すみこはんから「高血圧に良い食事」というお題をいただいた。
そこで義母ヨシコと同居してきた、この6年間を思い出してみる。
大腸癌で腸が人より15センチ短く
胆嚢摘出、狭心症で心臓カテーテル入り
血糖、血圧、中性脂肪‥いずれもかなり深刻な数値を誇っていたヨシコと
同居に踏み切るきっかけになったのは、6年前に見つかった胃癌であった。
彼女が長生きするとは、誰も思っていなかった。
もちろん本人もそのつもりで、すっかり悲劇のヒロインになりきっていた。
が、ヨシコは今のところ元気バリバリ。
こんなに長い間、入院や手術をしないことは無かった。
同居して1年ほど経過した頃、まずヨシコの血圧が下がり始めた。
それからさらに1年後、血糖値が下降を始め
連動して中性脂肪や高脂血症も徐々に平常値に近づいていった。
今では心疾患者特有のゼーゼーと音を立てる呼吸、頻繁な生あくびも消えた。
「それは私が治療食の調理師だったから〜!」
と言いたい。
言いたいが、違う。
この状況には、思い当たるフシがあった。
まず、倒産しかけていた義父アツシの会社が合併によって救われ
億単位の負債から解放されたことが大きい。
ストレスは血圧にとって最大の敵である。
加えて、何もかも失った親を我々夫婦が扶養するようになったため
食卓からヨシコの好物が消えたことが挙げられる。
複数の漬物、昆布や海苔の佃煮、金山寺味噌やひしおの類い
梅干し、ラッキョウ、ふりかけなんかだ。
私はこれらを買い与えなかった。
ヨシコの体を思って、ではない。
ゼニが惜しいからだ。
たかが漬物、たかが佃煮‥人はそう思うかもしれない。
しかし、おびただしい嗜好品まで面倒を見たくない。
毎日どれかが欠品するので、買い物も追いつかないのだった。
さらに彼女の好物、1日1リットルのコーヒー牛乳も切った。
ヨシコは当初、冷たいだのケチだの自分は不幸だのと私を恨んだ。
中毒の禁断症状である。
買いに行くのが面倒なので、無視。
最初のうち、ヨシコは娘に頼んでいたが
自腹を切るのがバカバカしくなったのか、コーヒー牛乳からも足を洗った。
血糖値、並びに糖尿病の進行を表すhbA1cの数値が下がり始めたのは
それ以降である。
やがて全ての数値が劇的に改善したのは、昨年の夏。
血液検査の数値は全て理想的水準で、月に一度の検診は今年から隔月になった。
大好きな主治医とたまにしか会えなくなって、不満げなヨシコである。
つまり私がやったのはケチと意地悪だけであり
食事の面では、ヨシコに何ら気を使わなかった。
よって病食調理の経験は、ほとんど役立っていない。
「早く元気になりたい」
口ではそう言いながら、その同じ口で逆の食品を食べる図は
病院勤めの8年間でさんざん見てきたが
同じ例が我が家にも存在したことを再確認したまで。
これに気づかないため、改善がされにくいケースが多々あるので
すみこはんのテーマから外れるが、ついでに記しておく。
例えば野菜がいいと聞いて、サラダを食べる。
真面目な人ほど、毎日たくさん食べる。
が、たくさんのサラダを食べるためには、ドレッシングがたくさん必要になる。
ドレッシングの塩分やカロリーは、あなどれない。
これを毎日続けたら、野菜のビタミンや食物繊維を摂取しているのか
ドレッシングの塩分とカロリーを摂取しているのか、わからなくなる。
だったら、と、ノンオイルドレッシングを使ったとする。
けれどもノンオイルドレッシングの糖分は、けっこう高い。
瓶の横っ面に細かい字で印刷された、成分表示を見てみるといい。
成分表示は、多く使用されている原料から順に記載されている。
ノンオイルドレッシングは、最初に糖分が書かれているはずだ。
ということは、何よりも糖分が一番多く配合されているわけで
糖分が多いということは、カロリーもそれなりにある。
健康な人に向けた健康志向の食品と、病状を改善する食品は
別物の場合が多いのだ。
医者も糖尿病患者にはノンオイルドレッシングを勧めず
何もつけないサラダ食を勧めている。
何もつけないサラダ‥つらそうだ。
病の陰にはこのように、盲点が存在するケースが少なくない。
気をつけても数値の改善が見られない場合は、今一度
ご自身の食習慣を見直してみるといいかもしれない。
前置きが長くなってすみません。
さあ、やっとお料理よ!
