goo blog サービス終了のお知らせ 

パワー・トゥ・ザ・ピープル!!アーカイブ

東京都の元「藤田先生を応援する会」有志によるブログ(2004年11月~2022年6月)のアーカイブ+αです。

社会権規約カウンターレポート 東京都教員の労働権(6条・7条)侵害

2012年05月19日 | 人権
 ◎ 東京都の教育現場における国旗国歌強制による教育権、労働権の侵害<後>
 3、教員の公正かつ良好な労働条件を享受する権利の侵害(7条違反)
 教育上の信念から起立斉唱しなかった教員に対して、ただ「職務命令」に従わなかったという形式的理由で、懲戒処分がなされ、引き続いて次のような不公正な待遇がなされている。
 (1) 経済的不利益から仕事の剥奪へ
 1回目の不服従に対する戒告処分は、昇級延伸3ヶ月・勤勉手当10%カットが伴う。その後回数を重ねるごとに処分量定は、減給10分の1・1ヶ月、同6ヶ月、停職(無給)1ヶ月、同3ヶ月、同6ヶ月と累積加重している。停職になるとその期間は、教壇に立つことを許されず、生徒との接触が断たれる。
 (2) 昇給の機会を奪われる
 2000年度から導入された「業績評価制度」は、待遇と連動するものであり、教職員組合との合意なしに導入された点で、そもそもILO・ユネスコ勧告64項に違反している制度である。この制度の下で不服従者は、どんなに業績を上げてもABCDのCDにしか位置づけられず、昇給が遅れたり、ボーナスカットされるなど不利益を蒙る。
 (3) 昇進の機会を奪われる
 2009年から一般教諭が主任教諭と教諭に2分化されたが、不服従教諭はそれだけの理由で主任教諭に合格しない。また合格していても、その年度の卒業式に不起立だったため合格を取り消された例もある。生涯賃金で1600万円の格差が生じる。
 (4) 仕事の配置における差別
 クラス担任は、教員なら誰でもやる基本的でかつやりがいのある仕事分担である。ところが、校長は毎年、「起立斉唱」の命令に従うことを要求し、約束しないと希望しても担任をやらせてくれない。その結果、7年も担任から遠ざけられている人もいる。担任になっても入学式で不服従行動を取ったら2年に進級する時に担任を降ろされた例や、担任に決まっていたのに卒業式で不服従だったため配置換えになってしまった例もある。
 (5) 病休者の増加
 東京都の教員の病気休職者数が、2003年以降急増しており、2009年(786人)には2002年(299人)の2.6倍に達した。そのうち約7割(532人)が精神疾患でその増え方は3倍を超える。同じ時期、全国の教員の病休者の増え方は1.6倍、精神疾患は2倍であり、東京都の増え方は傑出している。また、東京都ではここ数年定年前早期退職者も増える傾向にあり、被処分者の中に大変多くなっている。これらはいずれも、2003年以降教育行政の急変により東京で働く教員の労働環境が悪化していることの現れである。
 4,教員の労働権の侵害(6条違反)
 宗教・政治的意見などの違いを理由とする職場における差別的待遇は、基本的な働く権利の不当な侵害にも及んでいる。
 (1) 定年退職後の継続雇用制度からの排除
 東京都には、60歳定年制度の導入の代償措置として、「継続雇用」を前提とした再雇用制度を1985年から導入している。
 しかし、再雇用教員は、たった1回の不起立で雇い止めされ職を失った。
 また、再雇用に合格していた教員も、たった1回の不起立で合格を取り消され、職を失ってしまった。
 また、過去5年間に1回でも不起立した者は、必ず不合格で継続雇用を拒否され、職を与えられない。
 その数は60名を超えている。日本政府は「第2回報告書」(2009)において、パラグラフ50に対する回答として、年金支給年齢の引き上げに伴い「①定年の引上げ、継続雇用制度の導入等の義務付けによる65歳までの安定した雇用の確保…を盛り込んだ『改正高年齢者雇用安定法』を制定した」(p20)と述べているが、東京都の施策はこの精神を踏みにじるものである
 (2) 職業選択の自由の侵害
 教員になりたい者は、「日の丸・君が代」に敬意を表することが条件とされる。キリスト教信仰を持つある学生が教員採用試験に合格し配置校も決まっていたにも関わらず、入学式前の打合せで校長に起立できないことを告白したところ、採用を辞退させられる事例も起こっている。
 現職の教員も、毎年卒入学式のたびに「国家忠誠度」をテストされており、処分が累積すると職を失いかねない状況まで追い詰められている。
 5,おわりに
 不利益を蒙った教員を中心にこれまで21件の裁判が提訴され、2012年1月までに10件の最高裁判決が出たが、教員に対する懲戒処分の一部を裁量権の逸脱とする判決は出たものの、起立斉唱を命ずる職務命令は憲法19条(思想・良心の自由)違反ではないと判断され、「教育への権利」については判断がなされていない。
 締約国は、「教育への権利」を保障する義務を負っている。
 具体的義務として、『A規約一般的意見第13』のパラグラフ49に「すべての段階の教育制度のカリキュラムが第13条1項にあげられた目的を指向することを確保するよう求められる」とある。
 同パラグラフ59には、規約13条違反の事例として、「教育の分野において、いずれかの禁止事由に基づいて個人又は集団を差別する立法を導入すること、又はそのような立法を廃止しないこと」、「第13条1項に掲げられた教育目標に合致しないカリキュラムを用いること」、「職員及び生徒の学問の自由を否定すること」などがあげられている。
 これらに照らすなら、子どもの学習権や人格形成の自由、思想良心の自由を保障して、侵害行為があればそれを排除することこそ、究極的な教育目標達成のための教員の本来的「職務」であって、起立斉唱できない子どもに寄り添う教員の行為もまた職責上必要かつ正当な行為であり、これらが処分に値するものではないことは明らかである。
 従って、卒業式における教員の本来的「職務」の遂行を、「カリキュラム」(学習指導要領)を名目に制約している現行の「10・23通達」は、実質的に生徒の「人格の完成を指向する」教育の目的を逸脱しているものであり、直ちに撤回されなければならない。
 以上の事実に基づき、学校教育の場にける教員、生徒の思想良心の自由を、国際水準レベルで保障するために、下記のことを要望する。
1、「人格の完成」と「基本的自由の尊重」を目指す13条の「教育の目的」に照らして、生徒の思想・良心・宗教の自由を侵害する国旗国歌への敬意表明の強制を公権力として行わないよう勧告してください。同様に、生徒との人格的接触を通して思想形成に影響を与える教員に対し懲戒処分をもって国旗国歌への敬意表明の強制を行わないよう勧告して下さい。
2、卒業式・入学式等の学校行事の運営に当たっては、生徒や生徒会を決定過程の重要なメンバーとして、意見表明や参加の機会を与え、十分な説明と協議を行って生徒の納得を得られるように努力し、学校側の意向を一方的上意下達で強制しないように勧告してください。
3、国旗国歌に対して敬意を表さなかった教員に対する懲戒処分の取り消しと、それに伴う諸々の労働条件上の不平等な取り扱いを改めるよう勧告して下さい。

 ※<前>へのリンク(→クリック)
コメント    この記事についてブログを書く
« 社会権規約カウンターレポー... | トップ | 仏大統領選:超高額所得者に... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

人権」カテゴリの最新記事