甲斐さんが「自分が出た作品って、どういう風に向き合って、どんな思いでっていうのって
ナンか…当然おありになりますよね?」とお訊ねになると
中井さんは「そうですねぇ、僕は…まあ、役者をやって40年経つんですけど
まだ、初日の前って眠れない…んです
そいで、それは何が一番、その眠れないっていうことの緊張に起因してるのか?っていうと
その次の日の第一声で、その映画1本の声のトーンが決まるからなんです
(『なるほどねぇ』と甲斐さん)
ですから、そのセリフの最初に話す声のトーンだったり、話し方だったりを…
やっぱり、僕たちの仕事って正解がないので、ギリギリまで迷うんですね
だから一番、どこかで恐怖感を覚えるっていうのが、第一声なのかも知れないですねぇ」
…と、番組公式ツイッターにアップされていた動画の続きをお答えになり
更に…「役者さんにも色んなパターンがいて
自分の出たものに自信が持てる人と自信が持てない人(がいる)…
で、僕は、どちらかというと自信が持てないタイプで、それは何故か?っていうと
逆に正解がないので、例えば、自分でその…こう…映画を観た時に
『ああ、ここはこっちじゃなかったなあ』って(思うことがある)…
僕の中には、頭に描いていた3パターンの芝居が残っていて、そのチョイスの…
1パターンを映画でやって、監督はOKを出して下さってるんですけど
『あっちのパターンでやってたら、こっち違ったかも知れない』…(『うん、うん』)
…っていう風に観てしまうんです、映画を…
ですから、僕は、その…絶対に映画は公開日を過ぎたら、自分で映画館に観に行く
それまでは(試写を)観ない…っていうことを貫いてるんですね
で、それは何故か?っていうと、僕たち…映画ってキャンペーンっていう時間がありまして
宣伝期間があって『皆さん、観て下さい!』っていう期間があるんですけど
そんなつもりで僕は映画を…頭の中のパターンで観ちゃってるんで
『観て下さい!』って、言えなくなっちゃうんですよ…(『結果?(笑)ハイハイハイ』)
イヤ、あっちの方が良かったのに、ナンか…『観て下さい!』って
『ゴメンなさい!』みたいになっちゃうんで…
観ない(でいる)と、無責任でいられるんですよね
だから、その…いかに自分が無責任でいられるか?っていう時間を
そのキャンペーンの時間に充てたいので、公開初日までは観ない…っていう風にしてるんですけど…」と明かされていたんですが
出演作品に「自信が持てない」というのは、ご自身の演技に真摯に向き合い
より良いものにしたいと考えておられるからこそであって
中井貴一さんっていう役者さんは、非常に誠実な方なんじゃないかと…?
あと、誠実と言えば、その語り口も、ご自身の思いや考えをキチンと伝えようと
最も適切な言葉を選びながら、お話しになっていることが伝わって来て、とても好感が持てました
ただ、奥さんは「話の行方が見えた途端、語尾にカブセて話し始める」某福岡県民の方(笑)が
中井さんのお話を途中で遮らないようにと、ガマンなさっているんじゃないか?と想像してクスクス(笑)
まあ、番組の進行上、この時間は「中井さんのターン」であるとはいえ
こんな風に相づちを打たれるだけの甲斐さんは、ある意味レアかも知れませんね?(笑)
それはともかく…ここで、大河ドラマ「武田信玄」の映像が流れ
平岩紙さんが「中井は26歳で大河ドラマの主演を務め、その後も数々の映画やドラマに出演
俳優として王道を歩んで来た」とナレーション
同じく大河ドラマ「平清盛」の1シーンが流れ
「真面目なイメージで、時に正統派俳優とも呼ばれる中井…
本人はどう思っているのだろうか?」との問いかけがあり
甲斐さんが「『正統派』って(呼ばれることについて)どうですか?その辺…?」と質問なさると
中井さんは「イヤ、僕は全く違うと思います」と即答(笑)
「イヤ、っていうか、昔から『正統派』って何だろう?って…
(『ハイ、そうですね』と甲斐さん)…すごく僕も疑問があるんです
僕は、でも、1つだけ大事にしてて…それは『正統派ですよ』っていう風に
思われてもしょうがないな…って思うところがあって
あのー、要するに人間って…まあ、楽な方に行きたい訳じゃないですか?
