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根拠のない国粋主義的記述が検定でたしなめられる

2015年07月25日 | こども危機
 ◆ 育鵬社・自由社教科書の検定結果をみる-歴史
田中行義(子どもと教科書全国ネット21常任運営委員)

 検定意見は、「世界で一番」「戦争は相手に責任」式の根拠のない国粋主義的記述を、そこまで書いてはダメよとたしなめているものが多い。
 原文と修正文を表にすると見やすいが、スペースの関係でできないので、いくつかを例示する。
 ◆ 育鵬社教科書…あまりに自国主義的
 ○(古墳時代の)「日本がローマ帝国や古代エジプト・秦などに勝るとも劣らない高度な土木技術に支えられた文化を持っていた」に、「異なる時代の土木技術を比較する基準が不明確」の検定意見(以下、意見)が付き、「日本も高度な土木技術に支えられた文化を持っていた」に修正。
 ○推古朝と飛鳥時代の系図の「初代天皇からの即位順」という注に「天皇の代数の根拠」の意見が付き「皇統譜による即位順」と修正。これは初代神武以下を実在とする記述になってまずいという判断だろう。
 ○「竹島は17世紀半ばに江戸幕府によって完全に治められていた」に「誤解するおそれ(竹島と江戸幕府の関係)」の意見が付き、「我が国の領有権が確立していた」に修正。「領有権確立」も学問的根拠に乏しいのに。
 ○「外国人が見た日本」のコラムで、シュリーマン、モースなどの、日本人の清潔、正直、礼儀正しさなどを賞賛する文章について、「紹介されている事例と『日本の国民性について話し合ってみましょう』との関連」の意見が付き、修正でベルツの言葉を新たに入れた。
 明治初期の「教養のある人は過去を恥じてさえいる」「自国固有の文化を軽視することは、かえって外国人の信頼を得られない」など、文明開化期の伝統を顧みない風潮を批判したもので、国民性賞賛に加えて伝統文化の評価の勧めで、更に国粋的内容になっている。
 ○「このように東京裁判では、日本の政治家・軍人たちが戦争犯罪者として裁かれました。その一方で米ソなどの戦勝国に対しては、当時の国際法から見ても戦争犯罪とされるものでも罪に問われることはありませんでした。」に、「政府の統一的な立場に基づいた記述がなされていない。(東京裁判に対する日本政府の立場)」の意見が付き、「日本政府も占領終了時に東京裁判の判決を受け入れることを表明しました。その一方で…」と修正。
 改悪された検定基準が適用された皮肉な例である。

 ◆ 自由社教科書…戦争責任曖昧に
 ○「『源氏物語』や日記文学は世界でもっとも古い女流文学」を、「世界の中でもたいへん古い」に。
 ○「世界最高水準を誇った当時の藩校・寺子屋・私塾」を、「世界最高水準を誇った」を削除
 ○「同化政策を進めたので、朝鮮の人々は日本への反感を強めた。しかし、36年間の朝鮮統治で人口は2倍となり耕地も大きく増えた。」を、「36年間」以下を削除
 ○「コミンテルンの指令に基づき日本と戦うことをのぞんだのは中国共産党であり、国民党がそれに同調することにょって日本との戦争は避けがたいものとなった。」を、「日本はもちろんのこと、中国側もすべてが日本との戦争をのぞんでいたわけではないが、戦闘が拡大するにつれ、日中の和平は困難なものになっていった。」これは日中戦争拡大の責任を曖昧にしただけ。
 ○「日本軍も敵国兵や民間人に不当な殺害・虐待を行いました。」に「日本軍の戦争犯罪の実態」の意見で「虐待を行ったこともありました。」に修正。これは逆に記述が「自虐的」として、日本軍の不法行為を曖昧にさせる検定と言える。
(たなかゆきよし)

 『子どもと教科書全国ネット21ニュース 102号』(2015.6)

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