オートバイで旅して観たモノの記録

 Ôtobai de tabi site mita mono no kiroku.

夢絃峡 一話

2020年02月03日 | 探検


 寒さは厳しくないが,天気はあいにくの曇天模様で路面もウェットだ.そんな日は,無理に遠出はぜすに近場を散策するに限る.やってきのは,京都の最南端に位置する笠置町だ.村道のような細い道を経由して,いつもよく走る国道163号線の対岸へと回ってみた.



 木津川を間に挟んだ国道との対岸に位置するこの場所からは,異様な雰囲気を放った廃墟―笠置観光ホテル―を見ることができる.国道がトンネルになっている山の中に建っているので,国道側からは見ることができない.一応,この写真には,いわゆる霊的なものは写ってはいないようだ.



 人の気配のない山の中で独り,この廃墟を見ているとちょっと薄気味悪い気がしてきた.そんなことを思っていた矢先,急に大きな物音がして少し驚いてしまった.物音の正体は関西本線の二両編成の電車だった.国道の対岸には関西本線が走っていることをすっかり忘れてしまっていた.



 廃墟の方から視線を感じるような気がしたので,逃げるようにして対岸を東へと走り,同じく京都の南山城村へと向かった.ここは南山城村の大河原という場所で,木津川が流れており,関西電力の大河原発電所がある.看板が立っていて,この木津川の上流に高山ダムと夢絃峡があることを示している.高山ダムは随分と前から知っていたが,夢絃峡なる地名には全く気が付かないでいた.



 夢絃峡が気になるところだが,まずは大河原発電所をこの機会にじっくりと眺めてみた.この美しいレンガ造りの建屋は,1918年(大正8年)に建築されたものだそうだ.この建屋は今なお現役であるが,その貴重な建築構造から,日本建築学会や土木学会から表彰を受けているという.



 大正時代の香りのする大河原発電所を後にして,木津川の上流へと向かって夢絃峡の探索をすることにした.木津川沿いを走るこの道路は,ストレートとほどよいカーブが断続的に続く道で,ライダーであれば目を吊り上げて走ってしまう様なところだ.けれども今日は周囲の景色に注意を配りながら,トコトコとオートバイを走らせていくのだった.


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