郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

宝塚の前田正名 VOL1

2022年02月18日 | 宝塚

ご無沙汰しました。

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宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol16-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。宝塚カフェブレイク★宙組男役の芹香斗亜は戦国BASARAをやったり、冗談やっ...

宝塚キキ沼に落ちて vol17 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

の続きであり、下の続きでもあります。

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普仏戦争と前田正名 Vol10 - 郎女迷々日録 幕末東西

普仏戦争と前田正名Vol9の続きです。なんといえばいいのでしょうか。前田正名が主人公だというので「巴里の侍」(ダ・ヴィンチブックス)を読み、...

普仏戦争と前田正名 Vol10 - 郎女迷々日録 幕末東西

 


 なんというんでしょうか。そもそも、十数年前にこのブログを書き始めましたのは、モンブラン伯爵についての情報が欲しかったためですが、現在、かなりの情報は得ていまして、このブログにまとめると同時に、ウィキペディアにも書いております。

シャルル・ド・モンブラン - Wikipedia

 で、下のリンクに書いておりますように、モンブラン伯爵は、駐仏日本公使代理(領事ですかね?)に就任して、離日するとき、前田正名を伴っていますので、私は早い段階で、明治初期の薩摩藩フランス留学生である正名くんを知り、司馬遼太郎氏がエッセイで、普仏戦争と正名くんについて書いていることも知りました。

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龍馬の弟子がフランス市民戦士となった??? - 郎女迷々日録 幕末東西

一昨日、『剣豪商人』の載っていた本を探してまして、司馬遼太郎氏の歴史エッセイ本の目次を、次々にめくって見ていたんです。そうしましたら、『余話...

龍馬の弟子がフランス市民戦士となった??? - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上の記事を書きまして、ほぼ5年後、2011年の1月、コメント欄にお客様が見えられて、前田正名を主人公としましたライトノベル『巴里の侍』(月島総記氏著)が発刊されたことを教えてくださいました。
 そして、その1年後に書きましたのが、下の記事です。

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普仏戦争と前田正名 Vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

一応、モンブラン伯の長崎憲法講義の続きでしょうか。これ以降、前田正名のことをまとめて書いたことは、なかったと思いますので。あけましておめでと...

普仏戦争と前田正名 Vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 幕末友だち(現在は宝塚友だちでもあります)の中村様は、私より先に『巴里の侍』を読まれていまして、「つまらない」とのお話でしたので、結局、私は読まなかったんです。
 それが、なぜ読んだかと言いますと、上に書いています通りに、宝塚でやることになった!と、聞いたためです。 

 当時、私は、一度も宝塚を観劇したことはなかったのですが、正名くんは実にいい男でして、もしも小説を読んで少しでも見所があると思いましたら、見に行っていたかもしれません。
 正名くんの写真の中で、もっとも若くていい男!に見えますのは、集合写真ですが、明治6年(1873年)3月のパリ、帰国する大久保利通を見送るため集まった、在パリ薩摩人の中で笑っているものでして、当時23歳。ネット上で可能ならばリンクを張ろうと思ったのですが、無理でした。
 結局その後、私は中村様とともに、桐野利秋が主人公になった!というので、宝塚を初観劇しました。

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桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録 前編 - 郎女迷々日録 幕末東西

桐野利秋、宝塚登場!星組公演『桜華に舞え』の続きです。といいますか、行ってまいりました。宝塚へ。突然仕事が入ったり、その他もろもろで、ブログ...

桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録 前編 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 それで、ですね。なんでいま突然、前田正名? 
 ということなんですけれど、下、正名くんが主人公の宝塚公演DVDを、買って見たんです。

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『Samourai』 - 宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

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宝塚クリエイティブアーツ公式ショッピングサイト|キャトルレーヴオンライン

 

 いまさら、10年も前の公演のDVDをなぜ? ということなんですが、答えの一つは………。
 主演の音月桂さんが、すばらしいトップさんだったと、いまさらながらに知ったから、です。

 そしてもう一つは、先月、東京までミュージカル観劇に出かけたんですが、空き時間、中村様にお誘いいただき、前田正名のお墓に詣でたからです。

 東京タワー近くにある増上寺の別院・妙定院ですが、徳川家に縁の深いこのお寺に、なぜ正名君のお墓があるのかは、わかりませんでした。

 次回、さっそく、音月桂さん主演、『SAMOURAI(サムライ)』の感想を。

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宝塚キキ沼に落ちて vol17

2021年01月27日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol16 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

宝塚カフェブレイク ★宙組男役の芹香斗亜は戦国BASARAをやったり、冗談やったりも 20210124

 久しぶりのキキちゃん、カフェブレイク登場です。
 「月組と読めるのですが、間違ったのですよね?」というコメントがあるんですが、ほんと0:44ころの字幕が月組になっています。間違いですかね?

