
● 実現しなかったイメージ
インナーの中心となる青森駅前には、公共投資によって
シニア向け分譲マンションやホテルなどが次々と誕生。
老朽化した駅前生鮮市場の再生事業として1980年代
から計画が進んでいたアウガも、コンパクトシティ化の
一端を担う形で185億円をかけて01年に開業。来館
者数は年間600万人を超えるなど活況を呈したが、売
上げは予想の半分以下である。これに対し、佐々木元青
森市長は、景気の低迷で開業前にキーテナントが撤退し
たのは大きな痛手でしたが、他にも要因はある。そもそ
も当初はアウガ単体ではなく、駅前の複数の再開発プロ
ジェクトと連携して街全体を活性化する計画だったとい
う。
アウガを含む駅前の再開発エリアを中心にまずインナー
の暮らしやすさを向上させ、除雪が困難になった郊外の
お年寄りには街中へ住み替えていく。そして、お年寄り
が移住して空き家になったミッドエリアの住宅には、フ
ァミリー世代の居住を促し、そうやって少しずつ街を小
さくしていくコンパクトシティをイメージしマスタープ
ランが計画されたものの、思惑通りには進まなかった。
09年、道半ばで佐々木氏は市長選に落選。次期市長の
下で再開発計画は白紙撤回され、青森市のコンパクトシ
ティ構想は頓挫する。コンパクトシティの本質は、中心
街の活性化という小さい話じゃなく、いかに人々が暮ら
しやすい街をつくるということ。それは将来的な雇用の
創出も視野に入れた長期的な取り組みであった。あった
が、背景として市の財政悪化事情(これは全国的に共通)
があるため頓挫したと考えた方が自然であろう。
● 全国に失敗事例はごまんとある
役所主導の再開発が失敗した例はアウガだけではない。
例えば佐賀市の中心市街地で98年に開業した商業施設
「エスプラッツ」。わずか8年で運営会社が倒産し、巨
大な空き家」が市の中心部に長らく存在するという異常
な状態となった。
また、秋田市の中心部で12年7月に開業した「エリア
なかいち」でも、総合食品売り場の運営会社が売上目標
の未達を理由に開業から2年足らずで撤退。その後も撤
退が相次ぎ、テナントの大幅な入れ替えを迫られている。
共通しているのは、アウガの例が示すように商業施設と
しての採算性の見込みに甘さがある。アウガ再生の報告
書は「非現実的な事業計画をベースにスタートし、それ
が現在の苦境の主因となっている可能性がある」と指摘
されている(「西武も逃げ出した青森駅前再開発ビルの
今」日経ビジネスオンライン 2016.01.27)。
また、街中は家賃も駐車場も高く、土地や家を買うこと
もままならない。住めるのは金持ちだけで、普通の年寄
りは無理。車があれば買い物にも困らないし、そもそも
60年以上暮らした場所を離れるなんて考えられない。
という市民感情が根強く反映されている。自治体の都合
より自らの生活を優先するのは、市民にとって当たり前。
街中に住む合理性が見出せないかぎり、人はこれからも
市内の空洞化に歯止めがかかることはないだろう。
● 失敗しない方法
しかし、経済、財政制約に、ハード整備などで広がった
都市を小規模化するのに多額の投資をして開発すること
は、短期で、経済的/財政的に評価できるものではない
ことも事実。この矛盾解決には、例えば、現在の税制を
見直し全国の自治体のキャッシュフローを変える(=自
治体の財政基盤強化)ことが基本的な方策の1つである。
もっとも、この構造改革を実現するには政治パワーを要
す。
また、莫大な予算を必要とする事業を行わず、子育て支
援や起業支援などを手厚くすることで、街を活性化する
ことは可能、ハコモノに頼らない、知恵と工夫による街
づくりこそ、人口減少時代に求められているとの方法も
魅力的だ(日経ビジネス特集「活力ある都市ランキング
」2016.01.25)。
● 計画外の地域を選ぶ「居住の自由」
だがしかし、コンパクトシティには課題が山積していると
いう。郊外から中心部への住み替えはコンパクトシティ
化の柱の一つだが、居住誘導策は、憲法22条が認める
「居住、移転の自由」への介入との見方も可能であり、
どの自治体も即効性のある施策を打ち出せていない。そ
れどころか、いまなお“コンパクト”と反対の動きであ
る市街地の拡大は止まっていない。現実的に、街を面的
に小さくすることは容易でない。その事例として、山梨
県の2000~10年の居住地域の変遷を示すと下図の
