乙女高原ファンクラブ活動ブログ

「乙女高原の自然を次の世代に!」を合言葉に2001年から活動を始めた乙女高原ファンクラブの,2011年秋からの活動記録。

笛川小の乙女高原自然観察

2019年09月06日 | 観察会

 乙女高原に一番近い小学校である笛川小学校から乙女高原自然観察指導の依頼がありました。地元の子どもたちに、乙女高原の魅力や大切さを直接伝えられる、とてもいいチャンスです。二つ返事でお引き受けすることにしました。(じつは笛川小学校は乙女高原の学習に取り組んでいることが評価されて、環境大臣より平成30年度環境保全功労者表彰を授賞しています)

とはいえ、焼山峠まではバスで行けても、その先の林道は大型車は通行できませんので、歩いて乙女高原まで行かなくてはなりません。2週間前の土曜日に下見し、林道に平行している遊歩道を歩いて、安全に乙女高原まで歩けることを確認し、乙女高原で行うプログラム案を作成しました。1週間前の土曜日には担当する三枝さん、芳賀さん、ウエハラの3人で現地で下見兼打ち合わせをしました。

さて、当日は抜けるような青空でした。こんな青空、本当に久しぶりです。途中、林道に枯れ葉などが溜まっているところがありました。大雨が降った証拠です。試しに遊歩道を歩いてみましたが、草露がいっぱい。これでは子どもたちがびしょびしょになってしまうので、歩くルートを修正することにしました。
8:20に乙女高原で三枝さん・芳賀さんと合流し、資料をお渡ししたり、打ち合わせをしたりして、芳賀さんの車で焼山峠に向かいました。

焼山峠で笛川小学校のスクールバスを待ちました。来ました来ました。5年生31人と引率の先生方、ボランティアで参加しているお母さん方です。降りて、トイレに行っている子たちを待っている間、ユウガギクから飛んできたハナアブが大人気になりました。というのも、ハナアブが手に止まった子がいて、アブがなにもしないことがわかると、ぼくもわたしもと、たくさんの子があの小さなアブに集まってきたのです。今日1日が楽しい日になる予感がしました。

 ここで簡単な始めの会をし、乙女高原に向かって歩き始めました。三枝さんにはトランシーバーを持ってもらい、連絡を取りながら歩きました。また、このトランシーバーを使うと、ウエハラの声が後ろにいる子どもたちにも聞こえます。どうしても列が長くなってしまう時には、トランシーバーが重宝するのです。芳賀さんには車で少し遅れて来てもらいました。緊急時に備えたのです。

子どもたちはしっかり事前学習をしてきたのでしょう。「あ、ノハラアザミの花だ」など、花の名前をどんどん言い当てていて、感心しました。
途中、トランシーバーを使って「階段の木のところはすべりやすいので、踏まないように」といった注意や、「右側の斜面には石がごろごろいっぱいありますね。なぜでしょう」といったインタープリテーションをしながら歩いて行きました。草露がいっぱいだったので、遊歩道はあまり使わず、アスファルト舗装の林道を中心に歩きました。

乙女高原に着いたら、小休止。リュックサックはロッジの中に置いておくように指示し、体験バッグ(バインダー)と水筒のみ持って乙女高原の探索に出かけることにしました。

 


探索は、2つの班に分けて行いました。ひとつは、マルハナバチ調べ隊のプログラムをそのまま体験してもらう「マルハナバチ班」、もうひとつは、森の観方を伝える「森と仲良くなろう班」。前者は三枝さんと芳賀さんに担当してもらい、後者はウエハラが受け持ちました。森班の方が少し人数が少なかったかな。

ここからは自分が担当した森班のレポートをします。

まず、子どもたちと一緒にロッジの前庭からすぐ前の森を見ます。
「今日は森と仲良くなる近道を教えるね。この森にはいろいろな種類の木が生えているけれど、一番多く生えている木はどれ?」これには子どもたち、すぐに反応しました。「白い木」。白い木はそれだけでも目立ちますが、確かにたくさん生えていて、他を圧倒しています。
「白い木が多そうだよね。では、実際に森の中を歩いて確かめてみます」と森の端から端まで遊歩道を歩いて確かめました。一番多い木は、やはりこの白い木です。
「一番多い木はこの白い木でいいね? 一番多いということは、この森の代表選手ってことです。この土地に一番合っているから一番多いんです。森と仲良くなる近道その一・・・は、その森に一番多く生えている木を見つけ、その木、代表選手と仲良くなることです」
「この木はシラカバというんだけど、この木と仲良くなりましょう。幹に触ってみたり、葉っぱに触ってみたり、幹にほっぺたをつけてもいいよ」
葉ッぱに触った子が「表はザラザラで、裏はツルツル。形はハート形だからハートザラツルだ」と表現しました。おもしろいですね。幹にほっぺたをつけるのを始めのうちは躊躇していましたが、ウエハラが「ひんやりして、すべすべしてて、気持ちいいんだよ」とそそのかしたら、すぐに乗ってきてくれました。
ある子が幹を触っていて、トゲ・ささくれみたいになっているところを引っ張ったら、皮が剥げてしまいました。紙みたいにも見えます。「これにラブレターを書いたら?」と提案しておきました。剥がした跡を触ってみると、手に白い粉が付きました。シラカバにシロコナというあだ名が付きました。
シラカバと十分仲よくなれたので、森の中に戻りながら、2番目に多い木を探しました。シラカバの次に多いのはミズナラということで意見が一致。シラカバと同じようにミズナラとも十分仲よくなってもらいました。ミズナラの葉は「ギザスベ」だそうです。
 「仲よくなれたかどうか、すぐにテストするからね」

