久しぶりの、妄想小説です。
でも、書いたのは、もう一年も前のこと。
種になったのは、ヲタ雑誌の、ヨコとたっちょんの誕生日企画で、
ひなちゃんと二人、ケーキを作ってる写真です。
ひなちゃんとふたり、
なにやら楽しげにケーキを飾り付けてるすばるくん。
その出来上がったケーキを、食べたいなあってとこから始まった妄想です。
実際には、こんなことありえへんのでしょうが、
まあ、妄想は自由ですし、
私の気さえすめば、それはそれでよし、として。
お付き合いくださる方は、続きから。
ただ、なんだか、一度UPしたような気もするんですけど、
手元の記録には残ってないので。
「読んだし、これ」と思われた方は、ごめんなさい。
基本、ここに個人名は出てきません。
ご了承くださいませ。

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梅雨時の、気分の晴れない季節に、
私の誕生日は、やってくる。
誕生日が嬉しかったのは、学生の頃までで、
二十歳を過ぎたら、なんだか、とても複雑だ。
祝ってくれる人の一人でもいれば、特別な日だけれど、
ここ何年かは、それすらなくて、
去年までは、ただなんとなく、その日を迎えてた。
だから、彼に、
「なあ、明日、何してるん?」
と言われても、ピンとこなかったっていうのが本音。
「明日ぁ? 締めの前日だから、たぶん、残業・・・かな。そっちは?」
「雑誌の取材と・・・コンリハやな、たぶん」
「どっちも仕事なんだ。じゃ、会うのは無理、ね」
「そうやな、終わんの、深夜かもしらんしな。悪いな」
「なんも、謝ることないやん。どうしたん?」
「は? せやって、明日・・・」
「明日? なんかあったっけ」
「忘れてんのんか、のん気なやつやな」
そう言って、彼は苦笑った。
彼の言葉の意味に気付いたのは、電話を切ったあと、
部屋のカレンダーを見た時だった。
「あ、誕生日」
だから、私の予定を確認したんだ。
一番会いたい日に、一番会いたい人に、会えない・・・・・・。
タイミングの悪さは、私の人生について回るらしい。
ま、しょうがないか。
────── 会えない時に、無理したって続かへん。
それ、よく言うよね。
────── 会えん時には、会えんときなりの楽しみもあるやん。
楽しみって・・・・・・?
────── 例えば・・・、そうやな、今頃何してるやろとか、
次、会えたら、こんなんしよ、とか、
想像してみんのも、ええやん。
でもさあ、会えんかったら、寂しくない?
────── 会えない時間が愛育てるって、いうやんか。
寂しい時間の積み重ねが、互いを想う深さに繋がるんとちゃうん?
どうしても、会いたくなったら?
────── 目を閉じてみ?
は?
────── ええから。
ん。
────── 俺の顔、浮かんだやろ?
