニの組み合わせが素晴らしく魅力的!!
この二人の放つオーラ、そして舞台となるパリ地下鉄(フランス映画のはずなのに、なぜか『メトロ』ではなく、「サブウェイ」と英語表記なのも不思議なのだけれど)の無機質で荒涼としたムードの対比が面白いのだ。 パリ市民の足となる地下鉄の構内を背景に、こんな荒唐無稽で、魅力的な物語を作ってみせるベッソンーー二十五歳にして、すでに只者ではないのだなあ。
さて、この映画、どんな物語かというと、まずクリストファー演じるフレッドは、美女エレナ(これを、アジャーニが演じている)の家のパーティに招待された時、彼女の家の金庫を破壊し、重要な書類を奪って、地下鉄に逃げ込む。
それを追う、エレナと彼女の夫に雇われた探偵たち。フレッドは彼らの追跡を逃れ、パリ地下鉄の奥深くに逃げこむのだが、この地下鉄が迷路としかいいようのない凄さなのだ。
人々が乗り降りするホームの下にさらに地下があり、そこは水道管パイプとか、湿った地下通路が続く――不可思議な世界。そして、そこに地下鉄を根城に住む、奇妙な人々がいるというのだから、呆気に取られてしまう。これが、どうもホームレスとかいった類ではなく、本当に「奇妙」としか言いようのない、不思議で面白く、いい人たちなのである。
ひょっとして、実在のパリの地下鉄にも、こんなアンダーグラウンド世界が広がっているのかしら?
フレッドはエレナ電話で呼び出し、豪華なパーティ衣装でやって来たエレナ。最初は書類を返してほしい一心だったエレナも、フレッドの魅力、そして自分の結婚生活のむなしさに気づかされ、地下鉄の世界に潜り込んでしまうこととなる。
だが、探偵の追手の他、刑事たちもフレッドを追い始め、地下鉄を舞台に、ダイナミックな逃走劇が始まる――。
最後にはフレッドは探偵の放った銃弾に倒れるという悲劇に終わるのだけれど、彼とエレナのひとときのロマンス、純愛というものが身に沁み、「ああ、いい映画を見せてもらったなあ」と思わせてくれる。何しろ、当時の若く美しい、ランベールとアジャーニを見ているだけで、楽しい。
ただ、作品を観ていると、「古いな」と感じさせられるシーンもぽろぽろ。アジャーニが来ているチェック柄のスーツなど、肩パッドがいっぱいにはいった逆三角形のシルエットになっているのだが、これっていかにも1980年代のファッションという感じ。最初、フレッドが車の中で聞いている音楽もCDなどではなく、テープ。
1960年代とか1970年代の映画は、そのクラシックさを存分に味わえるのに、なぜか自分が十代だった頃のファッションや時代の雰囲気は、見ていて気恥ずかしい感じがしてしまう。どうししてだろう?
小粋で、エスプリがあり、いかにもフレンチな感性にあふれた「サブウェイ」。また、観ませう。