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Ⅰ ビオトープとは
❸ 生活空間のビオトープ化
例えば、ビル屋上ではコンテナを使って果樹の
小林や水辺ビオトープなどを設置できる。1年
もすると水辺にはショウブやカキツバタなどの
水草が成長し、サンショウやブルーベリー、キ
ンカンなどが収権でき、しかもシオカラトンボ
やアカトンボの仲間など生物が定着し、小さい
ながらも生態系が再生する。戸建て住宅では、
お庭や家庭菜園、駐車場、軒先など対象範囲が
広がる。家庭菜園園や果樹、ビオトープ池、堆
肥場、樹林地などをつくれる。家主は野菜や果
物を生物達と分かち合うことができる。また、
食う。食われる関係から成り立つ生態系の再生
を願い、面積は小さくとも小林や果樹園、業園、
草地、水辺、堆肥場をセットでつくることが重
要という。都市公園では、水生の植物や生きも
のが豊かな池沼、餌になる果実を付けるガマズ
ミやコムラサキの食樹になるヤナギ類などのブ
ッシュ、ヤブキリの生息地やキジやホオジロの
営巣地になるウツギやススキなどの茂み、スズ
ムシやキリギリスなどが生息し、ススキやワレ
モコウ、オミナエシなどの野革が混生する季節
感豊かな草地などが提案されている。生きもの
の生息環境に多様性を持たせる上で、ノシバや
コウライシバなど、単一種の芝が植裁された芝
生広場は、チョウやバッタがすみ、タンポポや
ニガナ、ハコベなどの野革が混生する低茎の草
地へと転換することも課題である。幼稚園や小
中学校、高校などの教育機関では、生徒、教職
員、保護者、地域の市民が連携して学校ビオト
ープや園庭ビオトープを実践し、自然を再生す
るだけではなく、教科教育のなかで活用するこ
とにより、生徒の自然環境に対する思いや考え
方を醸成することができ、最近では、優秀な学
校ビオトープを表彰する制度も充実し、2年に1
回コンクールが実施されるようになった。農村
では、安全安心で生物を育む無農薬無化学肥料
栽培を実践することでビオトープを再生できる。
兵庫県豊岡市ではコウノトリの試験放鳥を契機
に、農民、市民、行政が一体となって、魚道な
どによって河川と水路、水路と水日間のビオト
ープネットワークを回復させ、無農薬栽培や中
干しの延期、冬期湛水田にしていくことで田ん
ぼビオトープを拡大しているという。大食漢の
コウノトリは1頭で1日、500~ 700gの生物を
食べる。このような水田ではドジョウやカエル、
タイコウチやミズカマキリなどの水生生物が多
数発生し、コウノトリの胃袋を満たすことにな
る。このような稲作は、コウノトリを問わず食
の安全性や地域絶減に向かっているタガメやゲ
ンゴロウ、ダルマガエルなどの各種の動植物を
守るため、一般営農水田でもぜひ展開する必要
がある。また、機械化が進まず、農民の高齢化
が進む谷戸では、耕作放棄地が増える一方であ
る。新潟県上越市や和歌山市山口地区では、市
民と農民が連携しトノサマガエルやニホンアカ
ガエルなどの地域絶滅を避け、安全安心なお米
を作るために、休耕田を復田して無農薬無化学
肥料で昭和30年代の稲作を実践しはじめた。ヒ
トを除く生物はうそをつかない。我々人間の努
力に応じ、このような水田が様々な市民と農民
の連携により、休耕田を復旧。無農薬無化学肥
料で昭和30年代の稲作の実践を開始する試み自
然再生水田で育つ生きものたちな生物を多数育
むことを教えてくれる。伝統的稲作は、世代を
越えた人の交流により、生きていくための技を
次代に伝えるフィールドにもなる。食品リサイ
クル法が施行されたとはいえ、日本の食品廃棄
物は年平均1136万トンにのぼる。毎年日本国内
と沿岸にこの有機物が堆積し続けている。外国
からの窒素、リン酸、カリ肥料などの輸入を抑
制し、食品廃棄物を堆肥として循環させ、でき
るだけ環境に対する負荷を抑制する必要がある。
食糧自給率は、カロリーベースで40%に過ぎない。
自分が食べるものはできる限り自分で作るよう
心掛けることも重要である。昭和30年代までの
里地里山では、①酸素の供給や水の循環は、勿
論、②生物の多様性を維持し、大古の昔より伝
承伝されてきた③人と自然とのつきあい方、④
身の安全や危険に対する認知の方法、⑤再生可
能な食糧、燃料など生きる糧となる自然など、
徹底循環型生活の技を教えてくれた。まず、こ
れらを学び次代に伝える活動を持続的に展開す
ることが課題として取り上げられている。人と
の生活と共に歩んできた里山の自然環境は今や
荒れ放題である。しかし、少し手を加えるだけ
ですばらしい環境が甦り、キンランやギンラン、
メダカやタガメなど絶滅危惧に陥っている動植
物の自然環境も再生できる。里山再生に携わる
団体は、全国各地に無数である。インターネッ
トのWebで検索すれば皆さんの最奇りにある活動
拠点を検索できる。民の力だけではなく行政が
一役も二役も応援している活動も少なくない。
最初は顔を出すこところから参加し、自分の五
感にあった仲間と活動を始め、次第に視野を広
げてみてはいかがでしようかと本著者は勧誘す
る(養父志乃夫著『ビオトープづくり実践帳』、
誠文堂新光社)。
【注釈】
考察の途上だけれど、緑信仰というものがある
かどうかしらないが、緑に囲まれていれば安心
とか、趣味や造園業の延長でビオトープがある
わけではない。つまりは、対象環境領域での物
質収支(material balance sheet)とかエネルギー収
支(energy balance sheet)の科学的裏付け、数値
化されていなければ「ビオトープ」運動として
の意味は薄れる。それこそ事業仕分けの対象に
なるのではと危惧する。勿論、トンボやドジョ
ウが帰ってきた心理的効果やその影響で生産性
が向上したとか、精神的安らぎや文化価値の向
上の実効性の観測、測定を入れなければ公正で
ないということを踏まえての話しにはなるが。
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