2022年度、草加市の市民税収は190億9660万円で前年度より5億円近い増収となりました。ただ、市民のお給料が増えて生活が楽になって税収も潤って…という実感は湧いてきません。そこで、市民税収と給与所得にスポットをあてて草加市の現在地を探ってみました。なお、限られた情報の中での一考察である点をご留意ください。
■法人はコロナ前水準に戻らず、個人は過去最高額に
税収の根幹となる市民税収は、個人からいただく個人市民税と、企業などからいただく法人市民税があります。
法人市民税は、新型コロナウイルス感染症拡大前の2019年度が約28億円でしたが、翌2020年度は22億円で大幅な減収となりました。その後、2021年度からは2年連続で増加に転じていますが、依然としてコロナ禍前の水準には戻っていません。なお、2022年度は製造業やサービス業、建設業、医療・福祉関連業が増収となった一方、卸売・小売業や金融・保険業、運輸業などが減収となりました。
個人市民税は、法人市民税収が大幅に落ち込んだ翌年の2021年度に前年度比2億円超の減収(約160億円)となりましたが、2022年度は164億円で前年度より4億円増に転じ、過去最高額を更新しました。
■税収増の背景に年金者や主婦・夫の就労
個人市民税収が増えた理由として市は、全体の納税義務者数や給与所得金額の増加が主な要因との見解を示しています。
そこで、納税義務者のメインとなる給与所得者の状況について調べました。
2022年1月1日時点における草加市の生産年齢人口(15歳~64歳)は16万148人で、新型コロナウイルス感染症が拡大する前の2019年1月1日から2981人増加しました。草加市では子どもの人口が減少傾向にありますが、今のところ生産年齢人口は増えています。
一方、2022年度における給与所得者数は10万6870人で、2019年度より4290人増加しており生産年齢人口の増加人数を上回っています。
通常、生産年齢人口が増えれば、働く世代の絶対数が増えるため、給与所得者数もその範囲内で増えます。有効求人倍率の上昇をはじめ雇用情勢が一定改善したことなどの影響も考えられます。
しかし、それだけでは現状のように給与所得者の増加人数が、生産年齢人口の増加人数を大幅に上回っている理由にはなりません。
その背景には、実質賃金が上がらないなか夫・妻の収入だけでは生活が成り立たず主婦・主夫が仕事を始めたり、そもそも上がることのない年金だけでは生活できない高年者が仕事を始めるなど、働いていなかった方が就労しはじめたことなどが考えられます。私のもとにも、こうしたご相談は非常に多く寄せられています。
■給与所得200万円以下が減、200万円超は増加
次に、給与所得金額についてです。
2022年度における給与所得者の課税標準段階別所得割の人数(令和4年度決算課税状況等の調べによる実績値)を表にまとめました。前年度と比較して「200万円以下」の人数は284人減って6万3913人となっています。一方、「200万円超~700万円以下」と「700万円超~1000万円以下」、「1000万円超」の所得区分はいずれも増加しました。給与所得者数は増えるなかで200万円以下の層のみ減少していることから、パートやアルバイトなど非正規の方が正規雇用となったり、ダブルワーク・トリプルワークをはじめるなど、200万円以下の層で雇用形態や働き方を変えた方が多かった可能性などが考えられます。ただ、ずいぶん大雑把な所得区分でのカウントしか公式記録がなく、家族構成や年齢などをクロスさせた検証もできないため細かい正確な分析は困難です。
非常にザックリとした考察ではありますが…
草加市における全体の給与所得者数は増加傾向にあり、製造業やサービス業を中心とした企業業績の回復基調により、市民税は個人・法人ともに増収となっています。
しかし、その背景には、新型コロナや物価高騰などにより年金だけで生活できない高年者や夫・妻の収入だけでは生活が成り立たない主婦・主夫が仕事を始めるなど、働かないと生活していけない実態が浮かび上がってきます。そして、草加市を支える労働者の給与所得層は約6割が所得200万円以下です。多くの市民が苦しい生活のなかでお支払いいただいた血税によって草加市政が成り立っています。