今治市(愛媛県)が溶融炉を選定しなかった理由を整理してみます。なお、同市は下記の基本的な考え方に基づいて検討委員会に諮問しています。
◆新施設に関する基本的な考え方
①環境保全対策を優先した施設とすること
②ごみを安全かつ安定的に処理できる施設とすること
③資源の循環とごみの持つエネルギー有効利用に優れた施設とすること
④周辺環境と地域に調和する施設とすること
⑤経済性に優れた施設及び運営管理体制とすること
検討、審議に当たっては、廃棄物処理行政を取り巻く情勢の変化を考慮し、今治市のごみ処理の状況を把握するとともに、プラントメーカーからのアンケー ト、技術資料の徴収、現状委託先を含む生成物の引取先関係企業等への調査を 実施した。さらに、現時点における生成物の処理状況等をより詳細に把握するため、引取先関係企業等への再調査及び他の自治体への聞き取り調査などを実 施し、専門的かつ技術的な検討を行なった。また、検討審議中の平成23年3 月11日、未曽有の複合的大災害である東日本大震災が発生し、東北地方を中心に広範囲に及ぶ甚大な被害を受けたことに鑑み、新施設における防災対策の検討の方向性についても検討、審議を行った。
(1)「流動床式+灰溶融炉」については、依頼を行ったプラントメーカーから辞退の申し出があり、充分な技術的検討が行えないと判断し、評価の対象外とした。
(2)溶融スラグの利用については他市の事例等によると、溶融スラグの6割程度は有効利用できるが、残りの4割程度は埋立として処理される可能性が高いと思われる。
(3)メーカーによる溶融スラグの引き取りについては施設建設時若しくは稼働時の契約により、一定期間全量引き取りも可能性としてはあるが、契約終了後の担保については不透明である。
(4)灰溶融炉に多くの電力を使用することから、「温暖化負荷(CO2排出量)」「エネルギー回収量」では評価が低かった。
(5)灰溶融炉の補修の頻度が高く「信頼性・安定稼働」「施設の運転管理(補修の頻度)」といった「安全性・安定性」及びトータルコストに当たる「経済性」の面において低い評価となり、総合点としては、今回設定した前提条件の下では、他の処理システムと比較して低い評価となった。
(6)溶融処理には多くのエネルギー消費を伴うとともに、ごみ質等の影響によりコストが増大する可能性がある。
(7)ガス化溶融方式を採用した場合においても、溶融スラグの市場性、需給バランスについて課題が残り、いずれの方式においても、将来の保証は今後の課題として残る。
(8)焼却灰の資源化は、多様な資源化方法 の選択が可能で、幅広い資源循環の可能性を持っており、今後の技術革新等に 対しても柔軟に対応できるシステムである。
(9)将来に亘る焼却残渣処理の安定性及び資源循環性に関する方向性としては、多様な選択が可能な柔軟性を持っておくことが重要である。
(10)施設の運営に要するエネルギーを最小化すること、化石エネルギー依存から極力独立していること、さらに災害時にも多様で複雑な生活ごみや災害ごみを処理できることが求められる。
※沖縄県においては中城村北中城村清掃事務組合が「流動床式+灰溶融炉」を選定していますが、平成26年度から休止しています。このブログの管理者は同組合が溶融炉を再稼動するとすぐに長寿命化を行うことになるので、できる限り再稼動は回避(溶融炉を廃止)した方がよいと考えています。なぜなら、同組合が選定した溶融炉は国内では稼動している事例がなく、メーカーも受注活動を行っていない溶融炉だからです。