■ 大阪も、米国同様の教育崩壊へ
一斉学力テストの成績が上がらない学校が次々と閉鎖あるいは「ターンアラウンド」(事業再生=校長をはじめ教職員の入れ替え)になる。
決定を行う学校区の集会に、親や生徒、地域の住民が押し寄せ、教員たちとスクラムを組んで「学校を守れ、子どもたちの教育を守れ」と訴える。
ニューヨーク、シカゴをはじめ、多くの学校区でこの光景が繰り返されている。
まさに「スクール・ウォーズ」である。
2001年にブッシュ政権の下制定され、02年1月から施行されたいわゆる「落ちこぼれゼロ法」とその下での米国「教育改革」の現実は、大阪で橋下市長・維新の会がゴリ押しする「改革」の行き着く先を暗示している。
■ 学テによる教員評価と評価の公開
2月24日、ニューヨーク市教育委員会は、同市の公立小中学校の教員7万5千人のうち、07年度から10年度までの期間に4年生から8年生の英語と数学を担当した教員1万8千人の評価を公表した。州の一斉テストでの生徒の成績が、前年と比べて上がったかどうかを基準にして行われたものである。
各年度について、「普通」(50%)、「平均以上」「平均以下」(各20%)、「高」「低」(各5%)の評価が割り当てられ、個々の教員には年度ごとに通知されている。
この評価制度は、ブルームバーグ市長が、140の市立校における教育の改善のための試験的プログラムとして、07年度に導入した。
そもそも、生徒の学力テストの成績をもとに教員の能力を評価するという方法が、荒唐無稽であり、根拠が乏しい。
客観性を装うための複雑な計算式が考案され、コンピューターによって処理されるが、得られた評価結果には大きな誤差が含まれ、明らかな人為的ミスも報告されている(担任していない生徒の成績が評価に含まれている等)。
しかも、基準となる一斉テストの内容が、適切かどうかも疑問視されている。
「レイバーノーツ」誌でテレサ・モラン(同誌編集委員)さんは、「デタラメな評価はスクールウォーズのもうーつの手段だ」と指摘している。(ウェブ版、3月20日付)。
評価データの公表は、低い評価を与えられた教員を、親や地域からの非難にさらし、熟練の教員(大部分は組合員)の自尊心を奪い、やる気を失わせ、離職に追い込むことを目的としている。
代わりに若い、非組合員の、臨時教員が送り込まれる。その多くは在職期間が短い(3~4年)ことが想定されている。
もともと教職志願でないエリート学生が、希望する就職先が見つかるまでの間、低賃金を厭わずやってくるケースも多い。
すでに評価結果に基づく任用期間更新の停止が増加しており、06年には99%の教員が任用期間を更新されていたが、11年には更新が認められたのは58%になっている。
同様の教員評価を導入しているロサンゼルスでは、2010年に「ロサンゼルス・タイムズ」紙が教員評価データを公表し、1人の教員を自死に追いやっている。
■ 複雑な市民の反応
キニピアック大学世論調査研究所が、3月14日にニューヨーク市の有権者を対象に実施した世論調査は、非常に興味深い結果を示している。
▽教員評価データの開示に、「賛成」58%、「反対」38%、「どちらでもない」5%。
▽「評価データを信頼できる」20%、「データに欠陥がある」46%、「わからない」34%
▽評価を教員の賃金に反映することに、「賛成」44%、「反対」40%
▽評価の低い教員を解雇することに「賛成」33%、「反対」55%
▽ニューヨーク市の公立学校の生徒の利益を守る上で、「教員組合を信頼している」50%、「ブルームバーグ市長を信頼している」38%。
一見支離滅裂な反応だが、評価データ開示に賛成している親の多くは、自分の子どもの学校や先生の「客観的な」評価を知りたいと考えているだけであり、必ずしも共和党右派の労働組合攻撃に同調しているわけではなく、むしろ組合側からの働きかけの余地が大きいと考えられる。
(続)
『労働情報』(838・9号 2012/5/1&15)
喜多幡佳秀●APWSL日本
