「坂の上の雲」NHKスペシャルドラマ第4回の続きです。
「なに、この陳腐で紙芝居みたいな三文ロマンス!!!」って、もちろん、広瀬武夫とアリアズナの恋ですが。
原作にどこまで書かれていたか忘れてしまっているのですが、それにしても、ひどすぎです!!! 当時の軍隊といいますのは、騎兵同士、海軍同士で、例え仮想敵国状態にあっても、仲間感覚があり、そういった海軍同士のつきあいの中から、広瀬の恋も生まれたことは、わかるように描かれていた気がするのですが、「安易すぎっ!!!」なんです。
黄海海戦後の名場面を省いて、気持ちの悪い鴎外のセリフのみにしてしまったのと同じ感覚なんでしょうけれども、平時は同じ海軍士官同士、ロシア海軍士官とも気持ちよくつきあっていた感じが、まったく出ていません。ロシア人の描かれ方が、安っぽすぎます。
あー、私、時系列を勘違いしていたみたいで、今回、夏目漱石が松山に来るシーンがありましたね。
しかし、ひどい描き方です。「坊ちゃん列車に乗れよ!!!」といいますのは、松山人の私ならではの要望なんですが、それよりなにより、「漱石っ!!! あんたはあんたを教師にしてくれた帝大恩師の外山正一に、なんか恨みでもあるのかよっ!!!」です。
「日本人はなんでも万歳」って、あーたっ!!! 「万歳」はつい数年前、憲法発布の折に、東大総長・外山正一が考えついた祝賀の発声でしょうがっ!!! 日本の近代化の象徴です。
で、英学に没頭していた漱石が、松山に来て、子規と共に俳句をやり、日本文芸の伝統をいかに近代的に生かすか、そのきっかけをつかんだのだと、そういう肝腎な部分は、さっぱり描こうとしないんですよねえ。
「万歳」に文句をつけるのなら、「外山先生……、万歳じゃだめなんです。いずれ、あなたの新体詩抄を超えてみせます」くらい言わせませんと(笑)。
はあ、そして、ネイティブ・アメリカンですか。
もう、とってつけたような、現代的紋切り型の迫害されたインディアン登場!!! ですけど、なんの必要があって出したんでしょう。
もともと領域国家を形成していた日本と、ネイティブ・アメリカンをいっしょには語れんですわね。「白人が有色人種を虐げている!!! インディアンと日本人は同じ有色人種なんだっ!!!」って、昭和初期の反英米感情の高まりの中で盛んにいわれたことでして、人種差別があったのは事実ですけれども、当時のネイティブ・アメリカンが、です。必死になって西洋近代を受け入れ、あくせくしている当時の日本人を見て「あなたたちは自由で幸せだ」なんぞということは、およそありえません。受け入れる前の江戸時代の日本人に対してならば、わかるんですけれども。
そして、真之です。
前回が尾を引きましたねえ。部下が一人死んだからって、坊主になるって、あーた。軍人を志しといて、それはあんまりでしょう。で、アメリカへ行き、マハンと冷静に語り合い、米西戦争の観戦にはりきるとは、分裂症です。原作の「坊主になる」が生きているのは、日本海海戦という大舞台を乗り切ったあげくだから、です。前回、下っ端士官で、戦闘時に直属の部下が死んだからって、あそこまでおろおろされたのでは、今回に続くのが変です。
そしてきわめつけは、またしても伊藤博文です。
「いくらなんでも、俊輔(伊藤博文)がそんな馬鹿げたセリフを口にするもんかっ!!!」です。「外交は軍事力でやるもんじゃない」とかなんとか、ねえ。
あーた、俊輔は軍事力で維新を勝ち取った長州閥の中でも、下っ端からのし上がった重鎮ですのよ。当時の外交が、軍事力無しに成り立たなかったことなど、身に染みてわかっていますよ。わかっていたからこそ、恐露症といわれたほど用心深かったんでしょうが。
まっ、日英同盟の交渉の最中に、ロシアと交渉しようとした独断行為を、時の駐英公使・林董は怒ってますけど、一方で、おかげで英国の譲歩を引き出せた、とも言ってますからねえ。狸の中の狸の俊輔ですから、わざとやったとも考えられますわね。
ともかく、日本が無理をして海軍を充実させたからこそ、日英同盟はありえたんですわよねえ、伊藤公爵?
