殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

マツコ注意報

2010年01月06日 23時26分23秒 | みりこんぐらし
年末年始はテレビを見る機会が増える。

増える…と言ったら、普段あんまり見てないようなので

いちだんと増える…にしておこう。


別室で一人テレビを見ている夫は、ある人物が登場するたびに

私の所まで走って来てチャンネルを変える。

「おまえが出てるぞ!」


マツコ・デラックス。

顔つきも、毒を含んだしゃべり方も

ふてぶてしい態度や威圧感までそっくりだと言うのだ。

完全否定および断固抗議ができないところがつらい。

夫を見る目つきなんか、自分でも似ていると思う。


夫の前では営業、営業と

できるだけ笑顔で優しく接しているつもりだが

時折本心が顔と態度に出てしまう。

気をつけねば。

体重まで似てしまったら危険だ。


私と、姑のヨシコはよく似ていると言われる。

顔の部品というより、雰囲気や笑い方がそっくりだという。

夫の姉カンジワ・ルイーゼが嫁で

私のほうが娘だと思い込んでいる人も多い。

人から「似ている」と言われるたびに

その昔、美貌とうたわれたヨシコは、ものすごくイヤな顔をする。


しかし、ヨシコより似ているのが夫の祖母である。

義父の母親タキエ(故人)だ。

お世辞にも美しいとは言えないタキエの若い頃の写真は

私と生き写しと言ってもいい。


まだ幼かったうちの子供たちは、完全に私と間違え

「母さんと一緒に写ってる子供は、僕らじゃない!」

と泣いた。

そこに写ってる子供は、あんたらのお祖父さんだ。


おそらく、タキエの顔とヨシコのイメージを合わせ持ったのが

私なんだと思う。

この三代の嫁は、亭主の浮気に翻弄されるという共通点の他に

キツい性格や生い立ちもまことに類似している。

嫁ぐことで実家が絶えたのも同じだ。


浮気は夫婦双方の相性や性格にも問題はあろうが

私にはもうひとつ「送り込まれた」という感触がある。

よそのお宅のことは知らないけど

夫の家系は、もしやあの世で居心地が悪いんじゃなかろうかと思うのだ。


夫を始め、親族の男性諸君を眺めていたら

だいたいこんな人たちの多い家系であろうと推測するのは容易だ。

快楽至上主義に徹した結果

売り上げ目標を達成出来なかったダメなセールスマンのように

冥土カンパニーで肩身の狭い思いをしているんじゃないかと思えてくる。


生前の行い…つまり営業成績がふるわなかったため

冷暖房不完備の暗い部屋で、席はりんご箱にムシロ。

コーヒー?ダメダメ、これは清らかに生きて

人に親切だったかたがたの飲みものです…とか言われてんの。


そこで似たようなステージを用意し、似たような女を送り込んでは

問題を解消してくれるのを待つ。

宿題がクリアできなければ次の代に持ち越され

居心地の悪さは続く…。


タキエは早いうちに亭主をあきらめた。

ヨシコはいまだに、80近い亭主の女性関係に目を光らせる

愛の迷い子続行中。

私は先輩二人のいいとこ取りをして

伸縮性のあるゴムひもで結わえた夫婦二人三脚を目指している。

それが正解か否かは不明だ。

子供たちがまだ独身なので、確認ができていない。

彼らが結婚して、もしも夫と同じことをしたらペケ…な~んてね。


霊だの因縁だのを言い訳にして

自分の至らなさを責任転嫁する気はさらさら無いが

勝手にそんなことを考えていると、けっこう楽しめる。


私が死んだら、ぜひ聞いてみたいと思っている。

「どうっすかね~?」

「あ~、まあまあじゃないの?」

満点とはいかないまでも

せめて及第点は取りたいものである。


ところで子供たちは普段、私のことをよく「おそのさん」と呼ぶ。

『魔女の宅急便』に出てくる“パン屋のおその”である。

「母さんが出てる!」

初めてその映画を見た時、かなり興奮していた。

以来十何年、続いている。


マンガ!しかも妊婦!

ま、私の欲するところの形容詞…優雅、ゴージャスとは遠くかけ離れた

下町のおっかさんには間違いない。

最近は呼ばれる回数が減ったように思う。

年を取って、外見や勢いが衰えたからだろう。


パン屋のおその経由、マツコ・デラックス行き…。

そして老婆となったあかつきには、あの二人のようになるのだ…

ああ…。
コメント (52)
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