 実在の人物で演じてみたいのは、織田信長。その理由が、昔、ゲーム「戦国BASARA」で、織田信長のキャラを使って、はまっていたから、なのだそうです。
 宝塚でやった「戦国BASARA」って、蘭寿とむさんが真田幸村で主演、明日海さんが二番手で上杉謙信、なんですよね。
 あれ、キキちゃん、そのころ花組にいたはずなのに? と思って調べてみましたら、同時期に『フォーエバー・ガーシュイン-五線譜に描く夢-』で、バウ初主演してたんですね。

 この『フォーエバー・ガーシュイン』、相手役がゆきちゃん(仙名彩世)ですし、一度見てみたいのですが、ネット上でさがした作品の評判は、最悪です。キキちゃんが悪いわけではなく、作品そのものの出来が悪かったようなのですが、同じくらいの時期に、月組のバウ公演はウエクミ先生が「月雲の皇子」で大評判をとっていて、キキちゃんにとっては、ついてない成り行きだったように感じます。
 花組本体の「戦国BASARA」も、あんまり評判がいいわけではない、ようなのですけれども。

 織田信長、キキちゃんに似合うと思いますが、「戦国BASARA」は離れた方がいいような気もします。
 ショーでは立ち回りをやったこともある、とキキちゃんが言っているのは、「白鷺の城」ですよね。

宙組公演『白鷺(しらさぎ)の城(しろ)』『異人たちのルネサンス』初日舞台映像(ロング)

 初日映像にもちょこっとだけ映っているのですが、キキちゃんの武将、素敵でした。

宝塚『カフェブレイク 芹香斗亜』

 こちらの方が、たくさん映っていますね。
 このショーの武将・岡見宗治と、「異人たちのルネサンス」フィナーレ男役群舞のキキちゃんがすばらしかったので、円盤を買いました。
 これを見て、「キキちゃん、トート似合うよね」と思ったり。

 作品そのもののの出来は、といいますと、どちらもちょっと首をかしげてしまうのですが、特に「異人たちのルネサンス」。

 キキちゃんのロレンツォ・デ・メディチは素敵でした。キキちゃんご自身が語っておられますように、史実のロレンツォとはちがいます。これは、この作品の主人公、レオナルド・ダ・ヴィンチの目に写ったロレンツォですから、それはいいんです。

 しかし、一番なにが変って、かんじんのそのレオナルド・ダ・ヴィンチです。
 ダ・ヴィンチは、この後、チェーザレ・ボルジアの軍事技術顧問ともなった技術者でもあります。
 この作品は、ルネサンスの画家を、19世紀の近代画家と同じように描いていませんか? ということなんですが、これでは、万能の天才、というよりは、苦悩する心優しい画家、であって、まるでダ・ヴィンチではないですし、真風さんに似合いません。

 もっとも、私が最初に驚いたのは、ずんちゃん(桜木みなと)演じる、ロレンツォの弟、ジュリアーノ・デ・メディチです。

 塩野七生さんの「わが友マキアヴェッリ―フィレンツェ存亡」で読んだのだったと思うのですが、若くして、パッツィの陰謀で殺されたジュリアーノ・デ・メディチは、美青年だったといわれ、サンドロ・ボッティチェッリの手になる肖像画が残されています。

 

 

 

 

 そして、ジュリアーノの恋人(人妻ですが)のシモネッタ・ヴェスプッチは、絶世の美女と謳われ、ジュリアーノより一足先に病で世を去りましたが、フィレンツェ中の人々が、その死を惜しんだといわれます。
 有名なボッティチェッリの「ビーナスの誕生」のモデルであり、多くの肖像画を残しました。

 

 

 

 

 ロレンツォとジュリアーノの仲はよく、ロレンツォは、青春の盛りの弟の死を嘆き悲しみ、ボッティチェッリに依頼し、「プリマヴェーラ(春)」の中に、二人の姿を描き残させた、という伝説もあります。

 

 

 

 

 左端のマーキュリーがジュリアーノで、プリマヴェーラ(春の女神)がシモネッタ、という話なんですね。

 また、ロレンツォは文人でもあって、詩を残しています。

 Quante bella giovinezza, che si fugge tuttavia!
 Chi vul esser lieto,sia: di doman non ce certezza.