最後に、細かいことですが、閔妃です。
あの写真、実は女官のものだといわれていたと記憶しているのですが、まあ、いいでしょう。
閔妃暗殺に日本公使館がかかわっていたことは事実ですが、それを言うんでしたら、閔妃に弾圧された朝鮮開化派がその中心にいたことも説明すべきでしょう。
その後の朝鮮の乱というのも、近代化政策に対する反感が大きく作用していますし、朝鮮国内の近代化をめぐる確執を無視しながら、「坂の上の雲」に閔妃暗殺を出す必然性があるのか、疑問です。
で、続きは一年先ですか。
やれやれ。
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「なに、この陳腐で紙芝居みたいな三文ロマンス!!!」って、もちろん、広瀬武夫とアリアズナの恋ですが。
原作にどこまで書かれていたか忘れてしまっているのですが、それにしても、ひどすぎです!!! 当時の軍隊といいますのは、騎兵同士、海軍同士で、例え仮想敵国状態にあっても、仲間感覚があり、そういった海軍同士のつきあいの中から、広瀬の恋も生まれたことは、わかるように描かれていた気がするのですが、「安易すぎっ!!!」なんです。
黄海海戦後の名場面を省いて、気持ちの悪い鴎外のセリフのみにしてしまったのと同じ感覚なんでしょうけれども、平時は同じ海軍士官同士、ロシア海軍士官とも気持ちよくつきあっていた感じが、まったく出ていません。ロシア人の描かれ方が、安っぽすぎます。
あー、私、時系列を勘違いしていたみたいで、今回、夏目漱石が松山に来るシーンがありましたね。
しかし、ひどい描き方です。「坊ちゃん列車に乗れよ!!!」といいますのは、松山人の私ならではの要望なんですが、それよりなにより、「漱石っ!!! あんたはあんたを教師にしてくれた帝大恩師の外山正一に、なんか恨みでもあるのかよっ!!!」です。
「日本人はなんでも万歳」って、あーたっ!!! 「万歳」はつい数年前、憲法発布の折に、東大総長・外山正一が考えついた祝賀の発声でしょうがっ!!! 日本の近代化の象徴です。
で、英学に没頭していた漱石が、松山に来て、子規と共に俳句をやり、日本文芸の伝統をいかに近代的に生かすか、そのきっかけをつかんだのだと、そういう肝腎な部分は、さっぱり描こうとしないんですよねえ。
「万歳」に文句をつけるのなら、「外山先生……、万歳じゃだめなんです。いずれ、あなたの新体詩抄を超えてみせます」くらい言わせませんと(笑)。
はあ、そして、ネイティブ・アメリカンですか。
もう、とってつけたような、現代的紋切り型の迫害されたインディアン登場!!! ですけど、なんの必要があって出したんでしょう。
もともと領域国家を形成していた日本と、ネイティブ・アメリカンをいっしょには語れんですわね。「白人が有色人種を虐げている!!! インディアンと日本人は同じ有色人種なんだっ!!!」って、昭和初期の反英米感情の高まりの中で盛んにいわれたことでして、人種差別があったのは事実ですけれども、当時のネイティブ・アメリカンが、です。必死になって西洋近代を受け入れ、あくせくしている当時の日本人を見て「あなたたちは自由で幸せだ」なんぞということは、およそありえません。受け入れる前の江戸時代の日本人に対してならば、わかるんですけれども。
そして、真之です。
前回が尾を引きましたねえ。部下が一人死んだからって、坊主になるって、あーた。軍人を志しといて、それはあんまりでしょう。で、アメリカへ行き、マハンと冷静に語り合い、米西戦争の観戦にはりきるとは、分裂症です。原作の「坊主になる」が生きているのは、日本海海戦という大舞台を乗り切ったあげくだから、です。前回、下っ端士官で、戦闘時に直属の部下が死んだからって、あそこまでおろおろされたのでは、今回に続くのが変です。
そしてきわめつけは、またしても伊藤博文です。
「いくらなんでも、俊輔(伊藤博文)がそんな馬鹿げたセリフを口にするもんかっ!!!」です。「外交は軍事力でやるもんじゃない」とかなんとか、ねえ。
あーた、俊輔は軍事力で維新を勝ち取った長州閥の中でも、下っ端からのし上がった重鎮ですのよ。当時の外交が、軍事力無しに成り立たなかったことなど、身に染みてわかっていますよ。わかっていたからこそ、恐露症といわれたほど用心深かったんでしょうが。
まっ、日英同盟の交渉の最中に、ロシアと交渉しようとした独断行為を、時の駐英公使・林董は怒ってますけど、一方で、おかげで英国の譲歩を引き出せた、とも言ってますからねえ。狸の中の狸の俊輔ですから、わざとやったとも考えられますわね。
ともかく、日本が無理をして海軍を充実させたからこそ、日英同盟はありえたんですわよねえ、伊藤公爵?
最後に、細かいことですが、閔妃です。
あの写真、実は女官のものだといわれていたと記憶しているのですが、まあ、いいでしょう。
閔妃暗殺に日本公使館がかかわっていたことは事実ですが、それを言うんでしたら、閔妃に弾圧された朝鮮開化派がその中心にいたことも説明すべきでしょう。
その後の朝鮮の乱というのも、近代化政策に対する反感が大きく作用していますし、朝鮮国内の近代化をめぐる確執を無視しながら、「坂の上の雲」に閔妃暗殺を出す必然性があるのか、疑問です。
で、続きは一年先ですか。
やれやれ。
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