沖縄のごみ問題を考える

一般廃棄物の適正な処理に対する国の施策と県の施策と市町村の施策を比較しながら「沖縄のごみ問題」を考えるブログです。

改めて沖縄県廃棄物処理計画の問題点を考える

2015-10-12 16:18:39 | ごみ処理計画

連休明けに「法的瑕疵」があるという理由で翁長知事が仲井眞前知事が出した辺野古の埋立事業に対する承認を「取り消す」ようなので、改めて仲井眞知事の時代に見直しが行われた県の廃棄物処理計画(第三期)の問題点について考えてみます。

(1)廃棄物処理法の上位法である循環基本法の基本原則に抵触している。

循環基本法は廃棄物のリサイクルよりも廃棄物の利用や処分に当って環境負荷の低減を図ることを優先しているが、県の計画は環境負荷の低減よりも廃棄物のリサイクルを優先する計画になっている。

(2)閣議決定されている廃棄物処理施設整備計画の目標を達成することができない。

溶融炉の整備を推進して既存の最終処分場の延命化を図る計画を策定しているが、市町村が地域ごとに必要となる最終処分場の整備を行うこと(国の目標を達成すること)については消極的であるため最終処分場不足の状況から脱却できない計画になっている。

(3)地方自治法の市町村の自治事務に対して過剰な関与を行っている。

県の廃棄物処理計画を市町村のごみ処理計画の上位計画として位置付けているが法令に基づく根拠がない。

(4)県の職員が県の計画に拘束されている。

廃棄物処理法及び地方公務員法の規定により県の職員は市町村に対して県の計画に従わない技術的援助を行うことができないことになっているため、溶融炉の整備を回避したい市町村に対して適正な技術的援助ができない状況になっている。

(5)可燃ごみの処理において温室効果ガスの排出量を削減することができない。

カロリーの高いプラスチックごみ等のリサイクルの推進と溶融炉の整備を推進する計画になっているが、焼却灰の溶融処理を行う段階で新たに化石燃料の投入が必要になるので結果的に可燃ごみの処理における温室効果ガスの排出量が増加する計画になっている。

以上が沖縄県廃棄物処理計画の主な問題点ですが、都道府県の廃棄物処理計画は環境大臣が定めた基本方針に即して策定することになっています。そして、廃棄物処理施設整備計画も環境大臣が基本方針に即して原案を作成することになっています。したがって、沖縄県の計画は、法制度上、環境大臣の考え方に拘束されていることになります。

ちなみに、市町村が環境大臣の考え方に拘束されるのは、市町村が国の補助金を利用する場合に限られています。

※このブログは沖縄県のごみ問題を考えるブログなので基地の問題に関する県の「法的瑕疵」については触れませんが、市町村のごみ処理に関する県の計画には明らかに「法的瑕疵」があると考えています。特に(2)については閣議決定されている国の目標を達成できないことは明らかなので廃棄物処理法の規定に違反していると考えています。

廃棄物処理法基本方針

廃棄物処理施設整備計画

沖縄県廃棄物処理計画(第三期)


地方版総合戦略が必要な理由

2015-10-12 09:51:00 | ごみ処理計画

地方版総合戦略は平成26年12月27日に閣議決定されています。そして、内閣府は地方公共団体に対して今年度中の策定を求めています。期限まであと半年足らずになりましたが、そもそも地方版総合戦略がどうして必要になったのか、その理由を整理しておきます。

地方版総合戦略について(閣議決定)

(1)府省庁・制度ごとの「縦割り」構造

各府省庁で政策手法が似通うことが多く、事業相互の重複や、小粒な事業が乱立する傾向にある。

(2)地域特性を考慮しない「全国一律」の手法

各府省庁の個別補助金政策は、個別政策目的の観点から実施されるため、使用目的を狭く縛ってしまうことが多く、結果として地域特性や地域の主体性が考慮されないことが多い。

(3)効果検証を伴わない「バラマキ」

財源が限られている中、効果検証を客観的・具体的なデータに基づいて行う仕 組みが整っていない施策は、「バラマキ」との批判を受けやすい。客観的な効果検証と運用の見直しのメカニズムが伴っていないこと等に、根本的な原因がある。

(4)地域に浸透しない「表面的」な施策

従来の施策の中には、対症療法的なものにとどまり、構造的な問題への処方箋としては改善の余地があったものも多い。各分野の施策を構造的に組み立て、「深み」のある政策パッ ケージを立案・推進する必要がある。

(5)「短期的」な成果を求める施策

政策が成果を出すためには、一定の時間が必要とされる。それにもかかわらず、 中長期的な展望やプランを持たずに、短期間で変更・廃止を繰り返している施策が多い。

上記の理由を県内の市町村のごみ処理計画に当てはめて考えると、最終処分場の延命化を図るために溶融炉の整備を推進する県の廃棄物処理計画に多くの市町村が従ってきたことにより、住民の70%以上(本島では80%以上)が溶融炉に依存しているになってしまったと考えています。

※このブログの管理者は、沖縄県内において溶融炉を整備している市町村は溶融炉を長寿命化する前にこれまでの効果を客観的に検証して廃止する措置を講じることが地域の特性と主体性を考慮した戦略、そして中長期的な展望やプランを持った環境負荷と財政負担の少ない持続可能な戦略になると考えています。

沖縄県民(約100万人)が溶融炉に依存している理由


市町村における地方版総合戦略とごみ処理計画の関係を考える

2015-10-12 06:28:47 | ごみ処理計画

来年度(平成28年度)から地方版総合戦略(まち・ひと・しごと創生総合戦略)がスタートします。そして、市町村に対する国の財政的援助は原則としてこの戦略に基づいて行われることになります。

そこで、地方版総合戦略とごみ処理計画の関係を整理してみました。

上の画像にあるように、市町村の地方版総合戦略はごみ処理計画の上位計画になります。したがって、これまで県の廃棄物処理計画を上位計画としてきた市町村は国の財政的援助を受けにくくなります。なぜなら、地方版総合戦略は市町村の自主性と主体性を最大限に発揮する計画でなければならないからです。

下の画像は第三期沖縄県廃棄物処理計画における県の計画と市町村の計画の位置付けを示すものですが、県が計画を見直さない場合は来年度(平成28年度)からは県の計画と市町村の計画の間に地方版総合戦略が入ることになります。

なお、地方版総合戦略については、議会と執行部が車の両輪となって推進することが重要であることから、各地方公共団体の議会においても、地方版総合戦略の策定段階や効果検証の段階において、十分な審議が行われるようにすることが重要であるとしています。

※地方版総合戦略は平成27年度中に策定することになっています。また、インフラ長寿命化基本計画に基づく行動計画は平成28年度中に策定することになっています。したがって、県の廃棄物処理計画を市町村のごみ処理計画の上位計画としている市町村は地方版総合戦略の策定と同時にごみ処理計画を見直す必要があると考えます。

地方版総合戦略

地方版総合戦略策定のための手引き(内閣府)

沖縄県における各市町村のごみ処理計画の確認