TONALITY OF LIFE

作曲家デビュー間近のR. I. が出会った
お気に入りの時間、空間、モノ・・・
その余韻を楽しむためのブログ

ラ・ボエームとジランドールの休日

2016-12-11 00:38:47 | 音楽
新国立劇場の『ラ・ボエーム』を13年ぶりに観た。
パリの屋根が連なったスクリーンが上がると、カメラのズームのようにとある屋根裏部屋が現れるという
粟國淳氏の演出を覚えていた。
♪「冷たい手を」は、この世で最も美しいものに出合った気分にさせてくれる。
詩人のロドルフォが「貧乏な暮らしでも心豊かに愛の歌や讃歌を創作している」と自己紹介するあたりから一気に胸が熱くなる。
第1幕で登場するこのアリアに心底酔いしれるには、開演前にアルコールを口にしておくべきだった。
第2幕の舞台を埋め尽くすほどのキャストも記憶に残っていた一方で、
忘れかけていたのが第3幕の魅力。
「春に別れることにしたから願っていたい。永遠に
冬が続くことを」というミミのセリフに
招待した両親もやられたようだ。
雪の降らせ方の強弱にまで切なさが行き届いている。
ムゼッタのカップルの痴話喧嘩と四重唱にしてしまうところもいかにもオペラらしい。

劇場を出ると、残酷なほどに舞台の世界は遠ざかる。
例えばウィーンのホールでモーツァルトを聴くと、外に出ても彼が生きた時代の街並が残っているという。
そのような連続性は東京では望めないものの、せめて電車には乗りたくなかった。
パークハイアットに昇って、燭台を意味する “ジランドール” で観劇の余韻を味わうことにした。

ボエームは冬のオペラ。
クリスマスの装飾が街に現れ始めたこの時期によく似合う。
今回のメインキャストは
ミミ:アウレリア・フローリアン
ロドルフォ:ジャンルーカ・テッラノーヴァ
マルチェッロ:ファビオ・マリア・カピタヌッチ
ムゼッタ:石橋栄実
指揮者のパオロ・アリヴァベーニ、オーケストラ、美術、照明といった脇役も質の高いことが窺われた。
オペラはボエームだけでいい、というのは言い過ぎだろうか。
王道の演出と舞台セットで鑑賞できれば尚更である。

2016 11.26 sat
新国立劇場

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