そうすると、例えば、ファッションにしても…
まあ、僕は洋服が好きなんで、アレなんですけど…
要するに、着くずしっていうことってのは、楽にする方法なんですけど
それって、キチッと着る着方を知ってるから、着くずしになる…(『ハイハイ』)
で、そのキチッと着ることを知らなかったら
ただ、だらしなくなるだけだ…っていうのが、自分の中にあって
そのキチッと着る方法っていうものを、僕は…
えー、自分の中での定義として持とうというのは思っているんです
だから…(『それが一番基本ですからね』)…ハイ
まあみんな、世の中の流れに乗ってる人たちっていうのに安心感を覚えるんですけど
僕は、それが昔から好きじゃなくて『じゃない方』にいる…(深く頷かれる甲斐さん)
だから、それが『サラメシ』のナレーションとか、そういう所にも…」
…とおっしゃったトコで、画面には「NHK『サラメシ』2011~
中井がナレーションを担当する食のバラエティ番組」という注記がクレジットされ
「その…結構ズラしてくっていうことを僕は…
最初に貰った原稿よりもズラしてく、ズラしてく、ズラしてく…ってことを考えるんですけど
やっぱり、このベースにあるものの残さなきゃいけないもの
ここをヘズったら、だらしなくなってしまう…
みたいなことは避けようっていう風には、自分ではしているところはあると…
(『だから、あの…型破り理論と一緒ですね
型を知っていないと、破ることも出来ないぞ!っていうね』)
だから、どっちかっていうと、俺は破る方に動いてる方なんで
本人は『正統派』ではないっていう風に…僕はどこか思っていて…」と
ちょっと甲斐さんを彷彿させる?(笑)身振り手振りを添えて話されてましたが
正直、我が家で「中井貴一」さんと言えば、あの佐田啓二さんのご子息で
「ふぞろいの林檎たち」を始め、数々のドラマや映画で主演…
それも「善人」「正義の味方」キャラというか
いわゆる「良い人」の役…を務められる役者さんで…といったイメージが強く
初めて悪役を演じられた時には、違和感さえ覚えたくらいで(失礼!)
ナンとなく、かつての三浦友和さんみたいな「生粋の二枚目」枠の方
それこそ、王道中の王道…「正統派俳優」という冠がピッタリな方だなと思っておりました(苦笑)
いったん、そういうラベリングをしてしまうと
ちょっとコミカルな役を務められていても、それは、どこか「カッコいい三枚目」に見えたし
「正統派」のイメージは、なかなか払拭できなかったんだけど
以前にドラマネタでご紹介した通り…って、このあと、番組の中でも話題に上るんですが
昨今のドラマは、スポンサーの顔色を窺うあまり、クレームが来ないようにと
コンプライアンスにきゅうきゅうとしている状況であることについて
中井さんが「例えば、ヤクザの役なのに、タバコをポイ捨てせずに、ちゃんと灰皿で消したり
命からがら車に乗って逃げようとするシーンで、キチンとシートベルトしたり(笑)
『そんなのオカシイだろ!』って思うことがいっぱいあって
ナンか、面白くないなあ…って、しばらく仕事しなかったんですよ」
…と、おっしゃっているのを偶然、何かの番組で目にしまして
「あっ、ただの優等生っていう訳じゃないんだなあ」と遅まきながら気づいた次第で(苦笑)
それ以来、ちょっと見る目が変わったというか
中井さんが年齢を重ねられ、脇を固める重鎮的な役柄も務められるようになって来られたことで
自然に「ラベル」が剥がれて行ったような気がします