お盆休み、いかがお過ごしでしょうか?
私はお墓参りに行って来ました。
皆さん、ご先祖を大切にね‥
‥で終われないのが我が家。
7月の豪雨で義父アツシの眠る墓地、被災。
後ろの山が崩れ、土砂や大木が墓地に流れ込んで
極楽浄土どころじゃない。
地獄絵図。
十基余りの墓石や灯篭は大量の土砂に埋まり
ボーリングのピンみたいに転がっているが
一番隅っこにあるアツシの墓だけ
スプリットを待つピンのごとく立っている。
座って拝むスペースは少し土砂に埋まっているが、墓石は無傷だ。
生前はギャンブラーだったアツシらしい。
いや、この位置を選んだ義母ヨシコが実はギャンブラーなのか。
いずれにしても笑える。
さっそく墓地を管理する岡野石材(仮名)に
復旧してもらいたいところだが
岡野石材、この春、倒産。
社長は認知症で前後不覚、若い二代目は精神の病で療養中。
よって墓地は、そのままである。
正式な入り口はメチャクチャになっているため
我々は固まった土砂を登り、墓地に入ってお参り。
お参りができるって、本当はありがたいことだったのね。
他の墓石は全部倒れて、お参りどころじゃないもの。
土砂崩れの後って臭いというけど、本当に臭くてびっくりした。
動物の死体級の信じられない香り。
気分が悪くなった。
自分の選んだ墓地がこの有様となり、ヨシコは気が気でない。
年寄りは墓のことが気になるものではあるが、ヨシコの場合
父親の生まれ故郷に近いという理由で我を通したことを
密かに後悔している模様。
この気分を払拭するには1日も早く元通りにするしかなく
岡野石材があてにならないなら、お前らが復旧させろといわんばかりの勢い。
自分はやるつもりが無いので、このクソ暑い時にそんなことが言えるのだ。
生きた人間は、ああ、うるさい。
黙って待つ死人の方が可愛げがあるというものだ。
丁重にお断りした私の心は、早くも墓の移転に向けられている。
墓地に入る門も通路も駐車場もズタズタだし
一度崩れた所は、またいずれ崩れる。
ヨシコがいなくなり、静かになったら考えるつもり。
ところでアツシの墓を作る時
『◯◯家の墓』と彫刻してもらうよう注文した。
しかし、できあがった墓石には『◯◯家』としか書かれてなかった。
それを知ったのはアツシの骨入れの時。
今さら違うとも言えず、そのままになっていたが
ヨシコはずっと気にしていた。
「よその苗字を彫られたわけじゃなし、別にいいじゃん」
我々家族は、彼女がこの件を持ち出すたびにそう言ったが
注文したものと違う‥
この現実は、気ままなヨシコの性格上、受け入れがたいものだった。
受け入れがたいが、作り直す経済的余裕は無い‥
これが彼女の苦しみをより深くしていた。
今にして思えば岡野石材の二代目
この頃からちょっとおかしかったのかも。
ヨシコは今年になって、うちに来るお坊さんにたずねた。
「よその墓石には皆、『‥の墓』と書いてあるのに
うちの墓石には無いんですが、このままで大丈夫でしょうか?」
彼が見事な解答をしたので、したためておきたい。
「墓石は家の表札と同じです。
おうちの表札に『◯◯の家』とは書かないでしょ?
だから、それでいいんですよ」
ヨシコの不安はたちまち解消された。
墓の方はナンだったが、お坊さんは当たりだったと思っている。
私はお墓参りに行って来ました。
皆さん、ご先祖を大切にね‥
‥で終われないのが我が家。
7月の豪雨で義父アツシの眠る墓地、被災。
後ろの山が崩れ、土砂や大木が墓地に流れ込んで
極楽浄土どころじゃない。
地獄絵図。
十基余りの墓石や灯篭は大量の土砂に埋まり
ボーリングのピンみたいに転がっているが
一番隅っこにあるアツシの墓だけ
スプリットを待つピンのごとく立っている。
座って拝むスペースは少し土砂に埋まっているが、墓石は無傷だ。
生前はギャンブラーだったアツシらしい。
いや、この位置を選んだ義母ヨシコが実はギャンブラーなのか。
いずれにしても笑える。
さっそく墓地を管理する岡野石材(仮名)に
復旧してもらいたいところだが
岡野石材、この春、倒産。
社長は認知症で前後不覚、若い二代目は精神の病で療養中。
よって墓地は、そのままである。
正式な入り口はメチャクチャになっているため
我々は固まった土砂を登り、墓地に入ってお参り。
お参りができるって、本当はありがたいことだったのね。
他の墓石は全部倒れて、お参りどころじゃないもの。
土砂崩れの後って臭いというけど、本当に臭くてびっくりした。
動物の死体級の信じられない香り。
気分が悪くなった。
自分の選んだ墓地がこの有様となり、ヨシコは気が気でない。
年寄りは墓のことが気になるものではあるが、ヨシコの場合
父親の生まれ故郷に近いという理由で我を通したことを
密かに後悔している模様。
この気分を払拭するには1日も早く元通りにするしかなく
岡野石材があてにならないなら、お前らが復旧させろといわんばかりの勢い。
自分はやるつもりが無いので、このクソ暑い時にそんなことが言えるのだ。
生きた人間は、ああ、うるさい。
黙って待つ死人の方が可愛げがあるというものだ。
丁重にお断りした私の心は、早くも墓の移転に向けられている。
墓地に入る門も通路も駐車場もズタズタだし
一度崩れた所は、またいずれ崩れる。
ヨシコがいなくなり、静かになったら考えるつもり。
ところでアツシの墓を作る時
『◯◯家の墓』と彫刻してもらうよう注文した。
しかし、できあがった墓石には『◯◯家』としか書かれてなかった。
それを知ったのはアツシの骨入れの時。
今さら違うとも言えず、そのままになっていたが
ヨシコはずっと気にしていた。
「よその苗字を彫られたわけじゃなし、別にいいじゃん」
我々家族は、彼女がこの件を持ち出すたびにそう言ったが
注文したものと違う‥
この現実は、気ままなヨシコの性格上、受け入れがたいものだった。
受け入れがたいが、作り直す経済的余裕は無い‥
これが彼女の苦しみをより深くしていた。
今にして思えば岡野石材の二代目
この頃からちょっとおかしかったのかも。
ヨシコは今年になって、うちに来るお坊さんにたずねた。
「よその墓石には皆、『‥の墓』と書いてあるのに
うちの墓石には無いんですが、このままで大丈夫でしょうか?」
彼が見事な解答をしたので、したためておきたい。
「墓石は家の表札と同じです。
おうちの表札に『◯◯の家』とは書かないでしょ?
だから、それでいいんですよ」
ヨシコの不安はたちまち解消された。
墓の方はナンだったが、お坊さんは当たりだったと思っている。