別の部屋で仕事をしていた二代目と、廊下でばったり。二人ともトイレへ行こうとしていて鉢合わせ。ファイティング・ポーズをとった私に対して、二代目は一言。「俺の石垣島での優しさを忘れたのか。」
Y2K問題などと声高に叫ばれていた1999年の年末。私たちは沖縄で21世紀を迎えようと、西表・石垣・波照間島を訪ねていました。メインは西表島でのリバーカヤックだったのですが、中日に石垣島でシュノーケリング体験をしました。他にお客さんも無く、ボートは貸切状態で、沖へ向かいました。頭をポチっと海に付けた瞬間に、水中で「ぶああーーんあこえあぁ!?」(陸上訳:なーーんだこれは!?)と叫んでしまったほど、別世界の海中ワールドを楽しむことができました。海に入っているというよりは、魚の世界にお邪魔している、といった魚密度で。
トイレもない小さなボートだったため、「トイレは海の中ですませてください。」と言われたのですが、これが、出来ないんです、どーしても。で、いくら沖縄といえど年末の冷たい水。「あー、ご主人あんな遠くにいますな。こんな長い間帰ってこん人も珍しいですわ。」(←ボートのお兄さんは大阪からの移住者だった)というほど戻ってこない二代目を待つ長い長い時間。ボートが岸に戻ってきたときには、もう私の『トイレ行きたい願望』は、かつて経験したことのないレベルに達していました(当然、二代目も同様)。
ところが、岸にも公衆トイレ的な場所が見当たらない。ホテルは目の前。もうチェックインするほうが早いということで、ダッシュで移動。超激安ホテルを予約していたため、部屋に入るまでトイレがない!大慌てでチェックインを済ませて部屋へ行き、トイレの前にたどり着いたとき、二代目が20世紀最後の優しさを発揮しました。「いいよ、尚美、先に行っておいで」。
えぇ、えぇ、あのご恩は忘れておりませんでしたとも。勿論、今回は二代目に順番をお譲りいたしました。