 青春は麗し されど疾く去り行く
 楽しむ者は楽しめ 明日の日は定めなければ

 Trionfo di Bacco e Arianna(バッカスの勝利)と題されたこの詩は、もともと謝肉祭の歌として書かれたのだそうです。
 フィレンツェだけではなく、広くイタリアで愛唱され、謝肉祭が観光名物ともなったヴェネツィアでは、ずいぶん後世までも歌い継がれていたといわれます。
 ジュリアーノとシモネッタ。私には、ロレンツォが、フィレンツェの全盛期に若くして散った美しい恋人たちをしのんで、作詩したように感じられます。

 ロレンツォの死後、フランス軍の侵攻があり、メディチ家はフィレンツェを追われます。その後、フィレンツェを支配したのは、禁欲的な宗教改革僧・サヴォナローラで、フィレンツェは、ロレンツォ時代のルネサンスの輝きを失います。

 時を経て、メディチ家はフィレンツェに返り咲き、フランス王妃(カトリーヌ・ド・メディシス、マリー・ド・メディシス)を出したりと、政治的には安定するのですが、ロレンツォ豪華王と呼ばれるくらいで、芸術・学芸のパトロンとして、先端の美を生み出していたロレンツォの時代に、私は若い頃から、ボッティチェッリの名画そのもののような、きらびやかな青春の印象を持っていました。

 ところが、ですね。ずんちゃん演じる「異人たちのルネサンス」のジュリアーノは、こじらせた弟、という設定なんですね。
 ずんちゃんが悪いわけではなく、そういった設定なのですが、兄ロレンツォに敵意を抱き、すねてばかり。
 イメージが狂いすぎでした。

 ロレンツォとジュリアーノのお話は、ちゃんと舞台で見てみたいのですが、もしまともにすれば、ヒロインはシモネッタ・ヴェスプッチで、主人公はジュリアーノ、だと思います。
 できれば、キキちゃんにやってもらいたいものです。

 ふう。宝塚のスターシステムって、けっこう面倒くさいですねえ。劇作の難しさも、なんとなく想像できはするのですけれども、やはり、ご贔屓さんの出る作品は、いいものであってもらいたいなあ、と思います。

 織田信長で、なにかいい原作はないものでしょうか。

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宝塚キキ沼に落ちて vol16

2021年01月13日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol15 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 いつの間にか、確定申告の時期となりました。
 去年の今頃は、骨折していた腕の針金を抜く手術を受けていました。母も落ち着きましたし、退院したらあれもしたい、これもしたいと、宝塚観劇の計画を立てたりしておりました。
 それが結局、コロナ禍が一年も続き、現在、世界中が悪い夢を見ているような状況です。

雪組公演『f f f -フォルティッシッシモ-』『シルクロード~盗賊と宝石~』初日舞台映像(ロング)

 望海さん真彩さんの退団公演、初日舞台映像が出ました。
 結局、一度も生で見ること無く、お二人は退団されてしまいますが、ウエクミ先生の『f f f -フォルティッシッシモ-』、実に見応えがありそうです。
 望海さんがベートーヴェンで、真彩さんはどうも、音楽の精霊のような感じがして、普通に恋人ではなさそうですね。

 朝夏まなとさんの退団公演「神々の土地」がそうだったのですが、ウエクミ先生って、退団公演の場合、どうも、歴史上に現実にあった動乱の時代の人間群像を描きたがっておられるようで、「神々の土地」も、いろいろ設定は変えてあっても、ロシア革命時に実在した人物を出しています。
 そして『f f f -フォルティッシッシモ-』も、フランス革命、ナポレオン戦争に続きます、ドイツ国民創世の中で生まれたベートーヴェンという天才の苦悩を描いているのではないかなあ、と思えて、ライブ配信が楽しみです。

 私、シーボルトの娘、おイネさんの伝記を書こう(今度こそちゃんと書き上げよう)としていまして、このシーボルトが、ベートーヴェンの息子くらいの世代で、おまけに、ドイツ西部の大司教領で生まれた、という共通点があります。いま、あれこれとベートーヴェンの伝記を読み直していまして、歴史観には、また多少の文句は出てこようかと思いますが、それがまた楽しみでもあったりします(笑)

 

 1月11日、wowowで、「誠の群像」を見ました。

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宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

「桐野利秋in宝塚『桜華に舞え』観劇録後編下」の続きであり、「幕末維新はエリザベートの時代vol1」の続きでもあります。といいますか私、「宝...

宝塚キキ沼に落ちて vol1 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に、「実は一昨年の春、『誠の群像』の宝塚公演が高松に来ると知り、切符を買ってたんです。ところがその直前、歴史探訪旅行に参加しまして、宇和島城の天守閣で転げ、足を折ってしまいました」と書いておりますが、あれは2018年、平成30年のことでした。

 『誠の群像』の主人公・土方歳三には、私、昔けっこうはまっておりまして、このブログにも、下のように「土方歳三」というカテゴリーがあったりします。

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「土方歳三」のブログ記事一覧-郎女迷々日録 幕末東西

「土方歳三」のブログ記事一覧です。薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感...

