たんぽぽ舎です。【TMM:No3794】「メディア改革」連載第19回
◆ 自公野合政権・税金私物化の徹底追及を
メディアは「参加者名簿は個人情報」の詭弁を許すな
安倍晋三・自公野合政権が何度目かの「大ピンチ」を迎えている。
森友学園安倍晋三記念小学校疑獄事件が発覚した2017年2月、「私自身、妻、事務所のいずれかが関わっていれば首相、国会議員を辞める」とまで表明した安倍氏は、その翌日に問題化した加計学園岡山理大獣医学部疑獄もあって政権崩壊の危機を迎えたが、何とかごまかして権力の座を維持してきた。
11月20日は、首相在職日数が「憲政史上最長」になるらしい。
しかし、cronyism(縁故主義)で政治を私物化してきた安倍政治を止めるチャンスが来た。
共産党の田村智子参院議員が11月8日の参院予算委員会で追及した「桜を見る会」問題は公選法、政治資金制法に違反する疑いがあり、首相の資質が問われる事態になった。
もともとは日本共産党のしんぶん赤旗日曜版が10月13日付で、安倍氏の後援会関係者が数百人規模で招待されている疑惑を大きく報道していた。
野党共同追及チームも発足し、キシャクラブメディアも調査報道を開始し、テレビの情報番組も取り上げた。
安倍官邸らしい荒っぽい手法だが、菅義偉官房長官は13日の定例会見で突然、来年の「桜を見る会」を中止すると発表した。
長官は「招待基準の明確化やプロセスの透明化を検討し、全般的な見直しを行う」と表明したが、これは、安倍政権下で開かれた「桜を見る会」の運営方法に大きな問題があったことを認めたからに違いない。
安倍氏は同日夕、記者の囲み取材に「私自身の判断で中止を決めた」とだけ語って、「説明はないのですか」などという記者の質問に答えず逃亡した。1952年から続いてきた伝統ある会を中止する責任は重い。
安倍首相の鮨友・田崎史郎氏は14日朝のテレビ朝日で、「安倍首相の素早い対応」を持ち上げ、「法律に違反していない」「後援会のスタッフがやったことで首相は関与していない」などと火消しに懸命だったが、首相に説明責任のあることは認めた。
確かに、経済産業相、法相の更迭、大学入試の民間英語試験の導入延期など対応は迅速だが、それだけ危機が深刻ということだ。
後援会のメンバーは、公金で開かれる首相主催の「桜を見る会」の前夜、ホテルニューオータニでの懇親会に参加した。会費は5000円。野党の調査では同ホテルでの宴会は1人、最低1万1000円だという。会費の一部を安倍事務所が負担していれば、公選法違反となる。
安倍事務所名の「『桜を見る会』のご案内」という旅行ツアー付の案内状を支持者に送っていたこともわかった。安倍後援会メンバーの参加者は、安倍事務所に申し込んだら内閣府から招待状がきたと述べている。地元事務所が取り仕切ったのは明白だ。
「桜を見る会」は、2012年末の安倍首相の政権復帰以降、年々参加者数と費用は増大し、2014年の参加者約1万3700人・支出額約3000万円が、2019年は参加者約1万8200人・支出額約5500万円へと急増した。
安倍氏が出した招待状には「ご夫婦で参加を」とある。安倍首相の地元・山口県から大勢の後援会員を招いていたことが明らかになり、税金の私物化、後援会活動そのもので、公選法・政治資金規正法違反の疑いが濃厚だ。
安倍氏は国会の答弁で、「主催者としてのあいさつや招待者の接遇は行うが、招待客のとりまとめなどには関与していない」「地元自治会やPTAの役員などが、後援会の方々と重複することもある」などと説明した。
しかし菅官房長官は与党の役員らに招待枠が振り分けられていたことを認めた。
安倍氏は国会での田村氏の質問に対し、「私の後援会の会員が、(共産党機関紙)赤旗の取材を受けるはずがない」と言ったが、安倍後援会の中にも良心に従って行動する人もいるのだろう。
安倍氏は「参加者名簿は個人情報で明らかにできない」とも答弁した。12日に開かれた野党共同追及チームのヒアリングでも、参加者名簿は明らかにされなかった。政府は、案内送付については保存期間が「1年未満」とされているとい言い(事実は1年)、「すでに破棄した」と説明している。
安倍氏の側近、萩生田光一文部科学相は13日の衆院文科委員会で、「桜を見る会」の招待者に関し、文科省が過去に作成、提出した推薦者名簿を保存していることを明らかにした。自身の後援会関係者が参加したことがあるとも認めた。萩生田氏は、文科省の推薦者名簿に関し「個人情報が多く、推薦段階の情報でもあり、明らかにできない」と説明した。
