■ カリフォルニア州立大学が新入生の受け入れを停止
公立の大学をめぐっても、予算の削減に伴って授業料の値上げや定員削減などが進められ、全国で学生・教職員の激しい抗議行動が展開されている。
カリフォルニア州立大学(CSU、全州の23のキャンパスから成る)は3月20日、大部分のキャンパスで13年春の入学募集を凍結し、12年秋の入学志望者に対する入学許可も保留すると発表した。
同大学は11年度に州からの支出が7億5千万ドル削減され、11月の大統領・上下両院議員選挙と同時に実施される州の住民投票で増税が支持されない場合には、次年度にさらに2億ドルの削減が予定されている。
CSUは通常であれば、春に7万人の願書を受け付け、1万6千人が入学し、秋には約70万人が出願し、9万人が入学するが、次年度については州からの予算の見通しが立つまで定員を決定できない状況になっている。
予想される予算削減が実施された場合、募集人員が約3%削減される可能性がある。
CSUでは6年連続で授業料が値上げされ、02年当時の3倍になっている。
12年秋には9%の値上げが発表されている。それによって学費は平均7千17ドルになる(その一方で学長の給与は大幅に引き上げられてきた)。
同州のサンタモニカ・カレッジ(2年制のコミュニティー・カレッジ)は新たな収入源として英語と数学の補習を1単位200ドルで提供する計画を決定した。4月初めにはこの計画に抗議する学生たちのデモに警官隊が催涙ガスを浴びせ、数人を逮捕した。
カリフォルニア教職員協会(CFA)は、このような営利目的の授業の切り売りは、大学の目的から逸脱していると非難している。
「Zネット」4月7日付のノーム・チョムスキー氏のレポートは、公教育への攻撃の背景にある公教育に関する考え方の変化を分析している。
「国民全体が高等教育から利益を得ているという考え方から、高等教育の恩恵を受けているのはそこで教育を受けている人たちであり、その人たちが費用を負担するべきであるという考え方にシフトしてきている」(ニューヨーク州立大学機構の理事のロナルド・G・エーレンベルグ氏の発言の引用)。
チョムスキー氏によると、「大衆的な公教育はアメリカ社会の最も大きな成果の一つである。それは多くの側面を持っている。そのーつは、独立農民を賃労働者としての生活に適合させることだった」。
1975年にトリラテラル委員会(日米欧の三極の民間リーダーによる政策研究機関)が「民主主義があふれすぎている。その責任の一端は若者を教育する機関の失敗にある」という警告を発し、それを契機に公教育に対する攻撃が強まった。
その重要な手段が民営化と授業料引き上げである(1980年当時と比べて6倍に)。
その結果、学生たちは長期にわたって債務に囚われ、民間企業に従属するようになった。 カリキュラムも企業のニーズに合わせて再編される。
■ 「教育改革」の行き着く先
このような「教育改革」の行き着く先は、少数のエリートの育成のための教育と、低賃金の従順な労働力を育成するための教育の二極化、あるいは「教育アパルトヘイト」である。
そのべースには、経済を牽引するのは競争に勝ち抜いたエリートたちであり、敗者のために税金を使うのは無駄であるという「社会ダーウィニズム(適者生存)」の考え方がある。
橋下市長と維新の会の下で進められようとしている君が代・日の丸強制や教員評価の導入、学校統廃合などの動きは、そのような方向に向けた前哨戦にすぎない。決して大阪に特殊な現象ではないし、嵐が過ぎるのを待っていれば治まるものものでもない。
(完)
『労働情報』(838・9号 2012/5/1&15)
喜多幡佳秀●APWSL日本
公立の大学をめぐっても、予算の削減に伴って授業料の値上げや定員削減などが進められ、全国で学生・教職員の激しい抗議行動が展開されている。
カリフォルニア州立大学(CSU、全州の23のキャンパスから成る)は3月20日、大部分のキャンパスで13年春の入学募集を凍結し、12年秋の入学志望者に対する入学許可も保留すると発表した。
同大学は11年度に州からの支出が7億5千万ドル削減され、11月の大統領・上下両院議員選挙と同時に実施される州の住民投票で増税が支持されない場合には、次年度にさらに2億ドルの削減が予定されている。
CSUは通常であれば、春に7万人の願書を受け付け、1万6千人が入学し、秋には約70万人が出願し、9万人が入学するが、次年度については州からの予算の見通しが立つまで定員を決定できない状況になっている。
予想される予算削減が実施された場合、募集人員が約3%削減される可能性がある。
CSUでは6年連続で授業料が値上げされ、02年当時の3倍になっている。
12年秋には9%の値上げが発表されている。それによって学費は平均7千17ドルになる(その一方で学長の給与は大幅に引き上げられてきた)。
同州のサンタモニカ・カレッジ(2年制のコミュニティー・カレッジ)は新たな収入源として英語と数学の補習を1単位200ドルで提供する計画を決定した。4月初めにはこの計画に抗議する学生たちのデモに警官隊が催涙ガスを浴びせ、数人を逮捕した。
カリフォルニア教職員協会(CFA)は、このような営利目的の授業の切り売りは、大学の目的から逸脱していると非難している。
「Zネット」4月7日付のノーム・チョムスキー氏のレポートは、公教育への攻撃の背景にある公教育に関する考え方の変化を分析している。
「国民全体が高等教育から利益を得ているという考え方から、高等教育の恩恵を受けているのはそこで教育を受けている人たちであり、その人たちが費用を負担するべきであるという考え方にシフトしてきている」(ニューヨーク州立大学機構の理事のロナルド・G・エーレンベルグ氏の発言の引用)。
チョムスキー氏によると、「大衆的な公教育はアメリカ社会の最も大きな成果の一つである。それは多くの側面を持っている。そのーつは、独立農民を賃労働者としての生活に適合させることだった」。
1975年にトリラテラル委員会(日米欧の三極の民間リーダーによる政策研究機関)が「民主主義があふれすぎている。その責任の一端は若者を教育する機関の失敗にある」という警告を発し、それを契機に公教育に対する攻撃が強まった。
その重要な手段が民営化と授業料引き上げである(1980年当時と比べて6倍に)。
その結果、学生たちは長期にわたって債務に囚われ、民間企業に従属するようになった。 カリキュラムも企業のニーズに合わせて再編される。
■ 「教育改革」の行き着く先
このような「教育改革」の行き着く先は、少数のエリートの育成のための教育と、低賃金の従順な労働力を育成するための教育の二極化、あるいは「教育アパルトヘイト」である。
そのべースには、経済を牽引するのは競争に勝ち抜いたエリートたちであり、敗者のために税金を使うのは無駄であるという「社会ダーウィニズム(適者生存)」の考え方がある。
橋下市長と維新の会の下で進められようとしている君が代・日の丸強制や教員評価の導入、学校統廃合などの動きは、そのような方向に向けた前哨戦にすぎない。決して大阪に特殊な現象ではないし、嵐が過ぎるのを待っていれば治まるものものでもない。
(完)
『労働情報』(838・9号 2012/5/1&15)
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