《「子どもと教科書全国ネット21ニュース」から》
★ 国語
~道しるべだらけの国語の教科書
★ 子どもたちに学び方を示す道しるべ
小学校国語教科書の出版者は、教育出版、光村図書、東京書籍の3社で、学校図書が撤退しました。
3社の5年生の教科書の最初の部分を比べてみました。3社ともに、目次のあとに、数ページにわたって、その教科書で学ぶ教材文等を「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」にあてはめて、どの教材でどのような力をつけるのかが、一目でわかるようにしています。
教育出版は「言葉で伝えあおう」として、「話す・聞く」の導入的な学習「見つけたよ!」に入ります。カードに書かれていることを友達に質問することで深め合う、ゲーム的な内容です。「読む」導入として「声に出して読もう」で詩を2編載せています。
光村図書は、上記の学ぶ内容の前に、学び方について説明するページをおいています。「どうやって学んでいくのかな」と題し、「学習や生活の中で」(見とおしをもつ・問いをもつ)→「話す・聞く・書く・読む」→「ふりかえる」(学習や生活に生かす)というサイクルを示します。
学ぶ内容の後に「言葉のじゅんび運動」として、「話す・聞く」に関わるゲーム的な導入教材と、詩の音読、「楽しく書こう」として「名前をつかって自己紹介」を入れています。
東京書籍は、教材を示した後に、「国語の学習のすすめかた」として、次のサイクルを示します。
「思い出そう」(これまでに学んだ「言葉の力」を思い出そう)
→「見とおす」
→「取り組む」
→「振り返る」
→「生かそう」(ほかの教科、毎日の生活の中で)
その後、手書きの国語ノートの作り方とデジタルノートの作り方を載せています。
「話すこと・聞くこと」の入門的な学習活動として、「集めよう、よいところ」を入れています。あるテーマについて話し合う活動で、話の進め方まで例示しています。
教育出版は、他社に比べると説明よりも活動の方が多くなっていますが、いずれにしても、最初の部分から、どの教材でどんなことを学び、どのような国語の力を付けていくのかを、子どもたち自身に理解させようという作りになっています。
また、サイクルの最後に「生かす」があり“学んだことは何かに生かされるべきだとしています。わかって嬉しい、みんなで物語が読み深められて楽しいだけにとどまれない重い課題となっています。
★ 学習の「てびき」に縛られる学習活動
教材文等の後の「学習」の部分で、1で示したサイクルに合わせるように学習活動が組み込まれます。
教育出版も、「見通しをもとう」→「たしかめよう」→「くわしく読もう」→「まとめよう」→「つたえあおう」のサイクルで学習を行います。
光村2年に「お手紙」があります。どうせ自分にはお手紙をくれる人なんかいないとひねくれた気持ちのがまくんに、かえるくんがお手紙を書くお話です。
この「がくしゅう」の「まとめよう」では、子どもたちが登場人物と自分をくらべ、がまくん、またはかえるくんにお手紙を書く学習をします。
心の広いかえるくんに救われるがまくんですが、このお話を読んだ後、お手紙を書く活動をしなくても、子どもたちががまくんやかえるくんに言ってやりたいことを自由に話し合う授業で、子どもたちは物語を読む楽しさを十分に味わえるのではないでしょうか。
しかし、本来は授業者が子どもたちを見て決めるべきめあてが教科書に示され、その達成を目指そうとするため、学習活動にも縛りがかけられます。
「主体的、対話的で深い学び」の実現を目指した話し合い活動にも、やりにくさを感じる内容があります。
★ 本音ではなく実用文を書く練習重視
「書くこと」では、実用文を書かせることに重きが置かれています。
パンフレットや案内文など、思いを書くよりも、伝わることを重視した活動が増えています。
★ 主体的な読みの力をつけるために
子どもたちに言葉の力をつけるためには、思ったことをのびのびと発言し、書けるような学習活動を、教員が子どもたちの実態や願いに基づいて組むことが大切です。
言語操作や技術を重視するのではなく、心を揺さぶられたり、目を開かれたりするような文章に出会える教科書を手渡したいものです。
『子どもと教科書全国ネット21ニュース 151号』(2023.8)
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