草加市立病院2022年度決算の概要を二部にまとめました。2回目は新型コロナやエネルギー価格高騰の影響、働き方改革、産婦人科問題の返還金など各項目についてです。
■新型コロナによる病床への影響
草加市立病院では、新型コロナウイルス感染症重点医療機関として埼玉県内の入院患者さんを受け入れています。各年度における入院受け入れの延べ病床数、感染拡大による最大時の病床数と最大配置看護師数を下表にまとめました。
また、草加市立病院における全体の病床利用率は64.6%で、前年度より4.1ポイント減少しました。そのうち、コロナ病床の影響を除いた病床利用率は76.7%でした。新型コロナ拡大前の2019年度の75.3%を上回っています。
【表2】新型コロナ感染者受け入れのために用意した延べ病床数
■診療報酬改定の影響
2020年度の診療報酬改定により診療報酬本体は0.43%の引き上げ、薬価などは1.37%引き下げられ、全体では0.94%の引き下げとなりました。草加市立病院への影響は、地域と連携した感染防止対策への取り組みを評価する感染対策向上加算の見直しなどにより入院収益が約1682万円増加しました。
■医師の働き方改革と看護師の処遇改善
医師の働き方改革の取り組みとして2022年度は、多職種の職員により構成された役割分担推進会議で医師の負担軽減に向けた取り組み事項の協議や、労働基準監督署への宿日直許可申請に向けた準備などがおこなわれたとのことです。
看護師の処遇改善の取り組みは、2021年2月から月額4千円支払っていた職務調整手当について、診療報酬改定による手当が開始された2022年10月から月額12000円に増額されました。
■エネルギー価格高騰の影響
燃料価格の高騰により、市立病院の電気料金は前年度比7494万円増の約1億9294万円でした。また、ガス料金も前年度より3425万円増加して約9950万円となりました。光熱費全体では前年度より1億円を超す負担増です。
■産婦人科問題の返還金
以前、草加市立病院でおきた婦人科腹腔鏡手術等の保険請求上の過誤について、監査結果にともなう返還金が生じています。これまでに、各保険者へ1億2754万円が返還されました。2022年度決算時の未返還額(概算)は、保険者分が約2500万円、患者分が約1500万円と算出されています。なお、対象となる患者への返金状況については、一部の保険者から請求書類が届いていない状況により、患者への返金額が確定しないため、患者への返還は依然としておこなわれていません。市立病院は、金額が確定次第、対象となる患者へ通知を送付し、速やかに返金を進めるとしています。
草加市立病院の2022年度決算は見かけ上、資金量が回復し経営が良好な状況のように見えます。しかし、黒字化の要因であった新型コロナ関連補助金は、新型コロナが2類から5類に移行されたことで今後は削減されていく見通しです。材料費やエネルギー価格の高騰なども病院財政に影響を及ぼしています。現状のままでは積みあがった資金があっという間になくなり、コロナ前の自転車操業に戻ってしまいかねません。
一方、長期にわたり財政悪化で重要な機能強化が実施できずにいましたが、実に6年ぶりの投資となる手術支援ロボット「ダビンチ」の導入など、コロナ禍後の病院運営を見据えた取り組みも進められています。地域病院の中核を担う基幹病院としてどう存続・発展させていけるか、重要な岐路に立たされています。