一斉学力テストの成績が上がらない学校が次々と閉鎖あるいは「ターンアラウンド」(事業再生=校長をはじめ教職員の入れ替え)になる。
決定を行う学校区の集会に、親や生徒、地域の住民が押し寄せ、教員たちとスクラムを組んで「学校を守れ、子どもたちの教育を守れ」と訴える。
ニューヨーク、シカゴをはじめ、多くの学校区でこの光景が繰り返されている。
まさに「スクール・ウォーズ」である。
2001年にブッシュ政権の下制定され、02年1月から施行されたいわゆる「落ちこぼれゼロ法」とその下での米国「教育改革」の現実は、大阪で橋下市長・維新の会がゴリ押しする「改革」の行き着く先を暗示している。
■ 学テによる教員評価と評価の公開
2月24日、ニューヨーク市教育委員会は、同市の公立小中学校の教員7万5千人のうち、07年度から10年度までの期間に4年生から8年生の英語と数学を担当した教員1万8千人の評価を公表した。州の一斉テストでの生徒の成績が、前年と比べて上がったかどうかを基準にして行われたものである。
各年度について、「普通」(50%)、「平均以上」「平均以下」(各20%)、「高」「低」(各5%)の評価が割り当てられ、個々の教員には年度ごとに通知されている。
この評価制度は、ブルームバーグ市長が、140の市立校における教育の改善のための試験的プログラムとして、07年度に導入した。
そもそも、生徒の学力テストの成績をもとに教員の能力を評価するという方法が、荒唐無稽であり、根拠が乏しい。
客観性を装うための複雑な計算式が考案され、コンピューターによって処理されるが、得られた評価結果には大きな誤差が含まれ、明らかな人為的ミスも報告されている(担任していない生徒の成績が評価に含まれている等)。
しかも、基準となる一斉テストの内容が、適切かどうかも疑問視されている。
「レイバーノーツ」誌でテレサ・モラン(同誌編集委員)さんは、「デタラメな評価はスクールウォーズのもうーつの手段だ」と指摘している。(ウェブ版、3月20日付)。
評価データの公表は、低い評価を与えられた教員を、親や地域からの非難にさらし、熟練の教員(大部分は組合員)の自尊心を奪い、やる気を失わせ、離職に追い込むことを目的としている。
代わりに若い、非組合員の、臨時教員が送り込まれる。その多くは在職期間が短い(3~4年)ことが想定されている。
もともと教職志願でないエリート学生が、希望する就職先が見つかるまでの間、低賃金を厭わずやってくるケースも多い。
すでに評価結果に基づく任用期間更新の停止が増加しており、06年には99%の教員が任用期間を更新されていたが、11年には更新が認められたのは58%になっている。
同様の教員評価を導入しているロサンゼルスでは、2010年に「ロサンゼルス・タイムズ」紙が教員評価データを公表し、1人の教員を自死に追いやっている。
■ 複雑な市民の反応
キニピアック大学世論調査研究所が、3月14日にニューヨーク市の有権者を対象に実施した世論調査は、非常に興味深い結果を示している。
▽教員評価データの開示に、「賛成」58%、「反対」38%、「どちらでもない」5%。
▽「評価データを信頼できる」20%、「データに欠陥がある」46%、「わからない」34%
▽評価を教員の賃金に反映することに、「賛成」44%、「反対」40%
▽評価の低い教員を解雇することに「賛成」33%、「反対」55%
▽ニューヨーク市の公立学校の生徒の利益を守る上で、「教員組合を信頼している」50%、「ブルームバーグ市長を信頼している」38%。
一見支離滅裂な反応だが、評価データ開示に賛成している親の多くは、自分の子どもの学校や先生の「客観的な」評価を知りたいと考えているだけであり、必ずしも共和党右派の労働組合攻撃に同調しているわけではなく、むしろ組合側からの働きかけの余地が大きいと考えられる。
(続)
『労働情報』(838・9号 2012/5/1&15)
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