「土方歳三」のブログ記事一覧-郎女迷々日録 幕末東西

 

 私が土方さんにはまりこみましたのは、あきらかに、司馬遼太郎氏の「燃えよ剣」と「新選組血風録」を読んだから、です。
 で、この「誠の群像」、もともとは1997年(平成9年)に、「燃えよ剣」と「新選組血風録」を原案とし、 石田昌也氏作・演出で、星組トップ・麻路さきさん主演で演じられたもののようです。

 麻路さきさんを、私は知らないのですが、望海さん、似合ってました!
 といいますか、私が知っています宝塚のトップさんの中で、望海さん以上に、土方に似合う方って、いません。いくら私がキキ沼にはまっていても、キキちゃんに京都時代の土方が似合うとは、思えません。
 望海さんは、非常に端正なお顔立ちなんですが、アクがあって、黒い役もこなされますし、スパッと決断力に満ちた感じ、苛烈な雰囲気を、見事に出されるんです。

 望海さんは素敵でした。スタイリッシュで苛烈な、土方歳三そのものでした。
 が、しかし。
 にもかかわらず私、「20年前の作品かあ。なんか古いイメージだよねえ」と、思ってしまったんです。

 一つには、京都時代が長すぎました。
 どなたに聞いたんだったか、「北海道へ行ってからの土方」が中心、というイメージをもっていまして、かつて放送されましたNHKの正月時代劇「土方歳三 最期の一日」に近いものを、想像してしまっていたんです。

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土方歳三 最期の一日 - 郎女迷々日録 幕末東西

見ました!NHKの正月時代劇。いえ、なかなかよかったです。実は、大河の新撰組は、最初の何回か見て、見るのをやめてしまったんです。初回が池田屋...

土方歳三 最期の一日 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 私は、フィクションの材料としまして、京都時代の新撰組よりも、北海道へ行ってからの土方さんの方が、好きです。
 京都時代は、どうしても内部抗争が中心ですから、話が陰惨になります。
 もっとも、上のコメント欄で述べていますが、会津本藩だって、長州だって、長州奇兵隊だって、当時は日本国中、内部抗争だらけです。

 なんというんでしょうか、意図的に世界から孤立して作り出しました太平の世が長すぎて、当時の日本には、ろくに軍隊がなかったんですね。武士とは、日本全国ほとんどの地域で、軟弱なお役人でしかありませんでした。
 欧米諸国に対抗して軍隊を作り、国防を整えるためには、武士だけでは到底数が足りませんで、世の中の構造を、根本から変えていかなくてはなりません。幕末とは、既得権益と急進改革派がぶつかりあい、血を見ないではおさまらない日々だった、といえます。

 えーと。ともかくです。
 「誠の群像」は、けっこう長く芹沢鴨を出して、内部抗争を描いているんですね。必要だったのかなあ、という気がしました。
 彩風咲奈さんの山南敬助は、よかったです。恋人の明里を演じたひらめちゃん(朝月希和)も、ぴったりお似合いでした。ひらめちゃんって、雪組でいい演技してたんですねえ。
 彩風さんは二役で、榎本武揚もやってたんですが、これもなかなかで、私は、今まで見た「壬生義士伝」「ファントム」のときよりも、今回の彩風さんの方が好みでした。

 一番残念だったのは、真彩さんの出番が少なく、望海さんとのデュエットがほとんどなかったことです。
 恋物語が中心ではないですから、仕方がないといえばないんですけど、なんとかしようがあったはず、と思ったりします。

 彩凪翔さんの勝海舟は、ねえ。彩凪さんがどーのといいますより、勝海舟の描き方が、私のイメージから大きくかけ離れていました。
 重要人物として描くなら、勝ではなく、松本良順でしょ、と思ったんですが、石田昌也先生、「壬生義士伝」で出してこられてましたね。凪七瑠海さんが演じておられました。

 私、今まで知らないでいて驚いたのですが、2019年に望海さんが主演なさった「壬生義士伝」は、同じ石田昌也氏の作・演出だったんですね。
 うーん。石田昌也先生ご自身が、「誠の群像」よりも現代的で望海さんに似合う新撰組を、と、「壬生義士伝」を作られたんでしょうか。

 えーと。「壬生義士伝」、原作小説を読んでいませんし、映画もテレビも見ていません。
 宝塚のみ見た感想ですが、望海さんも真彩さんも、すばらしい歌唱、見事な演技、でした。
 ですけれども。現実離れのしすぎ、と感じるのは、私だけなんでしょうか?

 いや、なにがって、武士の妻が3人目の子を身ごもって、このままでは一家で食べるものがなくなるからと、口減らしに入水自殺をはかるなんて、ありえない!!! と私は感じます。まあ、これは、私が南国に生まれ育ったから、なのかもしれませんが、いくら南部藩でも、ちょっと、首をかしげてしまいます。
 で、望海さん演じる主人公が、妻子を飢え死にさせないために、脱藩して京へ出て新撰組に入るって、いったいなんなんでしょう???
 理解に苦しみます。

 南部藩で飢えるというならば、です。ゆかりのあります蝦夷地へ出て、当時、箱館奉行所は下っ端役人を募集していたようですから、広瀬常さんのお父さんのように、北方の守りにつく、という方がはるかに現実的です。

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広瀬常と森有礼 美女ありき14 - 郎女迷々日録 幕末東西

広瀬常と森有礼美女ありき13の続きです。内容の上からは、広瀬常と森有礼美女ありき10と広瀬常と森有礼美女ありき11の続報です。まず、北海道文...

