大阪府条例案のような現実離れした厳罰主義が何を生むかの実態がここに既にある。JPが事故から学ばなければ10年後にはヤマトや佐川に完敗していることであろう。
《私の職場》 ヨシ!ヨシ!ヨシ! 無事故宣言の大合唱だけ
◇ 交通事故多発の郵便事業
郵便事業会社の赤字と経営危機(論)が職場を支配しつつある。9月期中間決算に向けて「日銭を稼げ」の会社指導が日々強化されてきている。(日銭とは、支社の7月時点での収入不足18億円を全社員数で除した金額とのことである。私の支店では一人一日746円?) ……ラーメン、夏カレー、鰻だの、まるで食堂のメニューのようにパンフレットが職場に積まれている。そしてカタログ小包の個人目標が一方的に押し付けられている。また売れ行き好調な東日本大震災寄付金切手も指標根拠のないまま膨大な数が支店に降ろされている。ますます自爆営業が横行している。
一方、職場で大きな問題となっているのが「交通事故」である。事故を引き起こした社員に対するあまりに酷い叱責で退職する仲間も後を絶たない。いま職場で行われている交通事故を中心に職場の実態について報告し、運動課題について考えてみたい。
◆ 毎朝大きな声で全体唱和
毎朝8時から集配課の全体ミーティングが行われます。全員が左手を腰に当て右手で指さし呼称を行い、”二輪乗務者絶対遵守事項”を大きな声で唱和して朝の仕事が始まります。
忙しい時こそ「絶対あせらず」常に安全最優先の防衛運転を実行する
ヨシ!
「常に相手に道を譲る気持」を持った安全運転を実行する
ヨシ!
交差点では、「2段階・一旦停止・上半身を前に乗り出して左右確認・指差呼称確認」を実行する
ヨシ!
「一時停止指導の手引」に基づく「正しい2段階一旦停止・左右安全確認」を実行する
ヨシ!
交差点進入時には、交差点に近づくときから交差点全体を視野に入れ、慎重に走行する
ヨシ!
常に「~だろう運転」ではなく、「~かもしれない運転」を実行する
ヨシ!
歩行者・自転車の近くを走行する際は、十分な距離をあけ最徐行で走行する
ヨシ!
夜間走行時には、昼間よりスピードを落とし、前車との車間距離を長めにとる
ヨシ!
私たちは国民の共有財産である道路を使用させていただいて仕事をしています
しかし、これを完全実施すれば仕事になりません。こんな気持ちは外で時間に追われ、働いているものなら誰しも感じています。
しかもいま職場は「欠員でも人を入れない」、「超勤はするな」、「お客様サービスな絶対守れ」、「営業はやれ」
……忙しい時こそ「絶対あせらず」と会社は簡単に言うが、働ぐ者がゆとりを持って仕事と向き合う職場の環境がいまつくられているのでしょうか。働き続けられる労働条件の確保と、労災交通事故は密接に関係していると言えます。
◆ 繁忙時は事故が多発する
郵便事業会社の交通事故件数は、全国も私のところも統計上は年々減少傾向にあると言われています。しかし重大事故は増加の傾向にあるのが近年の特徴です。
会社が節々で発している「交通事故非常事態宣言」は、事故件数の増加とともに重大事故発生時に緊急特報で全社員に周知をするよう支社・本社から指導されています。必ず「支店長の口から」直接指導すること、そして全社員から周知を受けた確認「印」をもらうことなど徹底した指導が行われています。
私のところの本年度の交通事故発生状況は8月累計で25件(15件)、4月以降累計で183件(184件)となっています。カッコ内は前年同日累計発生件数です。
車種別では二輪11件(36件)、四輪14件(10件)となり、事故原因も前方不注意、後方確認不十分、左右確認不十分、スピード超過、車間距離不十分、車幅感覚の錯覚などが上げられています。
会社は「社員のみなさん、何物にも替えることのできない命の尊さを再認識し安全最優先の気持ちで安全運転を徹底して下さい」と毎日さわやかに呼びかけてくれます。しかし交通事故は後を絶ちません。