テストはゲーム方式で行います。男の子チームと女の子チームに分かれてもらい、それぞれ14枚ずつの木の葉カードを渡しました。男の子にはシラカバカード、女の子にはミズナラカードです。それぞれのチームでそれぞれの木の赤ちゃんを3分間で探してもらいました。女の子たちはどんどん見つけてきますが、男の子たちはさっぱり。どんどん遠くに行ってしまうので「森の中で探してよ」と大声で指示する始末。結果、女の子はパーフェクト。男の子は0。「これかな?」とカードを付けたのはドロノキの若木でした 。
男の子たちには申し訳ないのですが、こうなることは始めから分かっていました。シラカバの森の中でシラカバの赤ちゃんは見つかりませんが、ミズナラの赤ちゃんは見つかるのです。つまり、今後、シラカバの森は続きません。ミズナラの森に換わっていくのです。
森と仲よくなる近道の第二は、「その森にたくさんある木」の赤ちゃんが見つかるかどうか観察することです。見つかれば、その木の森は続きますし、見つからなかったら、その木の森は続かないということです。自然観察っておもしろいですね、今の自然を観察すれば、未来の自然の姿が見えてくるんですよ。

「シラカバの森は続かないことはわかりましたが、かといってこのシラカバだって、始めは赤ちゃんでした。では、シラカバの赤ちゃんはどこにいるのでしょうか? 探しながら歩いてくださいね」
そう言って、その場から出発しました。

森のコースの途中にウラジロモミの若木がいっぱいあるところがありますよね。そこで止まりました。「この木、知ってる?」「松みたいだけど」「いい線だね。この木は12月によく使われるんだけど・・・」「クリスマス?」「モミの木?」「そう、モミの木。葉っぱを裏返してごらん。裏が白いでしょ。だから、ウラジロモミ。ここにはウラジロモミの子どもがいっぱいいるよね。では、この木たちのお母さんはどこにいるでしょうか」 ウラジロモミの大木を見つけてもらいました。

ウラジロモミがある森にウラジロモミの子どもがいっぱいいるということは、ウラジロモミの森は続くということです。しかも、じつは昨年の今頃の台風の強風で、お母さんの木の上が折れてしまい、日当たりがよくなってしまいました。
https://blog.goo.ne.jp/otomefcact/m/201810
「モミの子どもたちは暗い中でも我慢して少しずつ大きくなってきたけれど、こんなふうにチャンスに恵まれると、大きく生長していくんだよ。みんなはちょうどその様子を見ているところです」『森と仲よくなる近道』の応用です。

坂道を登って、ブナじいさんのところまで来ました。ここで、「なんでこの木だけ伐られないで、残されたのか?」の話や、草刈りボランティアの時、「ブナじいさんの根元に落ち葉のふとんをかけてあげる・キッズボランティア」をしている話をして、戻ってきました。
今年は雨が多いせいか、たくさんのキノコが見つかり、子どもたちは興味津々でした。もっとも、ふた言目には「これ毒?」「これ食べられる?」でしたが・・・。

ゲレンデのてっぺんでは、今から57年前の写真(スキー場の写真)と今の様子を見比べ、今は森になっているロッジ周辺も昔はゲレンデだったことを確認しました。草刈りしないと、森に代わっていくのです。

草原の中を下りながらシラカバの赤ちゃんを探しました。そしたら、草原の中に見つかりました。そうなんです。シラカバは生長するために多くの日光を必要とするので、森の中では大きくなれず、草原の中で大きくなっていくのです。「だから、草刈りして、木のあかちゃんを刈らないと、草原が森になっちゃうわけです」「今、シラカバの森になっているところも、シラカバがまだ赤ちゃんだったころは草原だったわけ」という説明をしました。今の自然を観察しながら、過去の様子が見えてくる・・・やっぱり自然観察ってすごいです。

「森班」といいながらも、途中、たくさんのマルハナバチとも出会うことができました。
「マルハナバチ班」と合流し、ロッジの庭でお弁当を食べました。そして、帰路につきました。往路の変更で観察できなかった谷地坊主や炭焼きがまを見ながら。途中、足を痛めた子がいたので、少々遅れましたが、無事、全員が焼山峠に到着し、ここからスクールバスで帰っていきました。

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