広瀬常と森有礼 美女ありき14 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 私はもう、「これ、なんの冗談?」と、ストーリーになじめませんでしたので、望海さん真彩さんの熱演にも、「すばらしいんだけど、でもねえ」と、感動できませんでした。

 とは言いますものの、次のような記事が、日野市観光協会のサイトにありましたので、石田昌也先生が、「今だったら壬生義士伝」と思われたのも、無理はないかもしれないんですけれども。

http://makoto.shinsenhino.com/archives/fes/100430193833.php

要するに、「司馬新選組に酔い、浅田新選組に涙する」というほど、「壬生義士伝」は持ち上げられているようなんですが、私にはさっぱり、そのよさがわかりませんでしたです、はい。

 やっぱり、私の好みからしますと、五稜郭の土方さんを、やって欲しいです。
 望海さんはご卒業されてしまいますので、キキちゃんトップで。
 洋装の土方さんならば、キキちゃん、似合います。

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普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

普仏戦争と前田正名Vol5の続きです。巴里の侍(ダ・ヴィンチブックス)月島総記メディアファクトリーまたちょっと「巴里の侍」に話を返します。こ...

普仏戦争と前田正名 Vol6 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に書いておりますが、箱館戦争においては、複数のフランス人も、土方さんの戦友でした。
 といいますか、そもそも、この「普仏戦争と前田正名」シリーズは、前田正名が宝塚の主人公になった! と聞き、びっくりして調べてみましたら、ものすごーいデタラメ物語だったものですから、つい、深追いして楽しんで書いてしまいました。
 いや、なんと、いま調べてみましたら、音月桂さん主演の雪組公演ですね。彩風さん、月城さんも、出ていらしたみたいです。

映画『燃えよ剣』予告映像(90秒)近日公開!

 検索をかけていましたら、『燃えよ剣』の映画の新作に行き当たりました。
 実際、かならずしも「燃えよ剣」が古く、「壬生義士伝」が新しい、ということは、ないと思うんですのよ。
 しかし、うわーっ! 岡田准一が土方さんって、あんまりです! 年行き過ぎだし、まったくもって似合わない!

 もう、ぜひとも、キキちゃん主演で、五稜郭の土方さんを、お願いします!!! 

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宝塚キキ沼に落ちて vol15

2020年12月31日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol14 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 先日たまたま、e+のアプリを見ていましたら、2月16日「アナスタシア」東京貸し切り公演の申し込みがあったものですから、「当たって行けなかったときは、中村さまにもらっていただくとか、なんとかなるはず」と張り切って申し込みましたが、見事にはずれました。
 結局、行けない可能性の方が高いので、友の会も、一般の申し込みもやめました。
 「アナスタシア」、見たくてたまらないのですが、世の中、どうしようもないこともありますよねえ。

 今にして思えば、母が元気なうちに、玉三郎の歌舞伎とGACKTの眠狂四郎、母の望み通りに連れて行ってあげてよかった、とつくづく。生きているうちに、見たいものを見ておきたいものです。
 「エリザベート」も、死ぬまでに、どうしても一度見たいのですが、トートのイメージと歌唱力が、あんまりな舞台を見たいとは思いません。望海さんのトートは、夢で終わりました。あと見たいのは、キキちゃんのトートです。

 浅田真央(mao asada) ミュージカル 「エリザベート」 Elisabeth ~ I belong to Me 【MAD】

 「エリザベート」は英語では上演されてないと聞いたように思うのですが、「私だけに」は「I  belong to Me」という題で、英訳されていたみたいでして、今年の全日本フィギュアスケート選手権、使っている女子選手が複数いました。「オペラ座の怪人」からは、これまで、ずいぶん曲が使われてきましたので、エリザベートももっと使われると、一般の認知度が上がりそうな気がします。
 ただし、上の真央ちゃんの動画は、あるいは、もしかして、音楽を上からかぶせたもののように思います。

 「アナスタシア」は、エフゲニア・メドベージェワの「Once Upon A December 」があったんですが、これも後に音楽だけかぶせたものでしょうか。この青い衣装の当時、この曲ですべっていた覚えがないんです。雰囲気、ぴったりですけど。

Evgenia Medvedeva / Евгения Медведева - Once Upon A December

 どこで出た話か知りませんけれど、花組の「はいからさんが通る」を「ベルばら」に代わる宝塚の定番にできたら、というような話があるようなのですが、私はちょっと首をかしげてしまいます。
 そりゃあ、海外ミュージカルは版権だか上映権だかにお金がかかりますし、劇団としては、「ベルばら」に代わるものが欲しい気持ちはわかるのですが、「はいからさんが通る」ねえ。