付き合い始めた最初の頃の会話。
可愛かったな、今、思うと。
それに、これって、まんま、昔の誰かの歌詞にあるよね。
次の日の夜。
仕事は、やっぱり残業になった。
携帯を開く時間すら無かったから、
そのメールに気付いたのは、会社を出た後だった。
メールは2通。
1つは母親からだ。
誕生日おめでとうってメッセージと、
それから、
今度はいつ帰る? そろそろ落ち着いたら? って、
毎回のお決まり文句だ。
親元に帰らなくなって、どのくらい経つのかな。
帰りたくないわけじゃない。
帰れば、実家の私の部屋はそのままで、居心地だっていいし、
食事はもちろん、
洗濯だって掃除だって、親まかせでいられる。
なにより、夜、ひとりじゃない安心感がある。
だけど。
親の口から聞かされる、名前すら忘れていた同級生の話。
いついつが結婚式だの、
妊娠何ヶ月だの、
子供がいくつになっただの。
狭い町の、狭い人間関係だけで暮らす親にとっては、
それらは大ニュースなのだろうが、
私にとっては、鬱陶しいだけで、
必然、
帰省する足が遠のいている。
いろいろ聞かれたり、話されたりするのも面倒なので、
『また、連絡する』とだけ、送信。
そっけないかな、
また彼に叱られるかな。
オカン大好きの彼からしたら、
私の、この態度は、憤慨ものらしいからね。
もう1つのメールは、その、彼からだった。
『家に帰ったら、冷蔵庫、開けてみ』
それだけ。
なに? わけわからん。
不思議に思いつつ、玄関の鍵を開け、リビングに入る。
一人暮らしの小さな部屋には、
カウンター式のミニキッチンが付いていて、
狭いキッチンスペースには、
小さめの冷蔵庫が備え付けになっている。
私は、冷蔵庫を開けてみた。
中には白い箱。
取り出した中身は・・・。
「なに、これ? ケーキ・・・?」
そこにあったのは。
重ねられたスポンジ。
白い生クリームに挟まれたイチゴ。
搾り出されたクリームは、お世辞にも綺麗とは言い難く、
上にのったフルーツも、
散らされたチョコのかけらも、
どうみても、
手作り、なんだけど。
バースデイケーキってことは、
添えられたチョコのプレートで分かる。
それが、私宛だってことも。
でも。
まさか、これ・・・?
首を傾げた、その時、携帯が着信を告げた。
────── HAPPY BIRTHDAY!
ありがと。
────── 今、どこにおるん?
え、もう部屋に戻って来たよ。
────── 冷蔵庫、見た?
うん、いま、目の前にあるけど。これって。
────── あんな、今日、雑誌の取材あるって言うたやん?
それでな、ケーキ作ってん。
あなたがケーキ? 作ったの?
────── いやいや、正確に言うと、用意されてたもんに、
生クリームやらフルーツやらで飾っただけやねんけど、な。
それが、これ?
────── ちゃうちゃう、撮影に使ったんは、もう食べてもうたわ。
大食いのメンバーがおったからな。
ほんなら、これは?
────── せやから、撮影の合間に、ちょこちょこっと、な。
材料、あるみたいやったから、分けてもろうて。
撮影のついで、なん?
────── ついで、ちゃうよ。
あ、いや、ついでって言われても、しゃあない状況やけど。
一人で飾ったん?
────── あたりまえやろ。
誰かに、何か、言われんかった?
────── 言われた・・・けど、そんなん、どうでもええねん。
ここまで、どうやって運んできたの?
撮影のあと、コンリハって、言うてたよね。
────── 移動の時に、ちょっと、遠回りしてもろうた。
怒られたんちゃう?
────── 怒られるんは慣れとるわ。
それに、誕生日やって言うたら、許してもらえたし。
なあ、それより、どない?
どないって・・・
────── 言うとくけど、こんなん、滅多にせえへんぞ。
まあ、そうでしょうね。
仕事中に、彼女へのプレゼントなんか作ってたら、確実、仕事、もらえなくなるわ。
────── なあ、で、どやねん。
うれしい、ありがと。
────── ちゃんとしたんは、こんど会えた時に、やるから。
待っとけよ。
ええよ。これで十分やわ。
甘いもんの嫌いなあなたが、私のためにケーキ作ってくれたってだけで、
最高のプレゼントやもん。
────── あかんあかん、そんなん言うたら、照れるわ。
今日は、まだ、仕事なんでしょ?
────── ああ、もうちょい、詰めなあかんこと、あるからな。
そう・・・。気をつけて、ね。
────── お前は、もう仕事終わったんやろ?