『レタス鍋』
鍋には白菜が定番である。
が、白菜は入れるだけで食べた気になってしまい
案外、量は食べてないものだ。
高血圧には減塩も大切だけど、同じく大切なのは食物繊維。
そこでレタス。
レタスは準備が早い。
半分に割って洗っておけば、すぐ登板できる。
しゃぶしゃぶにも、味をつけた鍋にもよく合う。
あんまり煮えないうちに、シャリシャリとした食感を楽しむ。
牛、豚、鶏、鴨、肉団子に小腸ホルモン‥
魚の鍋以外は、たいてい合う。
レタスの食物繊維はあまり多いとは言えないが
熱を加えると小さくなるので、たくさん食べられる。
総合した摂取量をかんがみれば、レタスに軍配が上がる。
レタスに加え、小松菜も入れるといい。
小松菜は価格が安定しており、食物繊維、ビタミン、鉄分、カルシウムが豊富だ。
彩りも良くなる。
肉で釣り、ニラと混同させれば、子供や男も食べる。
うちは小松菜の葉っぱの部分をちぎって、ウズラやインコに与えているので
彼らが食べない茎の部分を料理によく使う。
鳥のおこぼれを人間がいただくという、惨めな状態である。
『肉団子鍋』
レタスと小松菜を入れた鍋の肉団子バージョン。
①豚ミンチと鶏ミンチに白ネギ、人参、生椎茸のみじん切りを入れる。
②少量の酒と醤油、生卵、しようが汁を加えて混ぜる。
③団子にして片っ端から湯を張った鍋に入れ、めんつゆで薄く味付け。
④アクをすくい、野菜を投入。
以上。
めんつゆでなく、塩味や味噌味にしてもおいしい。
鶏ミンチを入れるのは、あっさりさせるのと
フワフワの柔らかい団子にするため。
豚ミンチだけでもいいし、団子に入れる野菜も自由。
もっと凝りたければ、豚と鶏に白身魚のすり身を少し加えると
ちゃんこ屋の味になる。
息子が小学生の頃、親子で参加する学校行事があり
これを子供たちに作らせたことがある。
児童は嬉々として団子を丸め、親子ともども大いに楽しめた。
鍋の時、血圧の高い人はポン酢とシメを避ける。
鍋ものが体に良くても、塩分の多いポン酢をジャブジャブ使ったら何もならない。
シメとして食べるうどんなどの麺類は、製造工程で塩が多く使われており
塩味がしなくても体内には塩分が取り込まれる。
煮詰まって凝縮されたダシを吸う雑炊も
塩分摂取量が増えるので、回避する方が賢明である。
血圧にはこれ!といった献立ではなくて申し訳ないが
食べ方のコツが少しでも伝わっていれば幸いだ。
そこで義母ヨシコと同居してきた、この6年間を思い出してみる。
大腸癌で腸が人より15センチ短く
胆嚢摘出、狭心症で心臓カテーテル入り
血糖、血圧、中性脂肪‥いずれもかなり深刻な数値を誇っていたヨシコと
同居に踏み切るきっかけになったのは、6年前に見つかった胃癌であった。
彼女が長生きするとは、誰も思っていなかった。
もちろん本人もそのつもりで、すっかり悲劇のヒロインになりきっていた。
が、ヨシコは今のところ元気バリバリ。
こんなに長い間、入院や手術をしないことは無かった。
同居して1年ほど経過した頃、まずヨシコの血圧が下がり始めた。
それからさらに1年後、血糖値が下降を始め
連動して中性脂肪や高脂血症も徐々に平常値に近づいていった。
今では心疾患者特有のゼーゼーと音を立てる呼吸、頻繁な生あくびも消えた。
「それは私が治療食の調理師だったから〜!」
と言いたい。
言いたいが、違う。
この状況には、思い当たるフシがあった。
まず、倒産しかけていた義父アツシの会社が合併によって救われ
億単位の負債から解放されたことが大きい。
ストレスは血圧にとって最大の敵である。
加えて、何もかも失った親を我々夫婦が扶養するようになったため
食卓からヨシコの好物が消えたことが挙げられる。
複数の漬物、昆布や海苔の佃煮、金山寺味噌やひしおの類い
梅干し、ラッキョウ、ふりかけなんかだ。
私はこれらを買い与えなかった。
ヨシコの体を思って、ではない。
ゼニが惜しいからだ。
たかが漬物、たかが佃煮‥人はそう思うかもしれない。
しかし、おびただしい嗜好品まで面倒を見たくない。
毎日どれかが欠品するので、買い物も追いつかないのだった。
さらに彼女の好物、1日1リットルのコーヒー牛乳も切った。
ヨシコは当初、冷たいだのケチだの自分は不幸だのと私を恨んだ。
中毒の禁断症状である。
買いに行くのが面倒なので、無視。
最初のうち、ヨシコは娘に頼んでいたが
自腹を切るのがバカバカしくなったのか、コーヒー牛乳からも足を洗った。
血糖値、並びに糖尿病の進行を表すhbA1cの数値が下がり始めたのは