 「はいからさん」は、原作が「ベルばら」とあまりちがわない時代のものですし、個人的には、あんまり見る気がしません。シベリア出兵を調べたときに、古いドラマやらアニメやらも見てみまして、さっぱり感心しませんでしたし。
 せめて「ベルばら」のように、「愛あればこそ」とか「青きドナウの岸辺」とか、歌い継がれる名曲があればまだしも、ですが、いい楽曲ができた、という話も聞きません。

 ただ、ですね。「日本が舞台のもの」というのは、あっている気がするんですよね。
 宝塚作品の人気で、現在ベストスリーに入るものが、ウエクミ先生の大劇場デビュー作、雪組の「星逢一夜」です。

雪組公演制作発表会『星逢一夜(ほしあいひとよ)』パフォーマンス

 いえ、宙組の天彩峰里ちゃんがカフェブレイクで、宝塚で好きな作品は?と聞かれ、「星逢一夜」です、と答えていたのが、とても印象的でした。
 私は、見てません。望海さんが二番手で出ておられるのですが、百姓一揆の話みたいで、個人的には、円盤買ってまで見たいかといいますと、ちょっと、という感じなんです。

  しかし、今年のトレンドが「鬼滅の刃」ですし、いまやはり、日本の少し昔、明治・大正あたりの話がいいのでは、とは思うんです。
 バックが動乱、というなら、やはり幕末維新でしょうか。
 鹿鳴館に維新をからめるとか、でしたら、来年の大河は渋沢栄一みたいですから、登場人物の知名度もあがりますでしょうか。

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広瀬常と森有礼 美女ありき2 - 郎女迷々日録 幕末東西

広瀬常と森有礼美女ありき1の続きです。森有礼は、奇矯な人です。えー、私が勝手に言ってるんじゃありません。徳富蘇峰が言っているんです。「若き森...

広瀬常と森有礼 美女ありき2 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 森有禮を、基本的にはモデルにして、お相手はやはり幕臣の広瀬常がモデル、二番手さんは女に手が早いイギリス紳士・アルジャーノン・バートラム・ミッドフォートをもってくるか、あるいは鮫島尚信。

 「はいからさん」ではないですけども、満州を舞台に、白系ロシア人の少女と日本の軍人の話もおもしろいかなあ、と思うんですけれども、とても筋立てがむつかしそうです。

 なにはともあれ、楽曲がよくなくては、だめです。
 「ベルばら」が定番化したのは、さまざまな工夫があったから、でしょうけれども、やはり楽曲がよかったのが一番ではないか、と思います。

 当分、生観劇は無理ですし、暗いことは考えないで、あれこれ、キキちゃんに演じてもらいたくなるような筋立てでも夢想して、新年を迎えようかと思います。夜のひとときは、紅白でBABYMETALですけれど。

 みなさま、どうぞ、良いお年をお迎えくださいませ。 

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宝塚キキ沼に落ちて vol14

2020年12月16日 | 宝塚

宝塚キキ沼に落ちて vol13 - 郎女迷々日録 幕末東西

上の続きです。

 12月14日、「アナスタシア」大劇場千秋楽のライブ配信を見てから、頭の中で「Once upon a december」と「The Neva Flows」が鳴り響いて、なにも手につきません。
 なんとしてでも東宝公演に行きたい! と思うのですけれども。

360 Video: On-Stage at Broadway’s “Anastasia”

 ほんとに、楽曲がいいんです。映画になったら見に行きます! たとえ、キキちゃんがでていなくても(笑) いや、映画のグレブは、ぜひ、ラミン・カリムルーでお願いしたいです。

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宝塚キキ沼に落ちて vol9 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol8-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。【宝塚歌劇】宙組「アナスタシア」歌唱フル動画【三井住友カード公式】キキちゃんは...

宝塚キキ沼に落ちて vol9 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上において、「アナスタシア」は、2017年、ブロードウェイでアニメをもとにミュージカル化されたこと、そのアニメは、1956年の映画「追想」に着想を得ていたことは、書きました。
 アニメと映画は見ていたのですが、ミュージカルは未見でしたから、いったいどの程度、史実離れしたファンタジーなのかは、知りませんでした。

 今回、宝塚版を見て、さすがに、アニメよりはかなり、史実に近づけていたことがわかりました。

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宝塚キキ沼に落ちて vol8 - 郎女迷々日録 幕末東西

宝塚キキ沼に落ちてvol7-郎女迷々日録幕末東西上の続きです。いったいいつ、どうして、私はキキ沼に落ちたのか、実のところ、はっきり覚えてはな...

