殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

墓友(はかとも)

2017年06月17日 13時26分23秒 | みりこんぐらし
墓友というのがあると知ったのは、墓地分譲のコマーシャル。

女優の藤田弓子さんが、2人の友達に言う。

「これで私たち、ハカトモね!」

旦那さんの同意を得て、同じ墓地を買うことになった3人は

喜び合うというストーリー。


友達同士が同じ墓地‥という環境を得るのは

都会では意図的に行わなければ難しいと思う。

まず、墓地を用意しなければならない分家で

生前から墓地のことを考える精神的余裕と

実行に移せる経済的余裕、さらに一緒に入る配偶者の同意も必要。


しかし我々の住む中途半端な田舎じゃ、わりとある。

いっそ農村地帯となると、広い庭や農地に個別の墓地を持っているが

私が生まれたのは商業が盛んな町だったので、お寺の墓地が主流。

人口の少ない町だから、お寺の数も少なく

その中で墓地を持っているお寺となると、3〜4軒しかない。

同じ墓地に友達の家の墓が複数あり、最初から墓友というのは珍しくないのだ。


私の実家の墓も、そんな場所にある。

同級生の友人、ユリちゃんの実家のお寺だ。

宗派が異なるのでお坊さんは違うが、彼女とは友人としてだけではなく

墓檀家としての深い付き合いがある。


先日、そのユリ寺でお祭があった。

夕方になると町の人々が集まって、黄昏を共有するフレンドリーなお祭だ。

いつものメンバー、同級生のけいちゃん、モンちゃん、マミちゃんに私の4人は

去年からこのお祭に来るようになった。

仏事や行事の時はユリちゃんも帰って来るので、5人で会うためだ。


このお祭、子供の頃は毎年行った。

その日は明るいうちに風呂へ入り

首に白い天花粉(今はベビーパウダーと呼ぶ)をはたかれ

糊のきいた浴衣を着せられ、親に連れられて出かけたものだ。

私のお目当ては、いつも提灯(ちょうちん)。

お寺の入り口で、同じ提灯ばかりを売る屋台があったのだ。

白地にピンクと黄緑色で模様の描かれた

小ぶりな円筒形の提灯を買ってもらうのが楽しみであった。



去年、何十年ぶりかで行ったら、提灯の屋台は無かったが

ユリちゃんが喜んだのに気を良くして、今年も行った。

今回は早めに行ったので、裏庭に通されて夕食がふるまわれた。

お祭の世話人に出される、檀家さん手作りのオードブルだ。


表の騒がしさから離れた静かな裏庭‥

煮物うまい、唐揚げうまい、おむすびうまい‥

気の置けない仲間と暮れゆく空を眺める至福の時‥

そこでふと思い出した。

空と庭の中間に、うちの墓がある。


「死んだらここに帰る予定」

私は斜め上に位置する墓地を見上げて言った。

「私もよ!それが唯一の願い!」

ユリちゃんが言った。

「私も!」

マミちゃんも言った。

そうよ、3人とも実家の墓はここにある。


2人が実家の墓に入りたがるのは

婚家に対して好印象を持ってないのが原因だが

私の場合、先に入っている者が気に入らなくて

実家の墓に目が向いたわけではない。

単に、母から誘われたのが理由。

彼女は一つ下の妹が離婚した時に考え始めたらしい。

一人入れるんなら、皆一緒でいいと思うようになったという。

そうしておけば、墓守が絶える心配が無いという合理性もあった。

それはあの世的には合法か非合法なのか、お寺さんに問い合わせたところ

「全く問題ありません」

と言われて自信を得たそうだ。


数年前、母からそれを聞いた私は瞬時にその気になった。

なんだかワクワクしたのだ。

お墓に入るのは夫婦セットが基本だろうから、夫にも意向をたずねる。

彼は「任せる」と言ったが、そのうち義父が死んで新しい墓を建てると

前言を撤回したい様子だった。

当然であろう。

だから夫婦別々になってもいいと思っていた。


さて先月のこと、夫の姉カンジワ・ルイーゼの要望が

義母ヨシコを介して伝えられた。

彼女の亭主が死んだら、実家で生活したいという旨である。

私はこれを快諾した。

戻って来た彼女と一緒に暮らすとは言ってない。


が、数日後、続きがあったことを知る。

ルイーゼは生きている間だけでなく、死後の計画も明らかにした。