それ以降である。
やがて全ての数値が劇的に改善したのは、昨年の夏。
血液検査の数値は全て理想的水準で、月に一度の検診は今年から隔月になった。
大好きな主治医とたまにしか会えなくなって、不満げなヨシコである。
つまり私がやったのはケチと意地悪だけであり
食事の面では、ヨシコに何ら気を使わなかった。
よって病食調理の経験は、ほとんど役立っていない。
「早く元気になりたい」
口ではそう言いながら、その同じ口で逆の食品を食べる図は
病院勤めの8年間でさんざん見てきたが
同じ例が我が家にも存在したことを再確認したまで。
これに気づかないため、改善がされにくいケースが多々あるので
すみこはんのテーマから外れるが、ついでに記しておく。
例えば野菜がいいと聞いて、サラダを食べる。
真面目な人ほど、毎日たくさん食べる。
が、たくさんのサラダを食べるためには、ドレッシングがたくさん必要になる。
ドレッシングの塩分やカロリーは、あなどれない。
これを毎日続けたら、野菜のビタミンや食物繊維を摂取しているのか
ドレッシングの塩分とカロリーを摂取しているのか、わからなくなる。
だったら、と、ノンオイルドレッシングを使ったとする。
けれどもノンオイルドレッシングの糖分は、けっこう高い。
瓶の横っ面に細かい字で印刷された、成分表示を見てみるといい。
成分表示は、多く使用されている原料から順に記載されている。
ノンオイルドレッシングは、最初に糖分が書かれているはずだ。
ということは、何よりも糖分が一番多く配合されているわけで
糖分が多いということは、カロリーもそれなりにある。
健康な人に向けた健康志向の食品と、病状を改善する食品は
別物の場合が多いのだ。
医者も糖尿病患者にはノンオイルドレッシングを勧めず
何もつけないサラダ食を勧めている。
何もつけないサラダ‥つらそうだ。
病の陰にはこのように、盲点が存在するケースが少なくない。
気をつけても数値の改善が見られない場合は、今一度
ご自身の食習慣を見直してみるといいかもしれない。
前置きが長くなってすみません。
さあ、やっとお料理よ!
『レタス鍋』
鍋には白菜が定番である。
が、白菜は入れるだけで食べた気になってしまい
案外、量は食べてないものだ。
高血圧には減塩も大切だけど、同じく大切なのは食物繊維。
そこでレタス。
レタスは準備が早い。
半分に割って洗っておけば、すぐ登板できる。
しゃぶしゃぶにも、味をつけた鍋にもよく合う。
あんまり煮えないうちに、シャリシャリとした食感を楽しむ。
牛、豚、鶏、鴨、肉団子に小腸ホルモン‥
魚の鍋以外は、たいてい合う。
レタスの食物繊維はあまり多いとは言えないが
熱を加えると小さくなるので、たくさん食べられる。
総合した摂取量をかんがみれば、レタスに軍配が上がる。
レタスに加え、小松菜も入れるといい。
小松菜は価格が安定しており、食物繊維、ビタミン、鉄分、カルシウムが豊富だ。
彩りも良くなる。
肉で釣り、ニラと混同させれば、子供や男も食べる。
うちは小松菜の葉っぱの部分をちぎって、ウズラやインコに与えているので
彼らが食べない茎の部分を料理によく使う。
鳥のおこぼれを人間がいただくという、惨めな状態である。
『肉団子鍋』
レタスと小松菜を入れた鍋の肉団子バージョン。
①豚ミンチと鶏ミンチに白ネギ、人参、生椎茸のみじん切りを入れる。
②少量の酒と醤油、生卵、しようが汁を加えて混ぜる。
③団子にして片っ端から湯を張った鍋に入れ、めんつゆで薄く味付け。
④アクをすくい、野菜を投入。
以上。
めんつゆでなく、塩味や味噌味にしてもおいしい。
鶏ミンチを入れるのは、あっさりさせるのと
フワフワの柔らかい団子にするため。
豚ミンチだけでもいいし、団子に入れる野菜も自由。
もっと凝りたければ、豚と鶏に白身魚のすり身を少し加えると
ちゃんこ屋の味になる。
息子が小学生の頃、親子で参加する学校行事があり
これを子供たちに作らせたことがある。
児童は嬉々として団子を丸め、親子ともども大いに楽しめた。
鍋の時、血圧の高い人はポン酢とシメを避ける。
鍋ものが体に良くても、塩分の多いポン酢をジャブジャブ使ったら何もならない。
シメとして食べるうどんなどの麺類は、製造工程で塩が多く使われており
塩味がしなくても体内には塩分が取り込まれる。
煮詰まって凝縮されたダシを吸う雑炊も
塩分摂取量が増えるので、回避する方が賢明である。
血圧にはこれ!といった献立ではなくて申し訳ないが
食べ方のコツが少しでも伝わっていれば幸いだ。