宝塚キキ沼に落ちて vol8 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に書きましたが、ニコライ2世とその一家が惨殺されましたのは、ウラル地方のエカテリンブルグ、イパチェフ館の地下室です。
 星風アーニャは、ウラル地方の病院で気づいたときには、記憶を失っていて、徒歩でペテルスブルク(レニングラード)へたどり着いたと言い、途中の地名で、ペルミを挙げていました。ペルミはエカテリンブルグからペテルスブルクへ向かう途上にあります。
 しかもアーニャは、出国許可証を得るために、「下着に縫い付けられていたダイアモンド」を取り出します。
 実は、公女たちが即死しないで苦しんだのは、下着に多量のダイアモンドが縫い込まれていたため、といわれているんです。

 そして、末娘のアナスタシア生存説が流れた原因の一つには、一家を殺害した警護兵の中に、一家に同情的で、殺害に加わらなかったものがいく名かいて、逃亡に手を貸したのではないか、と推測されたことがあります。

【宝塚歌劇】宙組「アナスタシア」歌唱フル動画【三井住友カード公式】

 チェーカー(秘密警察)の将校らしいキキちゃんグレブの「The Neva Flows」は、以下のようなことを歌います。
 グレブの父親が皇帝一家の銃殺隊に加わっていたこと、少年だったグレブは、イパチェフ館にいた「誇らしげな少女」(アナスタシア)を見たこと、父親が夜中にピストルを持って出ていき、一家が殺された銃声と叫び声を聞いたこと、しかしグレブの記憶に深く刻まれたのは、その後の静寂であったこと。

 この歌より後に、上官の言葉で、グレブの父親が、どうやらアナスタシアを殺せず、逃がしたらしいことがわかるのですが、とすれば、「母は父が恥じて死んだと言った」とは、グレブの父は、アナスタシアに同情して逃がし、それを恥じたまま殺されたか自殺したか、だったと推測できます。

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尼港事件とwikiと『ニコラエフスクの破壊』vol.6 - 郎女迷々日録 幕末東西

尼港事件とwikiと『ニコラエフスクの破壊』vol.5の続きです。日本におきまして、ロシア革命の本はけっこう多いのですけれども、ロシア内戦の...

尼港事件とwikiと『ニコラエフスクの破壊』vol.6 - 郎女迷々日録 幕末東西

 

 上に書いておりますが、ロシア革命は、第1次世界大戦の最中に起こっています。
 交戦相手のドイツは、ロシアの混乱を見て、スイスにいたレーニン(ボルシェヴィキの指導者)のロシア帰国を認め、資金援助をしたと噂されます。

 すでにニコライ二世は退位に追い込まれていましたが、革命勢力は多種多様で、大方は、連合国側に立ったままで、ドイツ・オーストリアとの交戦を続けるしかない、としていまして、最初に権力を握ったケレンスキーは、劣勢の対ドイツ、オーストリア戦線で攻勢をかけます。しかし、厭戦気分が蔓延しての革命なのですから、攻勢がうまくいこうはずもないんです。

 そんな中、唯一、奮戦しましたのが、チェコスロバキア狙撃旅団でした。
 チェコスロバキアは、そのころ、オーストリア・ハプスブルグ帝国の一部でしたけれども、独立気分が高まっていまして、オーストリアの一員として戦うことに、乗り気ではない者が多数いました。
 徴兵で駆り出され、ロシア側の捕虜になった者のうち、ロシアの義勇軍募集に応じた人々も多かったのですが、敵国側で戦った場合、自国側に捕まれば、ただちに銃殺なんです。死に物狂いになりもします。

 ところが、レーニン・ボルシェビキが政権を掌握しますと、ドイツ・オーストリアとの単独講和に踏み切るんですね。
 しかしこの講和が、ロシアにとっては譲歩の上にも譲歩を重ね、現在のバルト三国、ベラルーシ、ウクライナにまたがります広大な領土をドイツに割譲するものだったので、ボルシェビキ政権は急速に求心力を失います。

 で、連合国側は、チェコ軍団の無事出国をロシアに求め、ドイツ・オーストリアを通過させることはできませんから、結局、シベリア鉄道で極東ウラジオストクへ出て、太平洋を渡ってアメリカを経由し、大西洋を越えフランスへ行き、西部戦線に参加する、という、遠大な計画が立てられます。

 ところが一方、ロシアは、ドイツ・オーストリアの捕虜を、早急に本国に帰さなければいけません。この多量の捕虜たちが、シベリア鉄道を東から西へ移送されていて、チェコ軍団とぶつかり、小競り合いを起こしたりしたんですね。
 ただでさえ、シベリア鉄道は麻痺状態でして、足止めされたチェコ軍団はいらいら状態、だったんですが、軍事人民委員で最高軍事会議議長のレフ・トロツキーは、チェコ軍団輸送にかかわります鉄道沿線のすべてのソヴィエト(ボルシェヴィキが掌握)に、なにを血迷ったのか、「チェコ軍団を武装解除し、逆らえばその場で銃殺しろ」というとんでもない命令を発したんです。
 しかし、このときのソヴィエト政権にそんな力はなく、反対に各地のソヴィエト政権が、チェコ軍団に倒されました。
 ここで、反ボルシェヴィキだった人々が勢いづきます。反ボルシェヴィキといっても、様々な勢力の混合体で、結束力は弱かったのですが、一応彼らは、白軍と呼ばれました。

