枚方市(大阪府)が溶融炉を選定しなかった理由を考えてみます。
下の画像は市町村におけるごみ処理施設の発注状況を示すグラフですが、左が平成11年度から平成17年度までのデータ、右が平成18年度から平成24年度までのデータです。
このグラフにあるように、平成18年以降は、ストーカ炉のみを発注する市町村が増えており、流動床炉を発注した市町村はほとんどありません。また、流動床炉+溶融炉方式を発注した市町村はゼロという状況になっています。
(1)旧厚生省(現環境省)は、1980年代にごみ焼却施設の飛灰からダイオキシン類が検出されたことを受けて、ダイオキシン類削減対策の一環として平成9年度より、ごみ焼却施設の整備には、灰溶融固化設備の設置を補助金交付要件とした。灰溶融固化設備の設置については、平成16年度まで補助金交付要件とされていたが、平成17年度以降は同交付要件から除外された。
(2)平成11年度から平成15年度に全国で受注されたストーカ炉+灰溶融炉の施設は39施設あるが、休炉又は休炉を検討中の施設数は9施設であり、2割以上となっている。
(3)処理技術として、昨今の受注動向を踏まえて、検討対象を、焼却処理方式(ストーカ式)、焼却+灰溶融処理方式(ストーカ式)、ガス化溶融処理方式(シャフト炉式)、ガス化溶融処理方式(流動床式)及びバイオガス化(+焼却)方式とした。
(4)焼却+灰溶融処理方式において、焼却処理方式の流動床式と灰溶融炉を組み合わせたものもあるが、これはガス化溶融処理方式の流動床式へ移行しているため、検討対象から除いた。
(5)焼却+灰溶融炉方式は、焼却灰と焼却飛灰を溶融するために燃料や電気が必要となるため、二酸化炭素排出量が多くなる傾向がある。
(6)常時、コークス等の副資材を使用するシャフト炉式ガス化溶融方式は、焼却処理方式に比べて、二酸化炭素排出量が多くなる傾向がある。
(7)流動床式ガス化溶融方式は、ごみ質によっては常時助燃材を使用するため、焼却処理方式に比べて、二酸化炭素排出量が多くなる傾向がある。
(8)灰を溶融するシステムは、そのためのエネルギー消費により二酸化炭素排出量が大きくなる。
(9)灰を溶融するシステムは、水蒸気爆発の可能性があり、安全性において評価が劣ることになる。
(10)従来の処理システムや技術に拘束されることなく、新たな処理方法を含めた将来の施設整備を、循環型社会の進展などの社会変化に応じて柔軟に検討することが必要である。
上記のとおり、国内において溶融炉は「過去の遺物」になりつつあります。現在、沖縄県民の約80%(約100万人)が溶融炉に依存していますが、仮に溶融炉を長寿命化して使用し続けた場合は、国内において最後まで「過去の遺物」に依存していた県民ということになる可能性があります。
※座間味村と渡名喜村はガス化溶融炉を休止していますが、両村とも特殊な溶融炉を選定しているため再稼動はほぼ不可能であると思われます。また、中城村北中城村清掃事務組合は流動床炉+燃料式溶融炉というメーカーが10年以上も前に開発を中止している処理方式を選定しています。仮に、同組合が休止している溶融炉を再稼動した場合は、まさに「過去の遺物」を長寿命化することになります。