日本新聞協会と内閣記者会(官邸のキシャクラブ)は「個人情報保護」を理由に、招待者名簿を開示しない安倍官邸に対し、「実名を公表すべきだ」と強く要求すべきだ。
今年7月18日に起きた京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオ放火事件で、キシャクラブメディアは、遺族が実名報道を拒否している死亡者22人を含め死者36人の実名を発表するよう京都府警に迫った。
京都の主要な報道機関でつくる在洛報道責任者会議は府警へ文書で「報道は実名が原則」という理由で、犠牲者の氏名公表を求めた。
詳しくは月刊「創」(篠田博之編集長)10,11、12月号の拙稿「京アニ事件犠牲者の実名は本当に必要か」を読んでほしいが、府警は、府警記者クラブに対し、22人の遺族が実名報道を拒否していることを伝えているのに、キシャクラブメディアは「実名報道が原則」という既得権益を理由にして36人全員の実名を報じた。
スポーツ2社と毎日放送のローカル枠だけは遺族の意向を尊重して21人を仮名にしたのは救いだった。
キシャクラブメディアはこの事件で、遺族の「匿名でいたい」という権利を踏みにじって、実名報道を強行したのだ。「事件に遭遇した市民の氏名には公共性が生じる」(江川紹子氏)という言説まで出てきた。これは、日本のジャーナリズム史に残る汚点になったと私は思う。
京アニの死亡者の氏名と、「桜を見る会」の参加者の氏名のどちらにパブリックインタレスト(public interest、人民の権益)があるかは明らかだろう。
また、「桜を見る会」に招待された人たちがどういう人か、また、前夜の宴会の参加費はいくらだったかなどは、捜査対象になる。名簿の廃棄などは証拠隠滅になる。
税金を使う場合は、後で会計検査院での検証もある。マスメディアが氏名などを報道する必要はなくても、「個人情報、プライバシー」を理由に名簿を破棄してはならない。北欧などでは、公務員のメモ、電話記録は必ず保管しなければならない。
既に辞任した2閣僚の疑惑より、安倍氏の疑惑の方が大きいことは間違いない。
日本の報道機関は安倍小学校、加計獣医学部の両疑獄で、安倍政権を倒せなかったが、「桜を見る会」の調査報道でスクラムを組んで、安倍氏らの行政の私物化を解明してほしい。
◆ 自公野合政権・税金私物化の徹底追及を
メディアは「参加者名簿は個人情報」の詭弁を許すな
浅野健一(元同志社大学大学院教授、アカデミックジャーナリスト)
安倍晋三・自公野合政権が何度目かの「大ピンチ」を迎えている。
森友学園安倍晋三記念小学校疑獄事件が発覚した2017年2月、「私自身、妻、事務所のいずれかが関わっていれば首相、国会議員を辞める」とまで表明した安倍氏は、その翌日に問題化した加計学園岡山理大獣医学部疑獄もあって政権崩壊の危機を迎えたが、何とかごまかして権力の座を維持してきた。
11月20日は、首相在職日数が「憲政史上最長」になるらしい。
しかし、cronyism(縁故主義)で政治を私物化してきた安倍政治を止めるチャンスが来た。
共産党の田村智子参院議員が11月8日の参院予算委員会で追及した「桜を見る会」問題は公選法、政治資金制法に違反する疑いがあり、首相の資質が問われる事態になった。
もともとは日本共産党のしんぶん赤旗日曜版が10月13日付で、安倍氏の後援会関係者が数百人規模で招待されている疑惑を大きく報道していた。
野党共同追及チームも発足し、キシャクラブメディアも調査報道を開始し、テレビの情報番組も取り上げた。
安倍官邸らしい荒っぽい手法だが、菅義偉官房長官は13日の定例会見で突然、来年の「桜を見る会」を中止すると発表した。
長官は「招待基準の明確化やプロセスの透明化を検討し、全般的な見直しを行う」と表明したが、これは、安倍政権下で開かれた「桜を見る会」の運営方法に大きな問題があったことを認めたからに違いない。
安倍氏は同日夕、記者の囲み取材に「私自身の判断で中止を決めた」とだけ語って、「説明はないのですか」などという記者の質問に答えず逃亡した。1952年から続いてきた伝統ある会を中止する責任は重い。
安倍首相の鮨友・田崎史郎氏は14日朝のテレビ朝日で、「安倍首相の素早い対応」を持ち上げ、「法律に違反していない」「後援会のスタッフがやったことで首相は関与していない」などと火消しに懸命だったが、首相に説明責任のあることは認めた。
確かに、経済産業相、法相の更迭、大学入試の民間英語試験の導入延期など対応は迅速だが、それだけ危機が深刻ということだ。
