今年の紀伊半島の冬はまだそう寒くはなくて,12月でもキャンプができる.とはいえ,カイロと湯たんぽ代わりに熱湯を入れたステンレス製スキットルを抱え込みながら寝袋にくるまり,無事に北山川の朝を迎えるのだった.この日はいつになく辺り一面が,靄(もや)で真っ白に包まれていた.
これはひょっとすると川霧が期待できるかもしれない.そう思って,朝食をさっさと済ませてオートバイを走らせた.国道で北山川沿いを下流の方へ向かって行くと、期待通り,北山川の表面からは、まるで湯気のような川霧がゆっくりと漂っていた.
奥瀞温泉の近くにあるつり橋―上瀞橋―までやってきた.ボロボロだった注意を促す看板が真新しくなっていた.そんなことよりも,この上瀞橋の中央付近からなら,北山川の川霧をよりよく眺めることができるかもしれない.ガタンガタンとつり橋を揺らしながら走行していく.
思った通り,上瀞橋から北山川の川霧を一望することができた.この川霧は,大気中の温度よりも川の水温の方が高いときに発生する.早朝の北山川に手を入れてみたことがこれまで何度かあったが,冷たそうに見えても実は生ぬるかったことを記憶している.なぜだろう.
日中の真っ青な北山川もいいけれど,幻想的な早朝の北山川もすばらしい.まだ人間も動物も活動する前の深閑とした早朝,北山川と川霧がどこか違った世界へとテレポートしてくれるのだった.そして,今年はこれが最後の北山川になるだろう.また来年,同じ場所でこの川霧を見れればいいなと思うのだった.
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