「こすずはね、うちの墓に入りたいと言ってるの」

この要望も、ヨシコから伝えられた。

「こういうことはね、本人の自由でいいと思うのよ」

私の計画を知らないヨシコは言うのだった。


どうぞどうぞ‥私はまたもや快諾した。

ヨシコが自由でいいと言うからには、私もまた自由のはずである。

ああ、良かった良かった(棒読み)。


しかしヨシコとルイーゼの願いを知った夫は慌てる。

「おまえんちの墓に入れてくれ!」

「ええ〜?」

「こすずと同じ墓は嫌じゃ!頼む!」


かくして我ら夫婦は、私の実家の墓に入ることが決まった。

だからユリちゃんとマミちゃんとは墓友になれる。

「死んでも遊べるね!」

「嬉しい!絶対遊ぼうね!」

「死ぬのも悪くないね!」

まだ両親が存命で、ピンとこないけいちゃんとモンちゃんは引いているが

無視して盛り上がる。


とはいえ、こればっかりはタイミングの問題。

夫がヨシコやルイーゼより先に死んだら

やっぱり父親の墓に入ることになるだろう。

それが自然というものだ。

私が先でも、実家の墓に埋葬なんて面倒くさがられて

さっさと義父の墓へ突っ込まれるに違いない。

それまでは墓友の夢を語り合ったり

生前は縁の薄かった肉親と過ごすのを楽しみに

老いていきたいと思う。

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6 コメント

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Unknown (モモ)
2017-06-18 08:16:00
さすがみりこん姉さん。
私の先の先をいっていらっしゃる。

今こちらは介護、仕事、子育てにどう向き合うか、の手探りの時期です。

墓~?骨を粉にして、どっかの肥料にして~とか、樹でも植えといて~とか、思うこの頃です。
携帯便利で邪魔にならない位牌や短冊で良いや~などど、勝手に思ってます。

ヒロシさん、墓に入ってもケンカ相手に困らないようですね。
死んでも、いじられる運命なんでしょうか。
返信する
どう向き合うか (みりこん〜モモさんへ)
2017-06-18 15:15:18
モモさん、大変な時期ですね!
よく頑張っていらっしゃる!

私に介護や仕事が押し寄せた頃、子育てだけは終わっており
夫も含め男手が三つある状態だったので
体力的には楽でした。
しかも生来のいい加減体質‥どっちも適当。

でもわかったことがあります。
全部を同じくちゃんとやろうとしたら、しんどくなる。
どれもプロじゃないんだもの、ちゃんとなんて無理。
介護を頑張っていたら、子供はそれを見て
自然に思いやりのある優しい子に育ちます。
仕事を頑張れば、子供の物を買ってやれます。
優先順位のトップをお子さんにして、あとの2つはオマケにした方が
頑張り屋のモモさんの場合、うまくいくんじゃないかしら。

今後、もっと忙しくなることがわかっていたら
今のうちに読み書きそろばん。
学校へ上がるまでに字が読めるように
字が書けるように、簡単な算数の計算ができるようにしておく。
個人差があるので、そうスイスイとはいかないこともあるけど
本が読める楽しさ、文字が書ける喜び
数が理解できる面白さを伝えるような軽い気持ちで。

家族の人数が多いというだけで、情操教育はできているので
重点的にやるのは実務。
これをやっておくと、学校に行ってから親も楽だし
何より本人が楽。
わかるって、とても嬉しいことだから
自分で進んでくれるので、手がいらない。
宿題しない、成績悪い、親が怒る、子供が泣く
年寄りが口を出す、何よ!自分のこともできないくせに
ああ、忙しい、こんなはずじゃなかった、なんで私ばっかり‥
の地獄絵図は回避できます。

墓ね〜。
私も若い頃は、できるだけ軽く、あとくされなく‥
と思っていたの。
近づくにつれて、具体的に考えるようになりました。
残された人たちのやりやすいように、と思うと
スタンダード路線になりますね。
ヒロシ、死んでもいじられるつもりだと思います(笑)
返信する
Unknown (モモ)
2017-06-19 19:09:47
有り難うございます(^^)
介護のほうは、そろそろ色々考えておこうか~の段階です。