ようになる。山深い地区にも居住エリアが広がり、他都
市でも同様の傾向が見られると言う(「コンパクトシテ
ィはなぜ失敗 するのか 富山、青森から見る居住の自
由 2016.11.08, Ya hoo!ニュース」)。
そして、消滅する集落がある一方、そのすぐそばに新し
い住宅地が出現するケースもある。もし文字通りに街を
コンパクトにするのであれば、強制力を伴う居住制限区
域を設けるなど、思い切った施策が必要になるとした上
で、今後は(1)すでにある社会資本の有効利用によっ
て(2)住民が付加価値の高い仕事に就ける仕組み作り
をするのが最優先だと指摘している。そうすれば、地域
に住む1人あたりの経済的な豊かさを実現すれば、たと
え人口が減って行政サービスが行き届かなくなっても、
地域でお金を出し合ってコミュニティバスなどインフラ
を維持することもできる。物理的に街をコンパクトにで
きない以上、地域の豊かさを向上させる施策にももっと
目を向けるべきだと提言する(同上)。
そして、都市のコンパクトシティ化はすでに国策的な色
を強めている。政府は14年、都市を「都市機能誘導区
域」と「居住誘導区域」に分け、区域外の開発を抑制す
る「立地適正化計画」の導入を決めるが、これは、国が
「理論としては完璧」なコンパクトシティ政策を急ぐの
は、将来的な「居住制限」への布石、そうすると、自ら
高いインフラコストを払ってでも愛着のある土地に住み
続ける「居住の自由」を取るのか、行政サービスの行き
届く居住推奨地区で集住するか。選ばなければならない
と結んでいる(同上)。
この項了
ご健勝のこと何よりです。小生は腰痛の再発ということ
で、朝のお勤めと腕立て伏せ(10回/回)だけは欠か
さずやっております。たかが腕立て伏せと考えていまし
たが、何の、スクワット同じです。ゆっくりと時間をか
け10回はそれはそうとなもので、簡単にでき奥が深い
と感心しております。
前置きはここまでとして、恒例の新年会の準備の季節と
なりました。つきましては、ご意見と近況をお寄せいた
だければ幸甚の次第です。
幹事敬白
【脚注及びリンク】
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- 平成 28年度 主要事業 彦根市
- 都市づくりの基本方針(全体構想) 彦根市
- 橋梁長寿命化修繕計画による対策橋梁について
滋賀県 - 彦根市都市計画道路網見直し検討調査
- 「まちづくりはひとづくり」をめざし 市民主
導のまち創る-近世城下町 彦根市本町地区の2
例の場合-(これからの都市づくりと都市計画
制度 全国市長会) 中島一 2005.05.09 - 中国城郭都市社会史研究 川勝守 著 汲古書院
- 都市計画の世界史、日端康雄 講談社現代新書
- ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 続・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 完・ドイツ流 街づくり読本 水島信
- 都市計画-1 日本の都市計画制度の概要 大谷英
一 - 都市計画-2 都市の歴史と都市計画 大谷英一
- 都市計画の理論 系譜と課題 高見沢実編集
- 「道路をどうするのか 五十嵐敬喜・小川明雄 岩
波新書 - 日本の道路史 武部健一 中公新書
- 道のユニバーサルデザイン 鈴木敏 技報堂
- 道路が一番わかる 窪田陽一 技術評論社
- 「道路」についての国際比較 藤井聡 2010.3.14
- 彦根市都市計画道路網見直し指針
- 地域別のまちづくり方針(地域別構想)-彦根市
- 彦根市新市民体育センタ整備基本計画 2016.10.31
- 彦根市立図書館|簡易検索
- 中心市街地の活性化に関する法律 Wikipedia
- 富山市におけるコンパクトなまちづくりの進捗と
展望 2014.11.26 - アウガ Wikipedia
- 富山市 人と環境に優しいまち 公式HP
- 青森市 都市計画マスタープラン 公式HP
- コンパクトシティはなぜ失敗 するのか 富山、
青森から見る居住の自由 2016.11.08, Ya hoo!ニュー
ス - <アウガ>2副市長辞任 青森市政混迷増す 河北新
聞 2016.01.28
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