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※ 新刊『国より先に、やりました 「5%改革」で暮らしがよくなる』ご紹介
☆ 『国より先に、やりました』世田谷区長 保坂展人さん著
(東京新聞出版 1,540円 4月30日発売)
『国より先に、やりました』の著者、保坂展人さんは東京都世田谷区長。2011年の東日本大震災直後の統一自治体選挙で区長に当選して4期目。若いころは管理教育に異議を唱える教育ジャーナリスト、その後96年の総選挙に社民党から立候補して衆院議員を3期務めた。
その保坂さんが世田谷区長としての思いと実績、国の指示待ちではなく、職員や市民と共に行ってきた実践報告の書である。
☆ 地域主権を掲げ自治体から作る
更に実践を世田谷区で終わらせず、東京多摩地区の首長や議員などと「ローカルイニシアチブネットワーク」(本紙5月1日付1面参照)を立ち上げ、地域主権を掲げて参加型民主主義を地域、自治体から作ろうとする政治改革の書でもある。
サブタイトルにある「5%改革」は、保坂さんが区長に就任した際に幹部職員に訓示したスローガンで、以来、その歩みを止めない。経歴や、都市計画道路反対団体の出馬要請を受けて当選した新区長に、幹部職員は身構えたに違いない。
しかし、保坂さんは訓示で、仕事の95%はこれまで通りしっかりやり、残り5%は大胆に変えて欲しいと訴えた。1年目は5%でも2年目は残り95%の5%を改革。8年で3割以上、12年で50%近くとなる。着実に積み上げる手法だ。
☆ 電気の地産地消認知症希望条例
「5%改革」のひとつに太陽光発電を普及して電気の地産地消を進めるとともに、国の制度のない中、地域間連携で福島県南相馬市の太陽光発電による電気を直接買う(産直)システム作りがある。
また、20年に制定した「認知症とともに生きる希望条例」もそのひとつだ。認知症に対する価値観を変えることを重視し、家族も含めた当事者の意見を尊重した。
認知症カフェを運営し、差別や偏見を変えていこうとする区民や専門家の協力も得て、「何もできなくなる」ということではなく、「できること」に着目して地域で尊厳をもって暮らせる地域・社会を目的とした。この趣旨は3年後の国の「共生社会を推進するための認知症基本法」にも反映したのではないか。
☆ 仲間意識作った参加型民主主義
参加型民主主義とは何かを考えさせたのは、区内の下北沢駅前再開発と都市計画道路(都道)の取組みだ。
下北沢問題で保坂さんは、再開発や都市計画道路への賛成・反対を越え、街の未来を考える立場で小田急電鉄の高架事業を地下万式に変え、線路跡地を公園化する、人間優先のビジョンを発表した。
2期目の当選後、線路跡地をどのように下北沢らしく活用していくかという150人規模の円卓会議と、20~50人のテーマを絞ったワークショップを開き、議論を重ねた。こうした中で、当初対立していた人たちが良い街をつくろうとする仲間意識、信頼関係ができてきたと紹介する。
都市計画道路も10年以内に着手する「優先整備路線」から外すことができたという。
☆ 公教育の改善へ限界に挑戦する
さらに注目されるのは、教育実践。教育ジャーナリストだった保坂区長だけに公教育の質の向上を課題とし、オランダの教育実践(子どもたちが自ら考え、行動することを重視する、子ども一人ひとりを尊重する教育)に学び、公教育の限界に挑戦した。
通称「フリースクール法案」といわれた「教育機会均等法」が16年に成立し、世田谷区は19年に公設民営のフリースクール「ほっとスペース」を作り、運営は区内で長年フリースクールを運営してきたNPO法人に任せた。
50人規模で、現在区内に3カ所できている。22年には中学校の分校という形で少人数制の不登校特例校を開設した。(長南)
『週刊新社会』(2024年5月22日)
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