早いもので、娘も来年の4月には小学生になります。

親の仕事や介護、子育てなど様々な事に関わっていると、帰るべくして帰って来たんだと、つくづく思います。

まだまだこれから。焦らず、前向きにやっていこうと…思いますが…時々更年期か反抗期か、イラッッ!!イラッッ!!そして、反省しております。リーマンさんの修行者には程遠い(笑)ですが、ボチボチやっていきます。

私の骨は肥料にならないかな~?樹の下にでも撒いてくれてもいいんですがね。
返信する
早いものね! (みりこん〜モモさんへ)
2017-06-19 22:06:43
お嬢さん、こないだ生まれたと思ってたのに!
介護がまだ本格的でないなら、良かった。
お子さんが小さいのに介護生活じゃあ悲惨だもの。

そうよ、帰るべくして帰ったのよ。
モモさんがいなかったら、どうなっているかしら。
ご家族は困ってたと思いますよ。

イラッッ(笑)
私も毎日だわ。
反省?しない。
しなくなった。
反省しなくても生きて行けることを
夫やその家族から学びました。
反省しない方が幸せだったりする。
これを目の前で見て(笑)
自分を痛めつけるより、自分大好きの方が運がいいのかもね。

自分が年取って来ると、周りの人も年取ってくるじゃん。
いつもイライラ、いつもキーキー言ってる女の人って
おしなべて眉間に深い縦じわが‥。
ぽわ〜んとしてる人には無い。
顔に出るわけよ〜。
それが怖いから、極力怒らない。
美容のために、ぽわ〜んを目指すのじゃ。

骨は肥料になりますよ。
リンだから。
うちらの町の火葬場では、骨壷に入りきらなかった骨
火葬場の人は「供養塔にお納めします」とおっしゃるけど
梨園(歌舞伎じゃなくて果物の‥)に運ばれるそうです。
返信する
お墓の話 (ユウキ)
2017-06-21 09:24:37
田舎なのでお墓あるんですが…なかなかの小山の中腹。
しかも車は入れません。
掃除も墓参りも億劫。
私が無宗教なのもあるんでしょうが…

私は墓じまいを考えています。
分家で私の祖父一人が眠るお墓。
順番からいうと祖母、父でしょうが…
母は入りたがらないから実家の方かもしれません。
そこは意思を尊重します。
ただ、私は息子や娘にお墓の面倒までみてもらいたくないな。と。
そもそも大学で県外へでたら、
就職もないこんなド田舎に帰ってこさせるのも酷なのでそのまま就職してもらえばいいと思っています。
そうなるとますますお墓の管理も大変。
管理できないと周りのお墓にも迷惑がかかりますしね。

私は夫と相談して自分の代でしまってしまおうかと思ってます。
私はもともと散骨希望でお葬式も法事もしてほしくないので丁度いいのです。
父はどう思うかはわかってますが、この世にいなけりゃ文句も言えない。あの世であった時に怒られることにします笑


あ、でも出戻った妹と子どもは入りたいかも…
そうしたら譲ればいいですね~♪
返信する
>なかなかの小山(爆) (みりこん〜ユウキさんへ)
2017-06-21 15:26:57
なんて素敵な表現!

そういや妹の嫁ぎ先もそうだったわ‥。
山というより崖、山岳部じゃないと無理じゃね?
みたいなとこ。
妹が先に死んだら、よう来んわと思っていたら
別れたので内心ホッ。

ユウキさんは墓じまい派ですか。
今どきはお寺の供養塔に合葬してもらって
永代供養で終了も流行ってますね。
さっぱりしていて、それもいいかも。
>この世にいなけりゃ文句も言えない‥ほんと(笑)

そちらにも戻られた妹さんがいらっしゃるもんね。
私も妹が離婚してから、何だか墓守の義務感から解放されて
気が楽になりました。
若い頃から彼女に感じていたんですが、きょうだいの中で
墓守の役目に決まってる子って、いると思います。
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