(01)
学校文法は単純な英語文法からの輸入で、主語・述語関係を単純に当てはめたものだ。そのため、「象は、鼻が長い」という単純な文でさえ、どれが主語だか指摘できず、複数主語だとか、主語の入れ子だとか、奇矯な技を使う。これに対して三上は、日本語には主語はない、とする。「象は」は、テーマを提示する主題であり、これから象についてのことを述べますよ」
従って、
(01)(02)により、
(03)
① 象は動物である。⇔
① ∀x(象x→動物x)⇔
① すべてのxについて(xが象であるならば、xは動物である)。
然るに、
(04)
1 (1)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)} A
2 (2)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)} A
3 (3)∃x(兎x&象x) A
1 (4) 象a→∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 1UE
2 (5) 兎a→∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 2UE
6 (6) 兎a&象a A
6 (7) 兎a 6&E
6 (8) 象a 6&E
1 6 (9) ∃y(鼻ya&長y)&∀z(~鼻za→~長z) 48MPP
2 6 (ア) ∃y(長y&耳ya)&∀z(耳za→~鼻za) 57MPP
1 6 (イ) ∃y(鼻ya&長y) 9&E
ウ (ウ) 鼻ba&長b A
2 6 (エ) ∃y(長y&耳ya) ア&E
オ(オ) 長b&耳ba A
オ(カ) 耳ba オ&E
1 6 (キ) ∀z(~鼻za→~長z) 9&E
2 6 (ク) ∀z(耳za→~鼻za) ア&E
1 6 (ケ) ~鼻ba→~長b キUE
2 6 (コ) 耳ba→~鼻ba クUE
2 6 オ(サ) ~鼻ba カコMPP
12 6 オ(シ) ~長b ケサMPP
オ(ス) 長b オ&E
12 6 オ(セ) 長b&~長b シス&I
12 6 (ソ) 長b&~長b エオセEE
123 (タ) 長b&~長b 36ソEE
12 (チ)~∃x(兎x&象x) 3タRAA
12 (ツ)∀x~(兎x&象x) チ量化子の関係
12 (テ) ~(兎a&象a) ツUE
12 (ト) ~兎a∨~象a テ、ド・モルガンの法則
12 (ナ) 兎a→~象a ト含意の定義
12 (ニ)∀x(兎x→~象x) ナUI
従って、
(04)により、
(05)
(ⅰ)∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。然るに、
(ⅱ)∀x{兎x→∃y(長y&耳yx)&∀z(耳zx→~鼻zx)}。従って、
(ⅲ)∀x(兎x→~象x)。
といふ「推論(三段論法)」、すなはち、
(ⅰ)すべてのxについて{xが象であるならば、あるyはxの鼻であって、長く、すべてのzについて(zがxの鼻でないならば、zは長くない)}。 然るに、
(ⅱ)すべてのxについて{xが兎であるならば、あるyは長くて、xの耳であり、すべてのzについて(zがxの耳であるならば、zはxの鼻ではない)}。従って、
(ⅲ)すべてのxについて(xが兎であるならば、xは象ではない。)
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(05)により、
(06)
(ⅰ)象は鼻が長い。然るに、
(ⅱ)兎の耳は長いが、耳は鼻ではない。従って、
(ⅲ)兎は象ではない。
といふ「推論(三段論法)」は、「妥当」である。
従って、
(04)(05)(06)により、
(07)
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理式」に「相当」する。
従って、
(03)(07)により、
(08)
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、
① ∀x(象x→動物x)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}。
といふ「述語論理式」に「相当」する。
然るに、
(09)
「象x(xは象である。)」
のやうな「それ」を「xの命題関数(propositional function)」と言ふ。
然るに、
(10)
① ∀x(象x→P)
に於いて、
① Pは「xの命題関数」であるとする。
然るに、
(11)
① ∀x(象x→P)
に於いて、
① P=動物x
② P=∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)
といふ「代入(置き換へ)」を行ふと、
① ∀x(象x→動物x)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
従って、
(11)により、
(12)
① ∀x(象x→動物x)
② ∀x{象x→∃y(鼻yx&長y)&∀z(~鼻zx→~長z)}
といふ「述語論理式」は、両方とも、
① ∀x(象x→P)
② ∀x(象x→P)
といふ『文型』をしてゐる。
従って、
(08)(12)により、
(13)
「述語論理式」を「基準」にするならば、
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」は、両方とも、
① ∀x(象x→P)
② ∀x(象x→P)
といふ『文型』をしてゐる。
従って、
(13)により、
(14)
「述語論理式」を「基準」にするならば、
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
に於ける、
① 象は・・・・・。
② 象は・・・・・。
といふ「日本語」は、両方とも、
① ∀x(象x→ )
② ∀x(象x→ )
といふ『型』をしてゐる。
従って、
(14)により、
(15)
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
といふ「日本語」に於ける、
① 象は
② 象は
は、『述語論理の文法(文型)』を「基準」にすると、「区別」をする「必要」が無い。
従って、
(15)により、
(16)
① 象は動物である。
② 象は鼻が長い。
に於いて、
①「象は」が「主語」であるならば、
②「象は」も「主語」である。