美しいものは
汚いものがあるから
美しいんだ
善だって悪があるから
善と呼ばれる
すべてのものは
その名前の
裏にあるものに
支えられているんだ
私が老子に出会って、いちばん驚いたのが、第二章にあるこの考え方だ。それまでの私の考えをすべてひっくり返す力があった。私たちは、ものを区別することによって理解した気になっていた。しかしすべてのものは、片方だけではありえないのだ。それらの区別は仮のものだーその元にもっと深く大きな一(いち)の世界がある!老子にこう言われてから、私は区別して決めつけるのを控えるようになった。すると、善悪美醜優劣を、ともに受け容れる心が出てきた。それは心をとても広くした。
加島祥造