郎女迷々日録 幕末東西

薩摩、長州、幕府、新撰組などなど。仏英を主に幕末の欧州にも話は及びます。たまには観劇、映画、読書、旅行の感想も。

大河『花燃ゆ』ー山本氏・講演の衝撃

2015年05月27日 | 大河「花燃ゆ」と史実

 えーと、もしかしまして、今年になって初めてのブログです。
 ごちゃごちゃごちゃごちゃ、いろいろとございました。
 スイーツ大河『花燃ゆ』と西本願寺の続きということになるでしょうか。

 まず、ご報告を。山本栄一郎氏が、萩博物館「萩ものがたり」の一冊として、「吉田松陰の妹・文(美和)」というご本を出されました。



 よく、「文さんについては史料がないので、自由に描ける」なんぞと言われるのですが、ちがいます! 文さん本人はなにをしたというわけでもないのですが、松陰の妹であったために、この時代の女性にしては驚くほど、史料が残っています。

 この本の後書きに、山本氏が書いておられますが、楫取素彦の書簡で、明治以降の文さんの動静がうかがえますと同時に、萩博物館には、50通を越えます文さん自筆の書簡が眠っていました。
 これまでに出された「花燃ゆ」関連本、実は私、まったく読んでないのですが、まあ、おおよそ、ろくに史料に基づいていないものばかり、と推察できまして、その点、山本氏の本は画期的ですので、史実に関心がおありの方は、どうぞご一読ください。萩博さんで、通販してくださるんだそうです。

 私、実は「花燃ゆ」を、いっさい見ていません! 一応、全部録画はしていっているのですが。
 なぜ見ていないかと言えば、去年暮れの番宣で、すべてがミスキャストで、とてつもなく気分が悪くなりそうな印象を受けたからです。録画にしておけば、いやならスキップができますから。
 なにより、伊勢谷松陰が、ねえ。

 松陰は、確かにものすごく頭のいい人なんですが、一方で、思いつめるとまわりが見えなくなりますし、なんだか間が抜けていて、そこがこう、とてもかわいいんです。
 伊勢谷、ねえ。かわいくないんです。
 ひたすら変な松陰になっていそうだなあ、と、松陰ファンとしましては、うんざりしてしまった、といいますか。
 録画をスキップしながら見ておられる中村さまも、「まったくもっておもしろくありません。人間関係の描き方が安っぽくて、ホームドラマにもなっていませんし」とおっしゃいます。

 しかし、それとは別に、さる4月22日、神奈川県立地球市民かながわプラザ(本郷台)といいます怪しげな名前のホールで、山本氏が講演をなさるというので、中村さまをお誘いし、一泊で出かけました。



 21日午後の飛行機で羽田へ飛び、泊まりましたのは大船のホテルです。
 鎌倉が近く、実は、松陰や文さんの叔父(滝の弟)が住職を務めました瑞泉寺に行きたくもあったんです。
 山本氏のお話では、後年、文さんも叔父の足跡をたずね、鎌倉に行っています。海水浴もしたそうですが(笑)



 松陰は、叔父を訪ねて泊めてもらったことがありまして、境内に「松陰吉田先生留跡碑」が建っています。
 こじんまりとしていますが、緑が多く、非常に美しい禅寺です。



 時間が余りましたので、鶴岡八幡宮にもお参りしました。



 そして午後。いよいよ講演です。
 地球市民かながわプラザといいます大層なネーミングにふさわしく、けっこうなホールでした。




  生涯学習セミナーの一環でして、会場は年配の方ばかり。
 私は以前から電話で、書簡のお話などうかがっておりましたので、それほど目新しい内容では無かったのですが、一つ、仰天したことがございました。

 えーと、ですね。
 松陰のすぐ下の妹である千代さんがドラマには出て来ないっ!!!ということは、初回に、中村さまからお聞きしていました。
 幾度か書きましたが、松陰には三人の妹がいまして、上から千代、久(寿)、文(美和)です。年の差は、およそ5つづつですから、長女の千代さんと末の文さんの間は十ほども離れ、千代さんが嫁に行きましたのは推定15歳で、そのとき文さんは5歳そこそこですし、嫁入る前の何年か、千代さんは城の近くに住む必要がありました父親の身の回りのめんどうを見るため、他の家族とはなれて暮らしていましたので、文さんが物心ついてから、千代さんといっしょに暮らしたことはないようなんです。
 とはいいますものの、スイーツ大河『花燃ゆ』と楫取道明に書いたと思うのですが、千代さんの嫁入り先は、母親の滝さんが養女にいっていました児玉家で、親戚ですし、距離的にも杉家にごく近い弘法谷でしたから、日常的に行き来がありました。

 「すでに嫁に行った姉だから、話がややっこしくなりますし、出さないですますつもりなんでしょうか、NHKは」そう中村さまには申し上げたのですが、なんとも釈然としない思いでした。
 去年の春に書きました主人公は松陰の妹!◆NHK大河『花燃ゆ』を見ていただきたいのですが、私は最初、NHK大河の主人公が松陰の妹に決まったと聞きまして、「叔父の玉木文之進を介錯した気丈な千代さん!」を真っ先に思い浮かべたんです。

世に棲む日日〈1〉 (文春文庫)
クリエーター情報なし
文藝春秋


 なんといいましても、「世に棲む日日」冒頭の千代さんは印象的ですし、そしてなにより、松陰ともっとも年が近く、松陰にもっとも愛された妹は、千代さんです。
 それが出てこない、となりますと、要するに「NHKは、松陰も萩の乱も、まともに描くつもりがないってこと?」という疑いがわきあがりまして、私はますます見る気を無くしたんですが、「女が叔父さんの介錯をする場面なんて、NHKは好きじゃないんでしょうよ」と、妙な納得の仕方をしておりました。

 ところが、ところが。
 山本栄一郎氏は、おっしゃるんですね。
 「NHKは、長女の千代を消して、末の文と合体させたんです。文と松陰では、年が離れすぎてドラマになる要素が少ないので、千代と松陰の関係を、そのまま文と松陰の関係にしてしまっているんです。この消された千代という人は、萩の乱において、叔父の介錯をしているんですが、これは本人が語り残していることでして、事実としか思えません。女性が介錯をするというのは、他に聞いたことがありませんし、非常にインパクトがあります。おそらくNHKは、これを主人公の文にやらせるつもりですよ」 
 
 「えーっ????? 嘘っ!!!!!」
 講演の最中に私、思わず叫んでしまいましたわ。

 文さん小説、まったくもって進んでいません。
 母が入院したり、ごちゃごちゃごちゃごちゃ、いろいろとありました上に、次から次と、山本氏が新しい事実を発見してくださっちゃいまして、書き直しの連続。
 しかしね。
 NHKとは関係なく、私には、幕末維新という時代と、そこに生きた普通の日本人を、私なりにリアルに、語り残してみたい、という思いがあります。
 まあ、焦らず、気長にやってみようかなと。

 しかし、はあ。
 叔父を介錯するスーパーヒロイン、合体文さんっ!!! ですか。
 笑えませんわ。

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コメント (8)
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