 ニコライ二世一家が、監禁されておりましたエカテリンブルクにおいて、1918年7月16日、ボルシェビキのチェーカー(秘密警察)指揮で惨殺されましたことも、チェコ軍団の蜂起と関係があります。
 なにしろ、ごく近くのチェリャビンスクで、チェコ軍団によってソビエトが倒され、白軍が勢いを得ていましたので、元皇帝一家が白軍に奪われ、反ボルシェビキ運動にさらなる拍車がかかることを、ボルシェビキは、怖れずにいられなかったわけなのです。

 そして実際、エカテリンブルクはまもなく、白軍の支配下に入るんですね。
 ボルシェビキは、「ニコライ二世は処刑したが、家族は他の場所へ移した」と公表してまして、当然のことながら、イパチェフ館には白軍の調査が入り、聞き取りも行われました。しかし結局、確かなことはなにもわからずじまいで、アナスタシア生存説が、長らくささやかれることとなります。

  で、再び「The Neva Flows」。
 「父の誇りを信じている」という言葉なんですが、英語では「But I believe he did a proud and vital task」なんですね。「父は誇りにかけて使命を果たした」ということでしょうけれども、ボルシェビキの将官になっているらしいグレブにとって、それはやはり、「父はアナスタシアに同情して逃がしたりはしていない」ということなのでしょうか。
 しかし、ひと目見て忘れられなかった「誇り高い少女」、「噂話」と「夢」には気をつけなければならない、というわけですから、どこかに、虐殺に加担しなかった父を肯定したい思いも、抱いている感じがあります。

 ♪流れるネヴァ川 春は近い 王族は潰えた
    革命に感情はいらない(A revolution is a simple thing)

 ネヴァ川は流れ、春が巡り来て 王族は消えた。
 革命とは、そういった単純なもので、よけいな感傷はいらない

 と、あるいはグレブは、自分に言い聞かせているのでしょうか。

 そしてつまり、ですね。
 グレブはペテルスブルクで掃除婦をしていたアーニャに一目惚れしたようなのですが、これね、ひと目見て「あの誇り高かったアナスタシアに似ている!」と、心引かれた、ってことなんじゃないでしょうか。

 真風ディミトリは、子供のころパレードでアナスタシアを見て憧れていましたが、父親がアナーキストで収容所で殺され、孤児になって、激動のロシアで詐欺師になって生きぬき、アーニャに出会います。

  なにしろ、宝塚版はまだ円盤が出ていませんで、仕方なく、ブロードウェイ版をYouTubeでひろい見しているのですが、ほんとうに、くりかえしてメロディが使われる「Once upon a december」は名曲です!

 Anastasia Broadway Musical Mean to be Quartet at the Ballet

 アーニャとディミトリ、皇太后、グレブがそれぞれに「白鳥の湖」の舞台を見ている上の場面がまた、見事です。
 オデットの踊りにアーニャの歌声、王子ジークフリートにディミトリ、三羽の白鳥に皇太后、ロットバルトにグレブの声がかぶさり、ディミトリとグレブの2重唱から、アーニャ、皇太后を交えた四重唱へ。圧巻です。

 オデットは潤花ちゃん、ジークフリートは亜音有星、ロットバルトが優希しおん。踊り手は若手ですが、評判通り、ロットバルトが素敵でした。

 海外ミュージカルらしく、独唱の人数が少ないのは残念で、天彩峰里ちゃん、独りの歌が聴けなかったのはさみしいかぎりでした。
 リリー役の和希そらくんは、フィナーレまで娘役で、キキちゃんとのデュエダンは最高でした。なんなら、キキちゃんトップのときのトップ娘役は、そらくんで(笑)
 ずんちゃん(桜木みなと)は珍しく老け役でしたが、肩の力が抜けて、楽しそうでした。

 そしてアーニャは、まどかちゃんにぴったりの役でした。
 アニメ声もあまり気にならず、真風ディミトリとの並びも、とてもよくって、これが最後かと思うと、やはり残念な気がします。
 真風さんは明るくはじけ、キキちゃんは重厚で、しかしキキちゃん、フィナーレでは打って変わって美しい笑顔を見せてくれましたので、もう最高!

The Neva Flows reprise (RUS SUB)

 泣ける場面です。
 最後にグレブは、「アナスタシアは伝説になった」みたいなことを言っていたように思うのですが、ソビエト連邦が潰えて、ロマノフの美しい伝説を、ロシアは取り戻したんですよね。
 最後のキキちゃんグレブは、ロシアの心を歌っているように思えました。

 どうしたらいいんでしょう! 
 どうしても東京へ行って「アナスタシア」を見たい! という思いがつのってやみません。
 見たい!!!

コメント (7)
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