パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

OECDが指摘する格差社会

2006年07月28日 | ノンジャンル
OECDも心配?格差社会ニッポン
  親の貧困 子を直撃
  「下流」固定、虐待の温床にも


 「格差?私らには二重だよ」。青森県労働組合総連合の西崎昭吉事務局長は報告書に深くうなずく。二重の意味は大手と中小企業に加え、都市と地方だ。
 「景気が回復しているというが、どこの話という感じだ。県内では従業員数百人規模の企業もまだつぶれているし、今春の賃上げは昨年より厳しかった。現実に格差は拡大する一方だ」

 経済審査報告書は先進国など三十カ国が加盟するOECDがほぼ毎年、メンバー国の経済状況や問題点の分析をまとめた「外に映ったその国の経済像」。
 今回の対日版では、二〇〇〇年の「相対的貧困層」(税などを除いた可処分所得が中央値の半分に満たないケース)の割合が13・5%と、米国に次いで二番目という現状を紹介。全六章のうち、一章を格差社会に割き、原因として非正社員の増大などを挙げた。
 さらに対策として、非正社員への社会保険の適用拡大、低所得世帯への財政支援の強化などを提案している。

 この報告書について、神戸大学元教授で「暮らしと経済研究室」を主宰する山家悠紀夫氏は「OECDには日本の官僚も派遣されており、日本政府の見解とまるで異なった報告書の指摘に驚いている。OECDの中でも、日本を含めた米英的な規制緩和路線とは対照的に、社会の安定と景気回復を同時に望む北欧や欧州大陸的な考え方もあり、彼らの視点が反映されたのかもしれない」と語る。

 格差社会拡大の指摘については「ジニ係数(所得分配の不平等さを示す指標)や国税庁の発表データをみてもその通りだ。人数もその割合も増している。小泉政権は『痛みの伴う』構造改革を掲げたが、昨今の企業の景気回復は輸出によるもの。構造改革が景気にプラスになったというわけではなく、家計の取り分の減少が企業の取り分になったと理解できる」とみる。

 これに対し、嘉悦大学の佐野陽子名誉学長(労働経済学)は「OECDの指摘には少し意外感がある」と話す。
 「格差といっても、資産所得などが計算されているのか。フリーター、ニートでも親が食べさせているケースが多く、それをそのまま格差と評価していいものか」と疑問を挟む。「格差そのものが悪いというより、格差の固定化が問題。格差の間に流動性があるのか否か、精査してみる必要があるだろう」

 一方、気になるのはOECDのデータが小泉政権発足前の二〇〇〇年である点だ。東京学芸大の山田昌弘教授(家族社会学)は「格差拡大は一九九七年の金融危機から三年間で広まった。二〇〇〇年は『底抜けが止まった』時点なので、その後は拡大していない」と説明するが、山家氏は「生活保護の件数は九五年に八十八万人だったのが、現在は約百五十万人だ」と指摘し、拡大したとみている。

 ただ、格差社会を深刻にみている点では山田氏も同じだ。「この十年間で顕在化した最大の問題は小さな子を持つ親の貧困や経済的不安定さだ。児童虐待の背景にも、周りとの経済落差がしばしば隠れている。父親に貧しくても安定した収入があり、周囲が平均して貧しかった一昔前は、子どもたちも希望を持てたが、現在は違う」と説明する。
 OECDの報告書も低所得世帯の教育問題を指摘しているが、山田氏も緊急に必要な施策をこう説く。「不安定な経済状態で子どもを育てている親の就職支援。これが急務だ」

(『東京新聞』2006/7/21「ニュースの追跡・話題の発掘」)

コメント (1)    この記事についてブログを書く
« 処分撤回を求めて(2) | トップ | 長崎の語り部 »
最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (青空)
2006-09-04 23:40:47
虐待の問題は、確実に社会格差とつながりつつあります。そうした兆候を示すデータや本が出始めています。
返信する

コメントを投稿

ノンジャンル」カテゴリの最新記事