後援会のメンバーは、公金で開かれる首相主催の「桜を見る会」の前夜、ホテルニューオータニでの懇親会に参加した。会費は5000円。野党の調査では同ホテルでの宴会は1人、最低1万1000円だという。会費の一部を安倍事務所が負担していれば、公選法違反となる。
安倍事務所名の「『桜を見る会』のご案内」という旅行ツアー付の案内状を支持者に送っていたこともわかった。安倍後援会メンバーの参加者は、安倍事務所に申し込んだら内閣府から招待状がきたと述べている。地元事務所が取り仕切ったのは明白だ。
「桜を見る会」は、2012年末の安倍首相の政権復帰以降、年々参加者数と費用は増大し、2014年の参加者約1万3700人・支出額約3000万円が、2019年は参加者約1万8200人・支出額約5500万円へと急増した。
安倍氏が出した招待状には「ご夫婦で参加を」とある。安倍首相の地元・山口県から大勢の後援会員を招いていたことが明らかになり、税金の私物化、後援会活動そのもので、公選法・政治資金規正法違反の疑いが濃厚だ。
安倍氏は国会の答弁で、「主催者としてのあいさつや招待者の接遇は行うが、招待客のとりまとめなどには関与していない」「地元自治会やPTAの役員などが、後援会の方々と重複することもある」などと説明した。
しかし菅官房長官は与党の役員らに招待枠が振り分けられていたことを認めた。
安倍氏は国会での田村氏の質問に対し、「私の後援会の会員が、(共産党機関紙)赤旗の取材を受けるはずがない」と言ったが、安倍後援会の中にも良心に従って行動する人もいるのだろう。
安倍氏は「参加者名簿は個人情報で明らかにできない」とも答弁した。12日に開かれた野党共同追及チームのヒアリングでも、参加者名簿は明らかにされなかった。政府は、案内送付については保存期間が「1年未満」とされているとい言い(事実は1年)、「すでに破棄した」と説明している。
安倍氏の側近、萩生田光一文部科学相は13日の衆院文科委員会で、「桜を見る会」の招待者に関し、文科省が過去に作成、提出した推薦者名簿を保存していることを明らかにした。自身の後援会関係者が参加したことがあるとも認めた。萩生田氏は、文科省の推薦者名簿に関し「個人情報が多く、推薦段階の情報でもあり、明らかにできない」と説明した。
日本新聞協会と内閣記者会(官邸のキシャクラブ)は「個人情報保護」を理由に、招待者名簿を開示しない安倍官邸に対し、「実名を公表すべきだ」と強く要求すべきだ。
今年7月18日に起きた京都市伏見区の京都アニメーション第1スタジオ放火事件で、キシャクラブメディアは、遺族が実名報道を拒否している死亡者22人を含め死者36人の実名を発表するよう京都府警に迫った。
京都の主要な報道機関でつくる在洛報道責任者会議は府警へ文書で「報道は実名が原則」という理由で、犠牲者の氏名公表を求めた。
詳しくは月刊「創」(篠田博之編集長)10,11、12月号の拙稿「京アニ事件犠牲者の実名は本当に必要か」を読んでほしいが、府警は、府警記者クラブに対し、22人の遺族が実名報道を拒否していることを伝えているのに、キシャクラブメディアは「実名報道が原則」という既得権益を理由にして36人全員の実名を報じた。
スポーツ2社と毎日放送のローカル枠だけは遺族の意向を尊重して21人を仮名にしたのは救いだった。
キシャクラブメディアはこの事件で、遺族の「匿名でいたい」という権利を踏みにじって、実名報道を強行したのだ。「事件に遭遇した市民の氏名には公共性が生じる」(江川紹子氏)という言説まで出てきた。これは、日本のジャーナリズム史に残る汚点になったと私は思う。
京アニの死亡者の氏名と、「桜を見る会」の参加者の氏名のどちらにパブリックインタレスト(public interest、人民の権益)があるかは明らかだろう。
また、「桜を見る会」に招待された人たちがどういう人か、また、前夜の宴会の参加費はいくらだったかなどは、捜査対象になる。名簿の廃棄などは証拠隠滅になる。
税金を使う場合は、後で会計検査院での検証もある。マスメディアが氏名などを報道する必要はなくても、「個人情報、プライバシー」を理由に名簿を破棄してはならない。北欧などでは、公務員のメモ、電話記録は必ず保管しなければならない。
既に辞任した2閣僚の疑惑より、安倍氏の疑惑の方が大きいことは間違いない。
日本の報道機関は安倍小学校、加計獣医学部の両疑獄で、安倍政権を倒せなかったが、「桜を見る会」の調査報道でスクラムを組んで、安倍氏らの行政の私物化を解明してほしい。
文字化けを直しました。