7月お中元期、12月お歳暮期における事故の増加、統計上件数が減っても重大事故が増加する背景には「安全意識が足りなかったことが事故の原因」と労働者に一方的に責任を求めていては、もっと大きな重大事故が起こる可能性すらあると言えます。
◆ いやなら辞めてください
私の職場で7月に軽四、原付、自動二輪と3件の交通事故が発生しました。当然、支店として「交通事故緊急事態」宣言が支店長名で発出されました。全社員に対する支店長訓話、会社掲示板には現在でも宣言文が貼られています。
要約すると次のようなことが書かれています。
3件とも相手の方が負傷するという人身事故であること。
それぞれの原因は1件目-窓も開けず、ハザードも点滅させずバックした。近隣に配達先が2件あり、じゃまくさいからバックで道路を横断しようとして。
2件目-配達や集荷等がいやだなあと走行中に次の配達先またはその次の配達先、最後の集荷先のことを考え運転に集中できていない。交通安全道路は、出発時毎回実施すべきことを1日1回だけすればいいと思っていた。安全運転施策の目的が理解できていない。
3件目は-出発前に訓練はするが実際の公道では上半身を前に乗り出しての二段階で一旦停止して「右よし・左よし」と指差呼称確認ができていない、等々です。
「油断・横着・思い込み」はありませんか。基本動作ができていれば全て防げた事故です。みなさん、仕事はやらされていると思っていませんか。じゃまくさいと思っていませんか。そういう方は日本国憲法第22条第1項に「何人も公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定されていますからどうぞ行使してください。
いやならどうぞお辞め下さいということです。事故を起こした3名の労働者は結果的に「事故事例研究」を最後に退職の道を選びました。労働組合が拾いきっていない労働者の実態が、まだまだ職場にごろごろしているのではないでしょうか。
『週刊新社会』(2011/10/11)
《私の職場》 ヨシ!ヨシ!ヨシ! 無事故宣言の大合唱だけ
◇ 交通事故多発の郵便事業
郵便労働者 長谷川俊夫
郵便事業会社の赤字と経営危機(論)が職場を支配しつつある。9月期中間決算に向けて「日銭を稼げ」の会社指導が日々強化されてきている。(日銭とは、支社の7月時点での収入不足18億円を全社員数で除した金額とのことである。私の支店では一人一日746円?) ……ラーメン、夏カレー、鰻だの、まるで食堂のメニューのようにパンフレットが職場に積まれている。そしてカタログ小包の個人目標が一方的に押し付けられている。また売れ行き好調な東日本大震災寄付金切手も指標根拠のないまま膨大な数が支店に降ろされている。ますます自爆営業が横行している。
一方、職場で大きな問題となっているのが「交通事故」である。事故を引き起こした社員に対するあまりに酷い叱責で退職する仲間も後を絶たない。いま職場で行われている交通事故を中心に職場の実態について報告し、運動課題について考えてみたい。
◆ 毎朝大きな声で全体唱和
毎朝8時から集配課の全体ミーティングが行われます。全員が左手を腰に当て右手で指さし呼称を行い、”二輪乗務者絶対遵守事項”を大きな声で唱和して朝の仕事が始まります。
忙しい時こそ「絶対あせらず」常に安全最優先の防衛運転を実行する
ヨシ!
「常に相手に道を譲る気持」を持った安全運転を実行する
ヨシ!
交差点では、「2段階・一旦停止・上半身を前に乗り出して左右確認・指差呼称確認」を実行する
ヨシ!
「一時停止指導の手引」に基づく「正しい2段階一旦停止・左右安全確認」を実行する
ヨシ!
交差点進入時には、交差点に近づくときから交差点全体を視野に入れ、慎重に走行する
ヨシ!