うん。
────── そしたら、夜更かしせんと、早よ寝るんやで。
わかった。
────── また、連絡するからな。
うん。仕事、頑張ってね。
────── ぉん。
仕事の合間、
どんな顔してケーキの材料、分けてもらったんだろう。
何を思いながら、このケーキ、作ったんだろう。
恥ずかしくなかったのかな。
甘いもの、苦手やのに。
私は携帯のカメラで、ケーキを写す。
画面から、あふれんばかりの、彼の愛情。
あとで、待ちうけにセットしよっと。
食べてるとこ、携帯カメラで上手に写せるかな。
あとで、彼に送ったら、何て言うかな。
それから、ナイフを取り出して、一切れ、切り分けた。
せっかくだから、紅茶も入れて、
テーブルもちゃんとセッティングして。
一人きりだけど、独りじゃない、BIRTHDAY PARTYの始まり。
ここにいるのは、私1人だけど。
去年までと同じ、1人の誕生日だけど。
でも、独りじゃない、
幸せな誕生日。
────────── この日の夕方、撮影現場にて。
「あのォ・・・、このケーキの材料、ちょっともらってもええ?」
スタッフの一人に、彼は尋ねた。
その言葉に、いちいち反応したのは、近くにいたメンバーたちだ。
「こそこそ、何やっとんねん」
「なに? ケーキの材料なんか、どうするん」
「おまえ、甘いもん、苦手やったんちゃうんけ」
「せやって、今日、あいつの誕生日やねんもん。
仕事で逢われへんし、プレゼント、用意するヒマもなかってんぞ」
「え~~ッ! それって、バースデイケーキにするん?」
「だからって、おまえ、仕事の残りのケーキなんか、あかんやろ」
「このあと、コンリハやって、知ってるよなあ?」
「わかってるよ、そんくらい」
「終わんの、何時になるか、分からへんぞ」
「この季節、ケーキ、傷むんと違うかなあ」
「待て待て。そもそも、残りもんってとこからして、アカンやろ」
「だって、もう、ケーキ屋なんか、今更、間に合わへんやんけ。
せやったら、せめて、手作りでいったろか、と」
「発想は褒めたるけど、やなあ」
「プレゼントくらい、前もって準備しとけや」
「なあ、仮に作ったとして、どないして届けるん?」
「こっからの移動ん時に、ちょこっと、遠回りしたってぇや」
バコン!!
「痛ぅ・・・。叩くなや」
「また、お前は勝手言うてから」
「彼女、帰って来てんの?」
「おらんかったら、どうすんねん」
「カギは、あんねん。ちょっと寄って、冷蔵庫に入れといたら済む話やん」
「どうもこうも、しゃあない、めんどくさいわ」
メンバーの一人が、マネージャーに確認する。
「回ってくれるって。ほんでも、ぶつぶつ言うてんで」
「よう、謝っとき」
「向こうで待ってるメンバーにも、連絡しといたほうが、ええんちゃうの」
「分かってるって。ちゃんとするから。ケーキ、作ってもええか?」
彼はスタッフに聞きながら、
スポンジを重ね、クリームを塗り、
フルーツを飾り、またクリームを絞って、チョコで飾り・・・、
なんとか、それらしいケーキを仕上げたのだった。
「それにしても、お前が手作りケーキねえ」
「恋すると、人は変われるんやな」
「えっ・・・と、でも、それ、ほんまに彼女にあげるん?」
出来上がったケーキを見て、他のメンバーが苦笑した。
「もうちっと、上手に出来へんの?」
「ここんとこ、クリーム、崩れてるやん」
「なあ、それ、食べれるん?」
「ああ、もう!! うるさいッ! こんでええねん。よう出来てるやんけ。
我ながら、ええ出来やで」
「気持ち、伝わるとええなあ」
「まあ、大分のんきなコみたいやけど、ほんでも、なあ」
「これ、うまくいけへんかったら、また、人間不信やで」
「お前ら、勝手なことばっかし言いやがって。
大丈夫やって。ちゃんと伝わるわ」
「ほんまかいな」
「ま、お手並み拝見やな」
「彼女のリアクション、楽しみやなあ。カメラでも、仕掛けるか?」
「あかん!! それ、犯罪やで。・・・あほ、おまえ、いらんとこツッコますな」
夜も更けたころ、
切り分けたケーキを前に、満面の笑顔を浮かべた彼女の画像が、
彼に届いた。
照れくさそうな彼をみて、
集まっていたメンバー全員が、顔見合わせて安堵したのは、いうまでもない。
FIN.