■黒字決算と基金取り崩し
草加市の 2022 年度一般会計決算は、歳入総額が 1017 億円、歳出総額が 945 億円で単純な収支(形式収支)は 71 億円の黒字となりました。そこから翌年度へ繰り越すべき財源を差し引いた実質収支は57億円の黒字でした。
しかし、そこから前年度の実質収支を控除し、基金の取り崩しを差し引くなどした最終的な収支(実質単年度収支)は約7 億円の赤字でした。前年度の黒字 50 億円から大幅に悪化しています。実質単年度収支が赤字であることから、基金など貯蓄の取り崩しなどにより財政をやりくりしている状況にあります。
税収の根幹である市税収入が前年度比 11 億円増の 386 億円になるなど、コロナ禍で落ち込んだ税収が回復しているような側面(市税収入の詳細はコチラ)も見られます。しかし、収支全体では前年度の余ったお金(繰越金)やこれまでの積立(基金)を取り崩してのり越えた決算状況が伺えます。
■歳出項目ごとの増減
一般会計の歳出項目を前年度比較で一覧にまとめました。
民生費や衛生費の増減は、新型コロナワクチン接種の関連費用など国の施策の影響が主要因となりました。また、ここ数年は総務費の市役所本庁舎建設や、土木費の新田駅東口土地区画整理事業などが歳出額の増加要因となっています。それら事業により借金(市債)も増加したため、返済する公債費も増加しています。
【参考】2022 年度の主要事業 ※千円以下は切り捨て
- 新庁舎建設工事・備品購入:32 億 3641 万円
- 獨協大学前<草加松原>駅のホームドア設置補助:1 億 500 万円
- 記念体育館エアコン設置に向けた設計業務:1164 万円(設置工事は 2023~24 年度実施)
- 市民温水プール建て替えに向けた解体工事:4547 万円
- 松原児童青少年交流センターミラトン建設工事:3 億 7374 万円
- 児童発達支援センターあおば学園建設工事:9638 万円
- 新型コロナワクチン接種関連費:8 億 780 万円
- プレミアム付商品券事業:3 億 8788 万円
- 新田駅東西口区画整理事業:17 億 3521 万円
- 小中学校体育館のエアコン等設置事業:8 億 6759 万円
■貯金減少
2022 年度末時点における草加市の基金残高は合計 155 億円で、前年度より 26 億円減少しました。そのうち、使い道が自由である財政調整基金は 74 億円で、前年度より 8 億円減少しました。また、市役所新庁舎建設に向けて、2019年度末に45億円まで積み立てた庁舎建設基金が、建設工事の進捗により1億円まで減りました。
■借金増加
草加市の市債残高(借金)は、全会計の合計額が前年度比15億円増の1029億円でした。2020年度まで削減が進んでいましたが、2年連続で増加に転じています。
■財政の硬直化
2022年度の経常収支比率は96.3%でした。
お家で例えると…毎月の給料と比べて、食費や家賃、水光熱費などの生活費(経常的な経費)の割合が大きくなると、家計に余裕がなくなってしまいます。急な出費が必要な時などに対応できなくなってしまいます。同じように、草加市の財政も、災害時などの突発的な対応や自由な財政運営ができる弾力性を確保しておく必要があります。それを測る指標が「経常収支比率」です。
草加市の場合、家計の生活費にあたる経常経費が、地方税や交付税などの経常的な収入の96.3%も占めています。経常収支比率が高い=財源に余裕がない状況で、財政構造の弾力性が低い「硬直化」していると言えます。ただし、経常経費は市民サービスの維持に必要な経費であり、財政構造を弾力化させるために市民生活に直結する経常経費をただ削減させれば良いという訳でもありません。どこに軸足をおき、どう財政のバランスをとるか、みんなで考えていくことが重要です。
※単位はすべて単位未満切り捨て。
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