常に「~だろう運転」ではなく、「~かもしれない運転」を実行する
ヨシ!
歩行者・自転車の近くを走行する際は、十分な距離をあけ最徐行で走行する
ヨシ!
夜間走行時には、昼間よりスピードを落とし、前車との車間距離を長めにとる
ヨシ!
私たちは国民の共有財産である道路を使用させていただいて仕事をしています
しかし、これを完全実施すれば仕事になりません。こんな気持ちは外で時間に追われ、働いているものなら誰しも感じています。
しかもいま職場は「欠員でも人を入れない」、「超勤はするな」、「お客様サービスな絶対守れ」、「営業はやれ」
……忙しい時こそ「絶対あせらず」と会社は簡単に言うが、働ぐ者がゆとりを持って仕事と向き合う職場の環境がいまつくられているのでしょうか。働き続けられる労働条件の確保と、労災交通事故は密接に関係していると言えます。
◆ 繁忙時は事故が多発する
郵便事業会社の交通事故件数は、全国も私のところも統計上は年々減少傾向にあると言われています。しかし重大事故は増加の傾向にあるのが近年の特徴です。
会社が節々で発している「交通事故非常事態宣言」は、事故件数の増加とともに重大事故発生時に緊急特報で全社員に周知をするよう支社・本社から指導されています。必ず「支店長の口から」直接指導すること、そして全社員から周知を受けた確認「印」をもらうことなど徹底した指導が行われています。
私のところの本年度の交通事故発生状況は8月累計で25件(15件)、4月以降累計で183件(184件)となっています。カッコ内は前年同日累計発生件数です。
車種別では二輪11件(36件)、四輪14件(10件)となり、事故原因も前方不注意、後方確認不十分、左右確認不十分、スピード超過、車間距離不十分、車幅感覚の錯覚などが上げられています。
会社は「社員のみなさん、何物にも替えることのできない命の尊さを再認識し安全最優先の気持ちで安全運転を徹底して下さい」と毎日さわやかに呼びかけてくれます。しかし交通事故は後を絶ちません。
7月お中元期、12月お歳暮期における事故の増加、統計上件数が減っても重大事故が増加する背景には「安全意識が足りなかったことが事故の原因」と労働者に一方的に責任を求めていては、もっと大きな重大事故が起こる可能性すらあると言えます。
◆ いやなら辞めてください
私の職場で7月に軽四、原付、自動二輪と3件の交通事故が発生しました。当然、支店として「交通事故緊急事態」宣言が支店長名で発出されました。全社員に対する支店長訓話、会社掲示板には現在でも宣言文が貼られています。
要約すると次のようなことが書かれています。
3件とも相手の方が負傷するという人身事故であること。
それぞれの原因は1件目-窓も開けず、ハザードも点滅させずバックした。近隣に配達先が2件あり、じゃまくさいからバックで道路を横断しようとして。
2件目-配達や集荷等がいやだなあと走行中に次の配達先またはその次の配達先、最後の集荷先のことを考え運転に集中できていない。交通安全道路は、出発時毎回実施すべきことを1日1回だけすればいいと思っていた。安全運転施策の目的が理解できていない。
3件目は-出発前に訓練はするが実際の公道では上半身を前に乗り出しての二段階で一旦停止して「右よし・左よし」と指差呼称確認ができていない、等々です。
「油断・横着・思い込み」はありませんか。基本動作ができていれば全て防げた事故です。みなさん、仕事はやらされていると思っていませんか。じゃまくさいと思っていませんか。そういう方は日本国憲法第22条第1項に「何人も公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と規定されていますからどうぞ行使してください。
いやならどうぞお辞め下さいということです。事故を起こした3名の労働者は結果的に「事故事例研究」を最後に退職の道を選びました。労働組合が拾いきっていない労働者の実態が、まだまだ職場にごろごろしているのではないでしょうか。
『週刊新社会』(2011/10/11)
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